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千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜 台本版  作者: REN'sJackson
零章 Characters Side Story 番外篇
3/176

劇情版Ranunculus's Side Story「The Stargazing 」scene RED

本編を読む前に

YouTubeやホームページに載せてある

PVを見ることをおすすめします。

↓↓

URLコピー又は 

千刃花 ホームページ で検索

----------------------------


https://rensproduction.wixsite.com/website/rensjackson


----------------------------



さて、お待たせしました。

3年越しの伏線回収!!

と言うより千刃花は7/14で

3周年を迎える事が出来ました88888

そして、ファンクラブも1周年を迎えました!!

15万人の方が今まで見てくれて嬉しいです!

ブックマークじゃんじゃんしてね!

とにかく、世界中の人間みんなありがとう!!


実は、3周年記念のお祝いとして

書いたのですがサイドストーリーは

本当に大変なので

(特にアニバーサリー台本は!!)

期待する声が多くプレッシャーの中で

書いてました!!

他のキャラや、他の話しでもよかったんですが

何故ここでラナンキュラスなのかと言うと

俺の中でラナンキュラスは数字で当てはめるなら

3なんですよねぇ。

だから書きました!!

今回は出番は多いけど

秘密だらけのラナンキュラスに

焦点を当てて真面目に、丁寧に

この俺がプロットまで書いて作り上げました。

本来なら一本にして

一気に読むことをオススメしたいのですが

そうもいかず!!!!

泣く泣く分割しました!!!

本当泣きたい!!でも一本にしたら

読むのに4時間かかってしまうのでね!!


それと周年記念のサイドストーリーは

1周年のパニックルームも

2周年のサムシングジャスライクディスも

どれも大作なんで劇場版ならぬ

劇情版もして銘を打ちました。

単なる言葉あそびですが

本当に人気が高い!!

しかも気合い入れすぎて曲を二曲作ったんで

発売しちゃいます!

8月3日以降であれば

千刃花のホームページから買えるので

聴いてみてね!!!!!

特に♪1の楽曲"セリーヌに抱かれて"

この物語を表す曲になっていますので

是非、指定された箇所で

流してみてください!!


ちなみに今回のキーワードは

"バンジャマン家"・"名前"・"フルスティング"

この3本です。

scene REDはそれにプラスして"憤り"が

入っております。


ラナンキュラスファンは必読のバイブル!! 


では!!楽しんで!!






♪1


画家▶︎▶︎▶︎N



セリーヌ

「眠れ 眠れ 愛おしい花よ

眠れ 眠れ 星の光に抱かれて

眠れ 眠れ 夜風に乗って

眠れ 眠れ 天まで届け

いつか会えるその日まで」



ユラユラと揺れるロッキングチェアに揺られ

寂しげなオルゴールの旋律と

柔らかな子守り唄が夜空を駆ける。



セリーヌ

「おやすみなさい。ミシェール」



挿絵(By みてみん)



※音楽がある場合鳴り止むまで待つ


----------------------------


挿絵(By みてみん)



作者 REN’sJackson


劇情版

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

3rd(サード) Anniver(アニバー)sary(サリー) Special(スペシャル) Edition(エディション)

Ranunculus(ラナンキュラス)'s() Side Story(サイド ストーリー)

The () Star (スター)gazing (ゲイジング)scene RED(シーン レッド)



※音楽がある場合鳴り止むまで待つ

----------------------------


♪1


ここはナーベルク帝国

帝都ルシファンブルクの樹海。

そしてその更に奥には湖や小さな菜園

石造りで出来た古めかしい家があった。

樹海の中に灯された小さなアカりは

夜風に揺らめき

星の様な美しい光を放っていた。

すると、2階にあるバルコニーから

スラッと伸びた背に

美しい金色の髪をナビかせる男が

暖かい紅茶と

悲しげな音色を響かせるオルゴールを片手に

星を眺めていた。


ラナンキュラス

「あれから…どれくらい時が経ったんだろう」


するとオルゴールの音色が

ピタリと止まってしまった。


ラナンキュラス

「…止まった」


そう呟いたのは

帝国を守護する特務部隊の1人

帝国特務 戦闘部隊千刃花(センジンカ)

八刃花(ハチジンカ)隊 隊長

ミシェール=ラナンキュラス=バンジャマン。

言わずと知れた

鞘神(サヤガミ)である葡萄染麒麟(エビゾメキリン)に選ばれた

(イカヅチ)鞘花(ショウカ)である。


アイビー

「どうしたの?ラナン?

支度シタク終わったけど…」


何か思いフケるラナンキュラスに

後ろから声をかける薄紫髪ウスムラサキガミの女性は

アイビー=へデラ=ポーチス。

その指にはマリンブルーの指輪が光っていた。

そう、彼女は八刃花(ハチジンカ)隊の副隊長でもあり

ラナンキュラスの婚約者でもあった。


アイビー

「何かあったの?」


ラナンキュラス

「いや、何でもないさ。」


アイビー

「何でも無いって事は無いんじゃない?

ここでオルゴールを聴いてる時は

いつも何かあるんだから」


ラナンキュラス

「フフッ。少し思い出しただけさ。」


アイビー

「何を?」


ラナンキュラス

随分 (ズイブン)と昔の事をね。」


アイビー

「ふーん。」


アイビーは疑う様な上目遣いで

ラナンキュラスの横に並ぶと

蝋封ロウフウで止められた手紙を手渡した。


アイビー

「はい。手紙。

今時、蝋封ロウフウなんて珍しいわね。

しかも見てよこれ。

宛名に"ミシェール"って書いてあるのよ?

ラナンの事をミシェールって呼ぶのって…」


ラナンキュラス

「ぁあ。僕の家族しかいないね。

ここを見てごらん?

このロウに刻印されてるのは

バンジャマン家の家紋さ。」


アイビー

「あっ。どこかで見た事あると思ったけど

この家紋って…」


ラナンキュラス

「バンジャマン家の男の証さ。

兄貴も親父も皆んな左頬ヒダリホホにあるだろ?

僕には無いんだけどね。」


左頬ヒダリホホを指差しながら

そう言うとラナンキュラスは寂しげに笑った。


アイビー

「自分が選んだ道でしょ?

私はいつだってラナンを尊重するわ」


ラナンキュラス

「別に顔に 刺青(タトゥー)入れたくないから

しなかったんじゃないよ?」


アイビー

「本当にぃ?」


ラナンキュラス

「まぁ…無くもない…かな?

それに 刺青(タトゥー)が顔にあったら

君とこうして

ここに居られなかったかもしれないよ?」



アイビー

「そんな事ないよ。

有っても無くても出会ったあの日から

私はラナンしか見てないもの。フフッ」


ラナンキュラス

「君は心まで美しいんだね。」


そう言ってラナンキュラスは

アイビーのヒタイに軽くキスをした。


アイビー

「んーもう!!

そうやっていつも誤魔化すんだから!!」


ラナンキュラス

「誤魔化す?

僕は君に嘘なんてついた事ないよ?

いつだって君には誠実で

いつだって君を愛してる。

例え、どんな事があってもね。」


アイビー

「…ラナン」


少しバツが悪そうな顔をしたアイビーは

イタズラにラナンキュラスのオルゴールを

手に取るとネジを再び回した。

すると、悲しげな旋律が鳴り響く。


♪1



アイビー

「このオルゴール…音もそうだけど

見た目も綺麗だよね。

陶器トウキで出来てるのかな?」


ラナンキュラス

「触れたら壊れてしまいそうで

奏でればどこか悲しげなんだ。

このオルゴールを聴きながら

星空を眺めると

懐かしい気持ちになる。」


アイビー

「懐かしい気持ち…ね。

私が海を見ると思い出す感覚に

少し似てるのかなぁ」


ラナンキュラス

「君は海が好きだからね。」


アイビー

「そう言えば、このオルゴールって」


ラナンキュラス

「そうだよ。

この世で最も高貴な人の物さ。」


アイビー

「この世で最も高貴な人。かぁ…」


そう言ってアイビーは

オルゴールを目の高さまで持ち上げて

まじまじと見た。


アイビー

「あっ。」


ラナンキュラス

「どうしたの?」


アイビー

「ラナンキュラスって書いてあるよ?

ここ、オルゴールの底に金色で。

…ねぇ、ラナン。」


ラナンキュラス

「ん?」


アイビー

「前から聞こうと思ってたんだけど

どうしてミシェールじゃなくて

ラナンキュラスって名乗ってるの?」


ラナンキュラス

「気になるのかい?」


アイビー

「あっ、無理しなくていいんだよ?

話したい時で全然、構わないし!!」


ラナンキュラス

「フフッ。別に話す機会が無かっただけさ。」


アイビー

「聞いてもいいのかなぁーって

ずっと考えてたんだけど…

このオルゴール見たら

つい、聞いてみちゃった。」


屈託のない笑顔を見せるアイビーに

微笑むラナンキュラスは

再び星空を見上げた。


ラナンキュラス

「聞きたいかい?

僕と…ラナンキュラスの話を」




※音楽がある場合鳴り止むまで待つ



セリーヌ▶︎▶︎▶︎N


ーー時は(サカノボ)り数十年前ーー

帝都ルシファンブルク第1区セントラル2番地

バンジャマン家屋敷にて。


挿絵(By みてみん)


黒と金を基調とした内装に

様々な武器が壁に飾られており

執事の数は約50人。

警備から給仕キュウジまで

全てを執事が担っていた。

バンジャマン家の敷地内には

広大な草原が広がっており

来年、ナーベルク士官学校入学を控えた

ラナンキュラスの兄である

クリス=ディオール=バンジャマンが

ラナンキュラスと同様、端正な顔立ちに

美しい金色の髪を(ナビ)かせながら

真剣シンケンを振るい稽古ケイコに励んでいた。


青年クリス(次のセリフまで)

「フッ!!フッ!!フッ!!」


ラナンキュラスはそれを横目に

草原にある木の下で

刃術(ジンジュツ)の指南書を読んでいた。


少年ラナンキュラス

「複合合成刃術(ジンジュツ)

別の刃術(ジンジュツ)を組み合わせて発動する

超高等刃術(ジンジュツ)

緻密チミツ刃汽(ジンキ)コントロール無しには

発動出来ない…か…

ん?待てよ…形状変化って

複合合成刃術(ジンジュツ)じゃないのかな?

今度、父さんに聞いてみよう」


そう呟いて草原に寝転んだラナンキュラスは

青々(アオアオ)とした空を見上げた。


少年ラナンキュラス

「はぁー。雲は空を流れるだけで

なーんも考えなくていいから羨ましいなぁ」


そんなラナンキュラスを見て

業を煮やしたクリスは弟に向かって叫んだ。


青年クリス

「ミシェール!!!

いつまで油を売ってるつもりだ!!!

バンジャマン家の次男として恥じぬ様に

稽古ケイコに励め!!!!」


少年ラナンキュラス

「えーー。やだよぉ。

だって素振りするより刃術(ジンジュツ)使えた方が

格好いいじゃん。」


青年クリス

「いい加減にしろミシェール。

基礎キソに励むのは無駄ではない!!!

見ていろ!!!!」


クリスは真剣シンケンをグッと構えた。


青年クリス

「1に構えて2で振り上げ

3で渾身の力と速度で(ヤイバ)を...振り下ろす!!

俺たちは例え極刑にアタイする罪人 (ザイニン)であっても

死の苦痛をトモナわせずに

真っ直ぐ首を斬り落とす。

それがバンジャマン家だ。やってみろ。」


そう言うとラナンキュラスに向かって

真剣シンケンを投げた。


少年ラナンキュラス

「わーーっ!!!

あ、危ないじゃないかクリス!!!!」


クリスが投げた真剣シンケン

ラナンキュラスが読んでいた

刃術(ジンジュツ)の指南書に突き刺さった。


少年ラナンキュラス

「って!!あーー!!!!なんて事するんだ!!!

この指南書はブルダニア国立図書館で

借りてきたのに!!」


青年クリス

「閲覧指定Bの制限がある。

お前にはまだ早い。

また俺の名前を使って勝手に借りたな?」


少年ラナンキュラス

「ゲッ。」


青年クリス

「ミシェール。お前はその名の通り女々しい。

真っ直ぐとブツからずに

のらりくらりと違う角度で攻める。

バンジャマン家の男たる者

高貴で高潔で無ければならない。

それユエに命をトザす権利が

バンジャマン家にはあるんだ」


少年ラナンキュラス

「…名前は関係ないだろ。」


青年クリス

「いや、ある。名は人を表す。

弱き母上が名付けた名だ。

それ(ユエ)にお前も弱い。

だからお前を産んですぐに死んだのだ」


少年ラナンキュラス

「…それは…僕に関係ない!!!

母さんをバカにするな!!!!」


青年クリス

「俺が母上をバカにしているだと?

まだ俺の言っている意味が分からないのか!」


少年ラナンキュラス

「クリスはいつもそうだ!!

俺の言っている意味が分からないのか!?

だからミシェールはダメなんだ!!

バンジャマン家の男として誇りを持て!!

って、僕は…もう聞き飽きたよ!!!!」


すると父である

ハーゴン=クロエ=バンジャマンが

軍服姿で大きな袋を手に抱え

遠くから歩いてきた。

息子2人とは違い栗毛色クリゲイロの髪に

バンジャマン家としての誇りである 刺青(タトゥー)

左頬ヒダリホホに彫られていた。


青年クリス  少年ラナンキュラス

「父上!!」  「父さん!!」


青年クリス

「任務から戻られたのですね!!

ご無事で何よりです!!」


少年ラナンキュラス

「またクリスが僕に突っかかるんだよ!」


若きハーゴン

「帰って来て早々…また言い争いか。」


青年クリス

「ミシェールが稽古ケイコオコタるからです」


少年ラナンキュラス

「クリスがいつも僕にちょっかいを出すんだ!

さっきだって母さんをーー」


若きハーゴン(遮る様に)

「ミシェール。それぐらいなんだ。

バンジャマン家たる者

その程度で心が揺らいではならん。

クリスを見てみろ。心頭滅却シントウメッキャク

心が強いからこそ

基礎練習に耐え、励む事が出来る。

少しは見習え。」


少年ラナンキュラス

「…そんな」


青年クリス

「父上。またミシェールが

俺の名前で閲覧指定の本を読んでいました。」


少年ラナンキュラス

「そ、それは…」


ハーゴンは穴の空いた指南書を拾い上げた。


若きハーゴン

「クリス。いくら弟への指導だとしても

ブルダニア家が管理する物だ。

それを理解した上でこれとは

イササか首をカシげるな。」


青年クリス

「愚行でした。…申し訳ありません」


するとハーゴンは指南書に

手をカザして呟いた。


若きハーゴン

照刃(ショウハ) 十九 ・ 廻位転変(カイイテンペン)


少年ラナンキュラス

「うわぁ…すごい」


青年クリス

「これは高難易度の

空間系…照刃(ショウハ)刃術(ジンジュツ)


すると、手のひらにある指南書の時間が

ユルやかに逆再生されていく。

照刃(ショウハ) 十九・ 廻位転変(カイイテンペン)とは

手のひらの範囲内であれば

対象の時間を30秒戻す事が出来る。

ただし、人体の治癒チユとなると

その時間は約半分になる。


青年クリス

「父上は…千刃花(センジンカ)隊士ではないのに

何故その様な刃術(ジンジュツ)が使えるのですか?」


若きハーゴン

「何も刃術(ジンジュツ)千刃花(センジンカ)の専売特許ではない。

ナーベルク帝国軍の尉官イカン以上は

使えなければ話しにならんのでな。」


若き日のハーゴンは

ナーベルク士官学校C-1st(シーファースト)卒業後

家業である死刑執行人(ジュジュマン)に就くカタワ

執行が無い期間

ナーベルク帝国軍に従事しながらも

大尉のクライまで昇り詰めていた。


少年ラナンキュラス

「父さん!!僕にもそれ教えてよ!!」


若きハーゴン

「それは士官学校に入ってからだ。

刃術(ジンジュツ)には

人それぞれ得意な属性系統がある。

それをしっかり見極めなければ

どんなに教えても意味はない。」


少年ラナンキュラス

「今だって刃術(ジンジュツ)

訓練してるじゃないか…」


若きハーゴン

无属(ムゾク)系統は誰もが扱える。

系統変化はまだ早い。

まずはその未熟な身体と精神を鍛える。

それからでも遅くは無い。」


少年ラナンキュラス

「シルバが言ってたよ!

系統変化は僕にだってーーー」


若きハーゴン (遮る様に)

「グレイ家のおてんば娘か。

歳の離れた妹を持つカルミア殿も

さぞ手を焼いているだろうな。」


青年クリス

「シルバさんは

既にナーベルク士官学校を卒業して

千刃花(センジンカ)に入隊されたとか。

あの剛腕ならば納得です。

俺やミシェールも

よく鍛えて貰いましたから。」


クリスのその言葉に

ラナンキュラスは一瞬、顔を曇らせた。

それはいつも高笑いをしながら

殴ってくるシルバ、それを見て笑うクリスを

思い出したからだった。


若きハーゴン

「そんな事よりもミシェール。

お前はこれだ。」


袋から取り出したのは

大きなカボチャ2つだった。


若きハーゴン

「クリス。見本を見せてやりなさい。」


青年クリス

「はい。」


クリスは真剣(シンケン)をサッと抜き

カボチャを真っ二つに斬って見せた。


若きハーゴン

「見事な切れ味。

次はもっと大きな(ツルギ)

やってみなさい。」


青年クリス

「はい!!ありがとうございます。」


そしてハーゴンはラナンキュラスの前に

カボチャを置いて顔を見た。


若きハーゴン

「次はミシェール。やりなさい。」


ラナンキュラスは嫌そうな顔をしながら

真剣(シンケン)を手に持った。


若きハーゴン

「ミシェール」


しかしラナンキュラスは

真剣(シンケン)を空高く真上に投げた。


若きハーゴン・青年クリス

「ミシェール!!!!!」


少年ラナンキュラス(早口で遮る様に)

滅刃(メツハ)イチ(トウ)


ラナンキュラスは素早く詠唱すると

刃汽(ジンキ)を押し固めた光の(ヤイバ)顕現ケンゲン

下からカボチャを斬り上げた。


青年クリス

「な!?!?やめろミシェール!!」


若きハーゴン (遮る様に)

「待て。クリス」


青年クリス

「しかし父上!!」


少年ラナンキュラス(早口で遮る様に)

滅刃(メツハ)ジュウ泡沫飛沫(ホウマツシブキ)


斬り上げたカボチャをラナンキュラスは

更に水流系の滅刃(メツハ)刃術(ジンジュツ)で撃ち抜くと

上空に上がった真剣(シンケン)

華麗に掴んで見せた。


若きハーゴン

「すでに系統を変化させられるのか…」


少年ラナンキュラス

「どう?」


青年クリス

「何をしてるんだミシェール!!!」


少年ラナンキュラス

「言われた通り斬ったんだよ?

おまけに撃ち抜いて見せたけど」


青年クリス

「この(ツルギ)で斬れと言われたんだ!」


少年ラナンキュラス

「斬るよりも凄いでしょ??」


青年クリス

「な、なんだと!?お前はまだーー」


若きハーゴン (遮る様に)

「やめろクリス。」


青年クリス

「父上!!」


若きハーゴン

刃術(ジンジュツ)の基礎。

滅刃(メツハ)イチ(トウ)

誰に習った??」


少年ラナンキュラス

「本読んだら出来た。」


青年クリス

「そんな訳ないだろ!!!」


若きハーゴン

「水流系の滅刃(メツハ)刃術(ジンジュツ)も本か?」


少年ラナンキュラス

「本とシルバのを見て

少し練習してみたんだ。」


若きハーゴン

「なるほど。

まだ少し切れ味が甘い。

腕の筋力だけで振り上げるから

切り口がユガんでいる。

完成された本物の(トウ)ならば

触れた瞬間に切れるだろう。

泡沫飛沫(ホウマツシブキ)に関しては

水圧と刃汽(ジンキ)シボった所まで良かったが

あの水圧と水量ではまだまだ攻撃には使えない。

撃ち抜いたのもれていた箇所。

威力は水鉄砲となんら変わらない。」


青年クリス

「…父上」


若きハーゴン

「ミシェール。この指南書を返して来なさい。

1時間後には出るぞ」


少年ラナンキュラス

「え?どこ行くの??」


若きハーゴン

「今日はクリスの晴れ舞台だ。」


少年ラナンキュラス

「僕は…いいや。」


若きハーゴン

「来るんだ」


少年ラナンキュラス

「…はい。」


そう言ってラナンキュラスは

本を返しに執事と共に

移動用魔進 (マシン)に乗り込んだ。


若きハーゴン

「あれには…刃術(ジンジュツ)の才がある。

もしや…天授万才(テンジュバンサイ)やもしれぬ」


天授万才(テンジュバンサイ)とは

天から授かりし万の才の意を持つ。

通称"天才"と略され

生まれながらにして持つ

刃汽(ジンキ)に関連する特別な才能を持つ者を指す。


青年クリス(嘲笑う様に)

「フッ。まさかあのミシェールが?

買いかぶり過ぎですよ父上。

ミシェールにそんな才能がある訳ない。

フラフラとして本ばかり読んでは

遊び半分で試しているだけですよ。

(トウ)くらい俺にだって出来ます。

それよりもアイツは

バンジャマン家の男として矜持キョウジ

何も分かっていません。

必要なのは刃術(ジンジュツ)の才では無く

高貴なる誇りと精神。

そして、首を一気に切り落とす剣術です。」


しかし、ハーゴンはクリスの言葉を

聞いていなかった。


若きハーゴン

「…六大貴族の中でも

ながらく天授万才(テンジュバンサイ)はいなかった。

それがミシェールに…これも血なのか。」


青年クリス

「一族の恥晒ハジサラしの

話しはお辞めください。奴はーー」


若きハーゴン(遮る様に)

「私は受け継ぐ事ができなかった。

それがミシェールに」


思いフケるハーゴンを見て

クリスは心の内から煮えたぎる怒りを

ヌメりと感じていた。


青年クリス

「グッ…ミシェール」


アイビー▶︎▶︎▶︎N


ーー1時間後ーー

ハーゴン、クリス、ラナンキュラスは

ルシファンブルクにある

セントラル刑務所内に併設ヘイセツされた

処刑場"ブローア"に来ていた。

そこは円形に広がる小規模な劇場の様に造られており

帝国の要人、被害者の家族

選ばれた識者に囲まれ処刑演舞が執行される。

ハーゴンとクリスは身体を聖水で清めた後

執行人として光をサエギるほどの

キヌで織られた漆黒の装束ショウゾク

"漆黒衣(シャルル)"に着替え死刑囚を待っていた。


若きハーゴン

「古来よりバンジャマン家は死刑執行…つまり

死刑執行人(ジュジュマン)生業ナリワイとする。

初代皇帝よりタマワりしこの職務は

世襲セシュウをもって受け継がれていくものだ。

一切イッサイの情けをかけず

迷いなく首を切り落とす。心得ているな?」


青年クリス

「…はい。心得ています。」


若きハーゴン

「死罪は極刑。

命を(トザ)す権利を

我々バンジャマン家は与えられている。

それはとてもホマれ高く高貴な事だ。

クリス。今日はバンジャマン家長男として

同席させる。決して目を逸らすな。

お前は私が切り落とした首を拾い上げ

観衆に掲げる役目がある。」


青年クリス

「…はい。役目を全うします。」


若きハーゴン

「ミシェール。」


少年ラナンキュラス

「…はい。」


若きハーゴン

「お前にはまだ早いが

兄の勇姿、そしてバンジャマン家の次男として

私とクリスの姿を遠くから

しっかりと目に焼き付けるんだ。」


少年ラナンキュラス

「…はい。」


若きハーゴン

「行くぞ。」


ハーゴンとクリスは処刑場(ブローア)へ出て行くと

ラナンキュラスは執事と共に

関係者席へと座った。

死刑囚は処刑台中央にある

4段高い台の最上段で

黒い布を被せられ両腕を縛られると

力なくヒザを崩し

コウベを垂れていた。

そして、口に詰め物を入れられているのか

罪人 (ザイニン)は声にならない声を上げていた。


少年ラナンキュラス

「…グッ」


クリスが大きな木箱を手に

最上段にいるハーゴンの元へ向かった。

そして、その木箱を開けると

ハーゴンは勢いよく

緋黒アカグロ(ツルギ)を取り出した。


少年ラナンキュラス

「…あれは」


挿絵(By みてみん)


身体中から湧き上がる

嫌悪感を抑えるラナンキュラス。

ハーゴンは吐き気をモヨオすほど

禍々 (マガマガ)しい汽を放つ(ツルギ)

天高く掲げ観衆に向かって叫んだ。


若きハーゴン

ナンジは罪なき人を殺め

多くのトウトき命を絶った。

ナーベルク帝国

初代皇帝からタマワりしメイにより

バンジャマン家当主

ハーゴン=クロエ=バンジャマンの名のモト

死剣 緋葬殺那(フルスティング)って極刑に処す。

(トザ)せ!!魂は地に…還らん!!」


観衆が息を呑む。


ザンッッと


(ツルギ)が振り下ろされた。



若きハーゴン

「クリス」


切り口や(ツルギ)からも血の一滴さえ溢れない

不思議な光景に皆、圧倒された。

すかさずクリスは罪人 (ザイニン)の首を掲げた。

その瞬間 罵詈雑言バリゾウゴン罪人 (ザイニン)に向けられるが

ハーゴンが死剣 緋葬殺那(フルスティング)を再び振ると

観衆は黙り静寂の中で

処刑演舞は無事終わりを迎えた。



少年ラナンキュラス

「…クリス」


ラナンキュラスは見逃さなかった。

震えるクリスの指先を



少年ラナンキュラス

「クリス…大丈夫?」


青年クリス (遮る様に)

「黙れ」


若きハーゴン

「…クリス」


少年ラナンキュラス

「でも...」


青年クリス

「いらん世話だ。

ミシェール。俺はお前とは違う。

バンジャマン家の長男として

責務を全うした。」


少年ラナンキュラス

「僕はただ…」


青年クリス

せろ」


そう冷たく言い放ったのは

己の弱さを見られたからか

はたまた、自身よりも

自分を心配するラナンキュラスの余裕さに

腹が立ったのか

クリスはラナンキュラスをキッと(ニラ)みつけた。


少年ラナンキュラス

「…グッ」


青年クリス

「フンッ。あんな奴…」


ラナンキュラスは執事と共に

処刑場(ブローア)を後にした。


若きハーゴン

「何故そう突き放すんだクリス。」


青年クリス

「ミシェールには分からせてやらねば。

バンジャマン家は

誇り高き責務を全うしていると。」


若きハーゴン

「クリス。お前は人にも自分にも厳しすぎる。

ミシェールはバンジャマン家の歴代の中でも

最も才ある者だ。

刃汽(ジンキ)を読める者なら分かる。

死剣 緋葬殺那(フルスティング)を手に持った瞬間

ミシェールは殺気を放った。

あの物怖モノオじしない精神は

死刑執行人ジュジュマン生業ナリワイとする我々には

大切なものだ」


青年クリス

「では…次期当主はミシェールが相応フサワしいと?」


若きハーゴン

「いや、それはまだ分からん。」


青年クリス

「…まだ。」


若きハーゴン

「ミシェールはお前と違って

迷いが無さすぎる。」


青年クリス

「どういう意味でしょうか。」


若きハーゴン

「やらぬと決めた時の迷いの無さだ。

それを変えていかねばならない」


青年クリス

「では、刃術(ジンジュツ)の指導を

お辞めになれば良いのではないでしょうか。

父上は精神と身体を鍛えるべきと

言っていましたが…」


若きハーゴン

「いや、今はむしろ逆だ。

刃術(ジンジュツ)を伸ばすべきだと考えている。」


青年クリス

「父上!!それではミシェールを

野放しにするのですか!!!!」


若きハーゴン

「バンジャマン家に

収まる器では無いのかもしれん。」


青年クリス

「父上!!」


若きハーゴン

「クリス。

お前は自身の事だけに集中しなさい。

来年はナーベルク士官学校だ。

弟ばかり気にかけていては入試は受からん。

六大貴族といえども

試験は手加減してくれんぞ。

今は大事な時期だ。

ミシェールの事は放っておくんだ。」


青年クリス

「…はい。」




N▶︎▶︎▶︎画家



ーー数日後ーー

事件は起こる。

まだ幼かったアキレイ達と

遊びにばかり出かけては

問題を起こすラナンキュラスに

クリスの怒りが爆発した。


青年クリス

「いい加減にしろお前たち!!

セントラルのスラム街で何故人を殴った!!」


少年ラナンキュラス

「僕は殴ってないよ!!」


そこにはアキレイ、リナリア、ジジ、ツバキが

ラナンキュラスと一緒に並ばされていた。

そこでジジが手を挙げて何かを言おうとするも

クリスに静止させられた。


青年クリス

「お前には聞いていない。

またよく分からん

御託を並べるつもりだろう!

…寝るなアキレイ!!」


ハッとするアキレイに

クスクス笑うリナリアとジジ。

しかし、ツバキはクリスをジッと見ていた。


少年ラナンキュラス

「みんなでショッピングしてたら

リナリアが迷子になって

そしたらアキレイがどっか行っちゃって

リナリアが戻って来たら今度はアキレイを

探す事になってスラム街に行ったら

アキレイが大人と喧嘩してたんだ。

それでジジが殴りに行って…」


青年クリス

刃術(ジンジュツ)を行使したと?

確かにミシェールと義忠(ヨシタダ)

殴ってはいないみたいだが

刃術(ジンジュツ)を行使した痕跡コンセキがあった。

ミシェール!!

一般市民に刃術(ジンジュツ)を行使するのは

過剰防衛だ!!

鍔騎ツバキ家の者がもみ消さなければ

俺達貴族の立場が危うかったんだぞ!!

それは分かっているのか!!お前たちもだ!!

ジジ!!アキレイ!!

リナリア!!義忠(ヨシタダ)!!!」


何やら納得しないツバキに対して

(ニラ)みを効かせるクリス


青年クリス

「問題ばかり起こすな!!

お前達は今一度、シルバさんに

こってりシボって貰う必要があるな」


どよめくアキレイ達


青年クリス

「もういい。下がれ」


少年ラナンキュラス

「…はい。」


青年クリス

「お前は残れ。」


少年ラナンキュラス

「ぇえー。」


トボトボ帰るジジ達の背中を

羨ましそうに眺めるラナンキュラス


青年クリス

「鍛錬もせずに

いつまでフラフラとしているつもりだ。」


少年ラナンキュラス

「鍛錬してるよ…刃術(ジンジュツ)だってーー」


青年クリス (遮る様に)

刃術(ジンジュツ)ではない。

お前はバンジャマン家の男だろう!!

死剣 緋葬殺那(フルスティング)相応(フサワ)しい使い手になるべく

心も身体も鍛えなければならない!!」


少年ラナンキュラス

「僕は嫌なんだ!!!

バンジャマン家の仕来シキタりとか

僕には関係ない!!!!!!

したい人がすればいい!!

死剣 緋葬殺那(フルスティング)だってそうさ!!

あれはただ人を殺す為の道具だろう!!!

それを神格化シンカクカするなんてどうかしてる!!」


青年クリス

「なんだと!?

ミシェール…まさかお前

バンジャマン家の者でいながら

バンジャマン家を否定するのか!?

そこまでバカだったとは!!!

やはり刃術(ジンジュツ)も全て

取り上げるべきだったんだ!!

父上は間違っている!!!!」


少年ラナンキュラス

「クリスは何も分かってないんだ!!」


青年クリス

「いい加減にしろ!!!!

ミシェール!!

今後、マーティン、ルシファンブルク

鍔騎ツバキ家との接触を禁ずる!!」


少年ラナンキュラス

「僕がそれに従うとでも?」


青年クリス

「お前は一線を超えた。

バンジャマン家に相応(フサワ)しくない!!

恥を知れ!!!ミシェール!!!」


少年ラナンキュラス

「僕だって…

好きでこの家に生まれたんじゃない!!」


青年クリス

「まだ愚弄グロウする気…か!!!」


少年ラナンキュラス

「ウグッ!!!」


クリスはラナンキュラスを殴り飛ばした。


少年ラナンキュラス

「カハッッ」


青年クリス

「その軟弱な名と共に

俺の前から消えろミシェール」



セリーヌ▶︎▶︎▶︎N



その物音に駆けつけた執事達は

クリスとラナンキュラスの間に入り止めた。

後日、ことの顛末テンマツを聞いたハーゴンは

ラナンキュラスを呼び出した。



少年ラナンキュラス

コンコンッ(ノックする音)…父さん」


若きハーゴン

「入れ。」


少年ラナンキュラス

「父さん…僕」


若きハーゴン

「ミシェール。

私はお前を甘やかし過ぎていた。」


少年ラナンキュラス

「僕は…ただ」


若きハーゴン

「クリスが正しい。」


少年ラナンキュラス

「え?」


若きハーゴン

「荷物はまとめてある」


少年ラナンキュラス

「そんな…それってどういう事…」


若きハーゴン

「行きなさい。」


少年ラナンキュラス

「そんな…父さん…僕はただ!!」


若きハーゴン

「バンジャマン家を否定するのなら

お前の好きにするがいい。」


少年ラナンキュラス

「それってどういう事なの!?

父さん!!父さ!ーーー」


若きハーゴン(遮る様に)

「連れて行け」


少年ラナンキュラス

「父さぁぁあん!!!!!」


ラナンキュラスは執事に連れられ

バンジャマン家の屋敷を後にした。

ーーそして時は巻き戻り現代ーー

アイビーとラナンキュラスは星空を見上げて

楽しそうに話していた。


アイビー

「へぇ…。そんな事があったのね。

知らなかった。」


ラナンキュラス

「色々あったさ。本当に色々ね。」


アイビー

「アキレイ隊長は相変わらずなのね。」


ラナンキュラス

「昔からみんな何も変わってないさ。

あの後ジジ達はシルバに

こってりやられたんだよ?

なんだっけな…そう。殴り鬼だ!!」


アイビー

「殴り鬼??何それ!!」


ラナンキュラス

「鬼の顔を全員が殴る事が出来れば鬼の負け。

最後に殴られた人が次の鬼になるんだ。

それまで鬼は

ひたすら殴る事が出来る悪夢の様な遊びさ。」


アイビー

「え…それ誰が考えたの?」


ラナンキュラス

「もちろん。アナスタシアさ。」


アイビー

「え!?アナスタシア隊長って

まだ小さかったわよね?」


ラナンキュラス

「僕らも始めはシルバかな?って

思ってたんだけど

どうやら蓋を開けてみたら

アナスタシアだったらしい。

それを面白がってシルバがやってたのさ。

フフッ…通りで子供っぽいわけだ。」


アイビー

「今やったらどうなると思う?」


ラナンキュラス

「死闘になるね」


アイビー

「ふみ子ちゃんにシルバ副隊長代理に…

あっ!その中にチョウラン君とかラキーナちゃん

ムスカリーノ副隊長代理いれたら

絶対に盛り上がるね!」


ラナンキュラス

「チョウラン副隊長代理と

ラキーナ副隊長代理が泣きながら

逃げ惑う絵が思い浮かぶんだけど…」



アイビー

「ムスカリーノ副隊長代理もね!

ねぇラナン!!終盤に特別ゲストとして

クーワ隊長が来るの!!どう?」


ラナンキュラス

「アイビー。それはもう処刑だよ」


アイビー

「そ、そうね…やめとこ!」


他愛タアイもない話をしながら

夜空を眺めていると

流れ星がキラリと光った。


アイビー

「あ、流れ星!!お願い事した?」


ラナンキュラス

「フフッ。流石に間に合わないさ」


アイビー

「速すぎるもんね。」


するとラナンキュラスは

少しため息をついて口を開いた。



ラナンキュラス

「時の流れはあまりにも速い。

流れ星よりもずっと…ずっとね。」


アイビー

「ラナン。そういえばあれから

どこに連れていかれたの??」


ラナンキュラス

「そうだ。まだ話しの途中だったね。

実はあれから…」




ハーゴン▶︎▶︎▶︎N




ーー時は(サカノボ)

ここはセントラルを取り囲む

ロゼウスに面した深い樹海ーー


挿絵(By みてみん)


移動用魔進 (マシン)ではなく

馬車を乗り継いだラナンキュラスは

古びた石造りの家の前にいた。

道中、馬車の窓から見えた景色は

光がサエギられた薄暗い森だったが

執事が荷物を降ろす間

周りを見渡すとの光が煌めく美しい湖に

様々な植物と小さな菜園があった。

その不思議な光景にラナンキュラスは

思わず目を奪われた。


少年ラナンキュラス

「なんて…美しいんだ。」


すると、風がホホを撫でる。


少年ラナンキュラス

「ん?」





















画家

「おっと。失礼。

道を開けてくれないかな?」



挿絵(By みてみん)




少年ラナンキュラス

「…あっ。」


そこに現れたのはツバの広い大きな黒い帽子に

髪を一つにタバ

絵の具にマミれたエプロン姿の男だった。

女性の様な美しい顔をした男は

にこやかに微笑んで見せた。


少年ラナンキュラス

「す、すみません。」


決して狭くない道なのに

何故、わざわざここを通るのか

理解に苦しむラナンキュラスだったが

それよりも男の顔に見惚ミトれていた。


画家

「おや?どうかしたのかな?」


少年ラナンキュラス

「あっ…いえ。別に」


逆に画家はラナンキュラスの瞳の奥を覗くように

ジッと見つめていた。


画家

「迷いこんだ…訳じゃ無さそうだね。

ラナンキュラス。どうやらお客様の様だ。」


少年ラナンキュラス

「ラナン…キュラス?」


画家は石造りの家に目を向けると

そこに立っていたのは

背筋がスラッと伸びた白髪ハクハツ老女ロウジョだった。


セリーヌ

「ミシェール。」


画家

「じゃぁ、僕は行くよ。

また頼んだよラナンキュラス。」


セリーヌ

「ぇえ。」


少年ラナンキュラス

「あの…荷物が…」


画家

「ん?もう運んでおいたよ」


少年ラナンキュラス

「あれ?」


ラナンキュラスは自分の荷物が

いつ運び込まれたのか

そして、どこに連れてこられたのか

全く分からなかった。


画家

「また会おう」


そう言って画家は深い森に消えていった。


セリーヌ

「もうすぐ日が暮れます。」


ラナンキュラスは手招きされるがまま

石造りの家に招き入れられた。

中に入ると見たことのない植物と花で溢れ

ホコリ一つ付いていない様々なアンティークが

飾られていた。

そして、そのハシには

1枚の赤子の写真が飾ってあった。


セリーヌ

「さぁ、座って。」


少年ラナンキュラス

「あの…僕」


セリーヌ

「座りなさい。」


優しい様で芯のある声に驚いたラナンキュラスは

すぐにイスに座った。


セリーヌ

「今、紅茶を淹れるわ」


しばらくすると

ティーカップに紅茶が注がれた。


セリーヌ

「どうぞ。」


しかしラナンキュラスは

口にしなかった。


セリーヌ

「失礼ですよ。」


少年ラナンキュラス

「あ…はい。」


ラナンキュラスが一口飲もうとすると

セリーヌは更に言った。


セリーヌ

「頂戴致します。」


少年ラナンキュラス

「え?」


セリーヌ

「頂戴致します。と言うのが礼儀よ。」


少年ラナンキュラス

「頂戴…致します。」


そう言ってラナンキュラスは

紅茶を一口飲むとあまりの美味しさに

顔がホコロんだ。


少年ラナンキュラス

「美味しい!!!!!」


セリーヌ

「そう。良かった。」


少年ラナンキュラス

「それで…あの…あなたは…」


セリーヌ

「私はラナンキュラス=セリーヌ=バンジャマン

ハーゴンの母であり

ミシェール…あなたの祖母です。」


少年ラナンキュラス

「え!?!?」


セリーヌ

「驚くのも無理ないわね。」


そう言ってティーカップから手を離すと

セリーヌは静かに語り始めた。


セリーヌ

「六大貴族である以上

離縁する事はしなかったの。

だから姓はバンジャマンのまま。

表向きは療養リョウヨウの為

人里離れて暮らしている事になっているのよ。

聞いて察したと思うけど

六大貴族である事は外界に対して

完璧を求められる。

離縁して戸籍が汚れるくらいなら

事故死として鬼籍に入れるか

または婚姻関係を継続したまま

離れるしかない。」



セリーヌ

「…反応を見る限り私の話は

あまりしていないみたいね。

何か聞いてないの?」


少年ラナンキュラス

「それは…その…えっと…」


セリーヌ

「遠慮なく話して。

嘘は愚かな行為です。」


ラナンキュラスは絶望していた。

自分はバンジャマン家を追放され

一族の恥と言われている祖母に預けられる事を

たった今、理解したからだ。


セリーヌ

「ミシェール?」


少年ラナンキュラス

「い、一族の恥だって…みんな言ってた。」


セリーヌ

「一族の恥。

確かにバンジャマン家から見たら

そうかも知れないわね。」


少年ラナンキュラス

「ごめんなさい」


セリーヌ

「あなたが謝る事はないわ。

よく話してくれましたミシェール。

夕飯にしましょう。」


こんなにも気まずい空気の中

ご飯を食べる事は出来ないと思った

ラナンキュラスは更に気が重くなった。


セリーヌ

「付いてきなさい。」


少年ラナンキュラス

「え?夕飯って

…執事が用意してくれるんじゃ」


セリーヌ

「執事?何を言っているの?

ここでは自分ことは自分でします。」


少年ラナンキュラス

「え!?僕…何も出来ないよ!!」


セリーヌ

「じゃぁ、夕飯は抜きね」


少年ラナンキュラス

「そんな!!!」


セリーヌはアミを持って湖まで歩いていった。


少年ラナンキュラス

「待ってよラナンキュラス!!」


するとセリーヌはアミを湖に投げて

グッと手に力を込めた。


セリーヌ

滅刃(メツハ)の三•波雷(ナミイカヅチ)


バチバチッと網から湖に向かって

電撃が(ホトバシ)ると

プカプカと魚が浮いた。


少年ラナンキュラス

「す、凄い…」


セリーヌ

「引いてミシェール」


少年ラナンキュラス

「え!?こんな大きいアミ…無理だよ!」


セリーヌ

アミを引くのミシェール」


言葉の圧に負けたラナンキュラスは

小さな身体で懸命にアミを引っ張ると

浮いた魚は一網打尽

全て絡み取る事が出来た。


少年ラナンキュラス

「お、重いよ…」


見かねたセリーヌは

アミに手を触れた。


セリーヌ

剋刃(ゴクハ)の九・転歩連重(テプレノン)

重・重・重 (ジュウジュウジュウ)

今回だけよ。次は自分でなさい」


セリーヌがジュウと言う度に

アミが軽くなっていく。


少年ラナンキュラス

「軽い!!!ねぇ!!ラナンキュラス!!

僕にもそれ教えてよ!!」


セリーヌ

「…興味があるの?」


少年ラナンキュラス

「僕も少しは出来るよ!!」


セリーヌ

「では、(トウ)をやってみなさい」


少年ラナンキュラス

「楽勝だよ!」

滅刃(メツハ)イチ(トウ)!!』


ラナンキュラスは両手を合わせて

刃汽(ジンキ)を押し固めた光の刀を創り出した。


セリーヌ(心の声)

((少しアラいけど

研ぎ澄まされた(ヤイバ)

この歳でこれほどまでに出来るなんて…))


少年ラナンキュラス

「どう!?」


セリーヌ

「まだダメね。」


少年ラナンキュラス

「…やっぱりそうだよね。

中々、鋭くなってくれないんだよ…」


セリーヌ

「今日はもういいわ。

夕飯の支度に取り掛かるから。

そこの菜園から人参、玉ねぎを

2つずつとってきてちょうだい。」


少年ラナンキュラス

「人参…ってどんな形してるの?」


セリーヌ

「人参も知らないの??

細い葉っぱに長いオレンジ色の野菜よ。」


少年ラナンキュラス

「分かった!!取ってくる!!」


数分後、食卓にはコンソメの香りが立ち込めた。

しかしあまりに質素な

ミネストローネと魚の煮付けに

食欲は湧かなかった。


少年ラナンキュラス

「…お肉は?」


セリーヌ

「無いわ」


少年ラナンキュラス

「…キャビアは?」


セリーヌ

「無いわ」


少年ラナンキュラス

「フカヒーー」


セリーヌ (遮る様に)

「無いわ」


少年ラナンキュラス

「ほぼ野菜じゃないか!!」


セリーヌ

「自然に感謝して

有り難く頂戴しなさい」


少年ラナンキュラス

「…そんなぁ」


セリーヌ

「ミシェール?」


少年ラナンキュラス

「頂戴…します。」


会話も無いまま

スプーンやフォークの音が鳴り響く。


少年ラナンキュラス

「テレビは…無いのかな?」


セリーヌ

「無いわ。」


少年ラナンキュラス

「お風呂は…あるよね?」


セリーヌ

「はぁ。お風呂はあるわよ。」


少年ラナンキュラス

「トイレは…」


セリーヌ

「食事中よ。」


少年ラナンキュラス

「…はい。」


食事を終えたラナンキュラスは

部屋をウロウロしていた。


セリーヌ

「何をしてるの?

自分で食べた食器は自分で片付けて。」


少年ラナンキュラス

「え!?そんな!!

お皿なんて割ったことしかないよ!!」


セリーヌ

「割ったら許しません。」


少年ラナンキュラス

「そんな…」


台所に立ったラナンキュラスは

初めて皿を洗っていた。


少年ラナンキュラス

「ラナンキュラス!!

どうやって洗えばいいの??

洗剤はどれなの!?ラナンキュラ…あっ」


パリンッと皿が割れる音が響く。


少年ラナンキュラス

「ラ、ラナンキュラス!!お皿が!!あっ

割れちゃったよ!!!どうしよう!!あっ」


次々と皿を割るラナンキュラスに

セリーヌは厳しい表情で歩いてきた。


少年ラナンキュラス

「だ、だから言ったじゃないか!!

僕は割ったことしかないって!!イデッ!!」


ラナンキュラスは割った皿を掴んで

指を切ってしまった。


少年ラナンキュラス(泣きながら)

「だ、だから言ったじゃないかぁあ!!」


セリーヌ

「大袈裟ですよ。

少し切ったぐらいで泣かないの。

あなたの祖先は首を切って来たのよ?」


少年ラナンキュラス(泣きながら)

「それとこれとは別だょぉおお」


セリーヌ

「指を見せなさい。」


出血した指にセリーヌは手を当てた。


セリーヌ

照刃(ショウハ) 十一・ 合谷天(ゴウコクテン)


すると傷が瞬時に塞がった。


少年ラナンキュラス

「すごいや!!

ラナンキュラスは何でも出来るんだね!!」


セリーヌ

「割れた皿を直すからどきなさい。」


少年ラナンキュラス

「あ、はーい。」


セリーヌは割れた皿を集めて

両手をカザした。


セリーヌ

照刃(ショウハ) 十九 ・ 廻位転変(カイイテンペン)


少年ラナンキュラス

「それは…父さんの…」


時間が巻き戻るかの様に

皿が逆再生され元に戻っていった。


セリーヌ

刃術(ジンジュツ)

戦闘の為だけに使う訳ではないの。

応用次第で無限に広がるものなのよ。

じゃぁ。続きをなさい。」


少年ラナンキュラス

「はーい。」


数分後、無事に皿を洗い終えたラナンキュラスは

風呂にかっていた。


少年ラナンキュラス

「凄かったなぁ…ラナンキュラス。

あんなに沢山、刃術(ジンジュツ)を使えるなんて。

どこで習ったんだろ。」


そう呟き風呂を出たラナンキュラスに

衝撃が走る。


少年ラナンキュラス

「ラナンキュラス!!僕の着替えは!?

バスタオルは!?!?」


すると扉の向こうから声がした。


セリーヌ

「自分で用意しないからよ。

ここには執事はいないの」


少年ラナンキュラス

「そんな!!僕は今!!裸だよ!?」


セリーヌ

「だから何ですか?

皆、服の下は裸です。」


少年ラナンキュラス

「その服が無いから困ってるんだよ!!」


セリーヌ

「どうにかなさい」


少年ラナンキュラス

「そ、そんなぁぁあ!!!」


ラナンキュラスは自分の荷物の位置を

懸命に思い出そうとしたが

自分で運び出した訳でない事を思い出し

絶望していた。


セリーヌ

「風邪をひいても医者は来ません」


少年ラナンキュラス

「わ、分かったよ!目を閉じててね!

いい??開けるよ!?」


素早く扉を開けたラナンキュラスは

目の前で自分を

見下ろすセリーヌと目があった。


セリーヌ

「何をしているの?服を着て。」


少年ラナンキュラス

「わーーーーー!!!!!」


裸のまま走り股間を押さえるラナンキュラスは

石造りの家を右往左往ウオウサオウしていた。


少年ラナンキュラス(息を切らしながら)

「目を閉じててって言ったじゃないかー!!」


セリーヌ

ズズッーー (紅茶をすする音)

返事をする前に開けたのは

ミシェールあなたよ。」


少年ラナンキュラス(息を切らしながら)

「僕の荷物はどこぉおおおお!!!!」


セリーヌ

「2階の寝室」


少年ラナンキュラス(息を切らしながら)

「階段どこぉおお!!!」


セリーヌ

「突き当たり右」


少年ラナンキュラス(息を切らしながら)

「どの部屋なのぉおお!!!」


セリーヌ

「手前の部屋よ」


ーー数分後ーー


少年ラナンキュラス(息を切らしながら)

「はぁ…はぁ…はぁ…

ありがとうラナンキュラス」


セリーヌ

「次から用意しとくのね。」



クリス▶︎▶︎▶︎N


ーー数ヶ月後ーー

自給自足にも慣れたラナンキュラスは

セリーヌとの暮らしの中で

様々な事を学んでいった。

野菜や紅茶の作り方、生活の知恵

湖で獲った魚や菜園で採れた野菜と紅茶を

セントラルに売りに行ったり

お金の勘定も出来る様になっていた。

しかし、1番成長したのは刃術(ジンジュツ)の腕前だった。


少年ラナンキュラス

「ラナンキュラス!!

今日は僕が獲ってくるね!!」


セリーヌ

「あまり遠くに行かないでね。」


少年ラナンキュラス

「分かってるよ!!」


家を出たラナンキュラスは

湖の上で立ち止まると一気に飛び上がった。


少年ラナンキュラス

剋刃(ゴクハ)の三・走疾 (ハシリバヤテ)!!』

剋刃(ゴクハ)の四・絞縄(シメナワ)!!』


ラナンキュラスは風をマトい勢いをつけ跳躍した。

遠くにある木のミキ

刃汽(ジンキ)で生成した光のナワを縛り付けて

振り子の原理で対岸へと移動した。


少年ラナンキュラス

「ヨッと!!」


ラナンキュラスは密林の沼地に生息する

ナーベルクヤシガニを獲りに

樹海深くまで来ていた。


少年ラナンキュラス

「あれ??確かここだった様な…」


更に奥へ進んでいくと

一気に樹海が開けた。


少年ラナンキュラス

「ここは…」


その奥には見覚えのある男が

キャンバスに向かって絵を描いていた。

辺りを見渡すと

セリーヌの家にも飾られている花が

一面に広がっており

青い空と暖かい風が相まって

とても神々(コウゴウ)しく目に映った。


少年ラナンキュラス(心の声)

((綺麗な…人))


ラナンキュラスは木の影から

そっと眺めていると画家は筆を止め

キャンバスを見続けたまま口を開いた。


画家

「また会えたね。」


少年ラナンキュラス

「え…あの…何で、分かったの?」


画家

随分 (ズイブン)と成長したみたいだ。

こっちへおいでよ。

そこにいたら藪蛇ヤブヘビに噛まれて

堕ちてしまうかもよ?」


少年ラナンキュラス

藪蛇ヤブヘビ!?うわぁあ!!!」


画家

「フフッ。君はまだ無垢ムクなんだね。

ケガれを知らない無垢ムクな子供。

地に堕ちた人間と違ってとても美しい。」


ラナンキュラスは画家が何を言っているのか

さっぱり分からなかった。

すると、画家はバスケットから

リンゴを取り出した。


画家

「食べるかい??

ちょうどそこの木になっていてね。

食べ頃だと思うんだけど

せっかくなら君にあげようと思って

獲っておいたんだ。」


画家はまるで自分が来る事を

分かっていたような口ぶりだった。


少年ラナンキュラス

「ありがとう!!

でも知らない人から食べ物を貰っちゃダメだって

ラナンキュラスが言ってたからいいや。」


画家

「おや?

ラナンキュラスと友人である僕からでも

ダメなのかい??」


少年ラナンキュラス

「だって僕は知らないもん」


画家

「フフッ。

相変わらずサカしい御夫人だ。」


すると手に持っていたリンゴは

みるみると、とぐろを巻いた蛇に変わった。


少年ラナンキュラス

「わーーっ!!!!」


画家

「軽い手品さ。

ちょっと驚かせようと思ってね。」


少年ラナンキュラス

「む、向こうに投げてよ!!」


画家は微笑むと

その蛇をそっと草陰クサカゲに逃した。


画家

「目に見えるものが真実とは限らないよ。

覚えておくといい。」


少年ラナンキュラス

「そ、それも刃術(ジンジュツ)??」


画家

刃術(ジンジュツ)?いいや。

ただの手品さ。

驚かせてしまってすまないね。

人が驚く顔が好きなんだ。

特に君の様に無垢ムクな心を持っていると

期待以上の表情を見せてくれる。」


少年ラナンキュラス

「なんだよ…それ」


画家

「そう言えば…君の名は確か…」


少年ラナンキュラス

「…ミシェールだけど」


画家

「ミシェール。美しい名だね。」


少年ラナンキュラス

「変な名前だよ。クリスに女々しいって

バカにされるんだ。」


画家

「その名が嫌いかい?」


少年ラナンキュラス

「…好きじゃない」


画家

「自分の名を受け入れられないのであれば

変えてしまえばいい。君の人生だ。

全ての選択肢は君の手に委ねられている。」


少年ラナンキュラス

「でも…名前を変えるなんて無理だよ。」


画家

「親は子に対して色んな想いを込めて

名を付ける。健康や人徳、生き様。

様々な理由があるけど

果たしてそれは名付けられた本人が望むのか。

僕はね。

1番大切なのは親がどう在って欲しい。

ではなく自分がどう在りたいか。

だと考えているんだ。」


少年ラナンキュラス

「自分がどう在りたい…か」


画家

「君はどう在りたいんだい?」


少年ラナンキュラス

「…分かんない。」


画家

「誰しもが自分という人生の主人公である事を

忘れちゃいけないよ。」



少年ラナンキュラス

「分かった。考えてみるよ!!!」


画家

「それまで君はミシェールのままだね。」


画家はラナンキュラスと話してる間も

ずっとキャンバスに向かって絵を描いていた。


少年ラナンキュラス

「ちなみに、お兄さんは

ここで何してるの??」


画家

「気になるかい?」


少年ラナンキュラス

「だって話してる間

僕の顔も見ないでずっと描いてるんだもん。」


画家

「フフッ。

見ての通り絵を描いてるんだ。

ここにいると沢山の事が見えるからね。」


少年ラナンキュラス(心の声)

((何の絵かな…花を描いてるのかな…))


画家

「ミシェール。君は運命にアラガいたいと

思った事はあるかい?」


少年ラナンキュラス

「運命??そう言うのはよく分からないよ」


画家

「始まりと終わりは決まっていて

その過程にはオビタダしい程の選択肢が

分岐しているんだ。

どれを選択しても終わりは同じなのさ。」


少年ラナンキュラス

「んーー。ツラく無ければなんでもいいや。」


すると画家はクスクスと笑った。


画家

「フフッッ」


少年ラナンキュラス

「ど、どうしたの!?」


画家(笑いながら)

「いや、それは無理な話だと思ってね。」


少年ラナンキュラス

「どうして!?」


画家

「知っているかい?

今では当たり前のように皆

死刑執行人(ジュジュマン)と呼んでいるが

その語源はバンジャマンにある。

バンジャマンであるからこそ

死刑執行人(ジュジュマン)であり

死刑執行人(ジュジュマン)であるからこそ

バンジャマンなのさ。」


少年ラナンキュラス

死刑執行人(ジュジュマン)って

バンジャマンから来てたんだ…

でも、それがどうしたの?」


画家

「人の命を(トザ)す一族に

楽な道はないって事さ。

裁いた命を背負うのはツラく無いとでも?」


少年ラナンキュラス

「…それは」


画家

「名には力がある。

名付けられたその瞬間から力が宿る。

だけどその力を捨てるも使うも

全ては君次第。選択肢は無限に分岐している。

でも、忘れちゃいけないよ。

君は死ぬまで

バンジャマン家だと言う事をね。」


やわらかい声から

発せられる言葉一つ一つに

ラナンキュラスは圧倒されていた。

それを見た画家は優しく微笑んだ。


画家

「フフッ。難しい話しをしてしまったね。

そういえばミシェール。

どうしてここにいるのかな?」


少年ラナンキュラス

「ヤ、ヤシガニを獲りに来たら

迷っちゃって…」


画家

「…そうか。帰りは気をつけるんだよ。

それとヤシガニは毒があるから

やめた方がいい。

ラナンキュラスの身体にサワるからね。」


少年ラナンキュラス

「わ、分かった。」


画家

「また遊びにおいで。」


少年ラナンキュラス

「ありがとう画家のお兄さん!!」


そう言ってラナンキュラスは

いつもどおり魚を獲って帰って行った。



画家▶︎▶︎▶︎N


ーークリスサイドーー

バンジャマン家の屋敷内にある

ハーゴンの書斎にて


若きハーゴン

「クリス…何か不満でもあるのか?」


青年クリス

「樹海にまで警備の者を

巡回させるのはイササかやりすぎかと。

一族の恥さらし2人には

相応(フサワ)しくないのでは」


若きハーゴン

「クリス。お前は余計な心配をするな。

お前は自身の事だけに集中すればいい。

バンジャマン家の長男として務めを果たす。

それだけを考えていればいいんだ。

お前は何かとミシェールが気になって

仕方ない様に見える。」


青年クリス

「俺はただバンジャマン家としての誇りの無い

ミシェールが腹立たしいだけです。」


若きハーゴン

「感情を曇らせるな。

たった一人の弟だぞ。」


青年クリス

「だからです。来年、士官学校に入学すれば

戦争に駆り出される可能性も出て来る。

もし父上や俺がこの戦乱の世で命を落とせば

バンジャマン家にはミシェールただ1人。

そうなればミシェールは

バンジャマン家の当主として

生きていかねばならないのです。」


若きハーゴン

「…分かっている。

クリス。お前は昔から優し過ぎる。

それがアダにならぬ様に気を付けろ。

前にも言ったが今は大事な時期なのだから」


青年クリス

「…はい。」


若きハーゴン

「では本題を話そうか。クリス。

お前を呼び出したのは他でもない…」


ハーゴンはそう言うと

古めかしい長方形の木箱を取り出した。

フタを開けると

そこには緋黒アカグロ禍々 (マガマガ)しい(ツルギ)

厳重に保管されていた。


若きハーゴン

「あまり深く話してこなかった。

だが私もお前と同じ歳の頃に

この場所で父から教わった。」


クリス

「…これは」


若きハーゴン

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)

罪人 (ザイニン)の血しぶきで鍛えられた

バンジャマン家代々伝わる呪いの(ツルギ)だ。」


青年クリス

罪人 (ザイニン)の血しぶき…呪いの(ツルギ)!?」


若きハーゴン

「今いる上級貴族は元を辿れば

初代皇帝を護る15人の騎士だった。

武官、文官とそれぞれに別れ

ナーベルク帝国を守護して来た。

15人の騎士は初代皇帝の血脈と

それぞれ婚儀を結びその中でも

五家は最上位貴族として数えられた。」


青年クリス

「それは…知っています。」


若きハーゴン

ノチに武家の中でも

商才があったマーティン家が

上位 (ジョウイ) 十士族 (ジュッシゾク)から離脱し

六大貴族となり 十士族 (ジュッシゾク)は廃止された。

我々バンジャマン家とは最上位貴族の一角。

国の建国に携わった誇り高き一族だ。

それぞれの家には皇帝より

ホマレ高き"二つ名"を授けられた」


青年クリス

「二つ名を授けられた?

他の15の家もですか?」


若きハーゴン

「そうだ。 十士族 (ジュッシゾク)廃止と共に

その二つ名もスタれてしまったが

六大貴族は未だに掲げる事を許されている。」


クリス

「聞いた事がありませんでした…

それは一体どんな二つ名なのでしょうか」


若きハーゴン

「最強の剣閣集団ケンカクシュウダンと恐れられた

"皇帝の(ツルギ)"鍔騎ツバキ

あらゆる手段と戦法を編み出し国を護った

"皇帝の(タテ"ルシファンブルク家

医療、医学を極めた

"皇帝のイヤシ"グレイ家

古今東西ココントウザイの知識で国を支えた

"皇帝のエイチ"ブルダニア家

船や馬車、築城チクジョウといった様々な技術を持った

"皇帝のタクミ"マーティン家

正罰として唯一の執行を許された

"皇帝のサバキ"バンジャマン家。」


ハーゴンの話を聞いたクリスは

それぞれの貴族がその二つ名を

未だに守り続けている事が容易に理解出来た。


若きハーゴン

「バンジャマン家には昔

もう一つの顔があった。

死剣 緋葬殺那(フルスティング)が使われる以前

刑を執行される際に使われる武器は

バンジャマン家が

全て鍛え上げ造り出して来た」


青年クリス

「鍛え上げ造り出した…

まさか死剣 緋葬殺那(フルスティング)は」


若きハーゴン

「そうだ。死剣 緋葬殺那(フルスティング)とは

バンジャマン家7代目当主

ユーガ=ルイス=バンジャマンが

罪人 (ザイニン)の血しぶきで

鍛えたとされている(ツルギ)だ。」


青年クリス

「あれだけの(ツルギ)を…

どうやって作り出したんですか!?」


若きハーゴン

「当時のバンジャマン家は

刑の執行が無い期間は

武器の鍛冶屋をしていた。

この屋敷を見てみろ。各部屋、廊下にまで

様々な武器が飾られてあるだろう?

それはその名残りだ。」


青年クリス

「それは分かりましたが…

そのユーガが血しぶきを使って鍛え上げたから

死剣 緋葬殺那(フルスティング)

こんなにも緋黒アカグロいんですか?

それにこの禍々 (マガマガ)しい汽は

正直…近づく事が怖いとさえ感じます。」


若きハーゴン

「元々鍛えた(ツルギ)

血を浴びるたびに鍛え直したとも

一説として言われている。

クリス、お前も握れば分かる。

その怖さは捨てる必要はない。

受け入れればいい。

後は死剣 緋葬殺那(フルスティング)

振り下ろしてくれる。」


青年クリス

「…はい。それともう一つ。」


若きハーゴン

「なんだ?」


青年クリス

「父上、死剣 緋葬殺那(フルスティング)の切り口から

血が出ないのは何故でしょうか。」


ハーゴンはしばらく考えた後

静かに口を開いた。


若きハーゴン

「それは…分からん。

遥か昔より血は出なかったらしい。

数多アマタの命を(トザ)してきた呪いやもしれん」


するとハーゴンは

死剣 緋葬殺那(フルスティング)ツカを指差した。


若きハーゴン

「気づいていると思うが

ここに彫られているのは

私の左頬ヒダリホホと同じ

バンジャマン家の 刺青(タトゥー)だ。

この 刺青(タトゥー)はバンジャマン家の男が

初めて首を斬り落とした夜に彫られるものだ。

いずれ、お前の左頬ヒダリホホにも彫ることになる。」


青年クリス

「覚悟は出来ています。」


若きハーゴン

「この 刺青(タトゥー)はバンジャマン家のゴウ

そして、人を表している。」


青年クリス

ゴウ?人?」


若きハーゴン

罪人 (ザイニン)が刑に処される時

足のケンを斬られたノチ

両腕を縛られる。

この時、力なく立てなくなり

自然とコウベを差し出す姿勢になる。」



挿絵(By みてみん)


青年クリス

「…つまり、その姿を表している。と」


若きハーゴン

「そうだ。

これは人の命を(トザ)す者の覚悟

そして、そのゴウを背負う者の証。

それを忘れぬ為に顔に彫るのだ。」


青年クリス

「腕でもなく背中でもなく

後めたさなど持ち合わせず

堂々と誇り高き責務を知らしめる為に。

…父上、聞いても良いですか?」


若きハーゴン

「なんだ」


青年クリス

由緒ユイショある

バンジャマン家の歴史を知りながら

何故、ラナンキュラスはあの様な事を…」


するとハーゴンは窓に映る自身の瞳を見た。


若きハーゴン

「…何故だろうな」



ーー再び時は巻き戻り現代ーー

懐かしげにアイビーに語るラナンキュラスは

遠くを見つめていた。


ラナンキュラス

「あのリンゴ…なんだったのかなぁ」


アイビー

「もしかして…

リンゴが嫌いになった理由って」


ラナンキュラス

「フフッ。そうだよ。

あれからダメなんだ。」


アイビー

「えー!リンゴじゃなくて蛇じゃないの?」


ラナンキュラス

「未だにリンゴが蛇に変わるかもしれない。

って考えると食べれないだろ?」


アイビー

「リンゴは蛇に変わりません!」


ラナンキュラス

「分かってはいるんだけど

幼い僕からしたら衝撃だったんだよ」


アイビー

「レンゲイ隊長が作るアップルパイ美味しいのに

いつも貰っても食べないんだから」


ラナンキュラス

「レンゲイと千刃茶会ティーパーティーする時

アップルパイは勘弁してくれって言ってるのに

克服させようとしてくるんだよ。

美味しいですから。ってさ。」


アイビー

「本当に美味しいのに…

でもいいじゃない。

他のお菓子も作ってきてくれるし。

ねぇ!そう言えば何で千刃茶会ティーパーティー

いつもラナンとキスツス隊長と

レンゲイ隊長だけなの?」


するとラナンキュラスは思わず笑った。


ラナンキュラス

「アハハッ。アイビー考えて見てよ。

ツバキやアナスタシアが来たら

空気が重いだろ?

ジジが来たら文句が止まらないし

アキレイが来たらリナリーも来るけど

きっとアキレイは紅茶の味なんて分からないし

ジニアとガーベラが来ればどんちゃん騒ぎ。

クーワ隊長が来たら暴れ出すから

消去法でこのメンツなのさ。」


アイビー

「…そうだよね。

ねぇ、ラナン。話聞いてて思ったんだけど

おばあちゃんって…

ラナンの刃術(ジンジュツ)の先生?」


ラナンキュラス

「ぁあ。出来る範囲の中で

色んなこと教えてくれたんだ。

後から聞いたんだけど

元々、ナーベルク士官学校の先生を

やってたらしいよ。

結婚を期に辞めたらしいけどね。

通りで教えるのが上手い訳だよ。

他にも色々厳しかったし。

特に女性に対するマナーとかは

本当に厳しかった。」


アイビー

「じゃぁ。おばあちゃんのお陰ね。」


ラナンキュラス

「そうだね。

やっぱりラナンキュラスも

自分が女性としてナイガシろにされた事もあって

僕にはそうして欲しくないと思ったのかな?

今考えるとそう思うよ」


アイビー

「…ラナン。

どうしておばあちゃんは

一族を追放されたりしたの?」


ラナンキュラス

「それはね…」


ーー時は再び(サカノボ)るーー

ラナンキュラスとセリーヌは

いつもの様に食事していた。


セリーヌ

「ミシェール。

何故、食器に映る自分の顔を

見る必要があるの?」


少年ラナンキュラス

「今日、ジジ達と遊んでたら

他の女の子が僕の顔見るから

笑ってみたんだ。

そしたら逃げたんだよ。

ねぇ、ラナンキュラス僕の顔って変?」


するとセリーヌは食事の手を止めた。


セリーヌ

「バンジャマン家は代々、端正な顔つきなの。

それも相まって死刑執行人(ジュジュマン)という生業ナリワイ

更にバンジャマン家を孤立させて来た。

人と話す時、接する時は常に笑顔でいなさい。

じゃ無いとミシェールは孤独のままよ。」


少年ラナンキュラス

「え!?じゃぁ僕はカッコイイって事?」


セリーヌ

「ウフフフフッ」


するとセリーヌは思わず笑った。

初めて笑った顔を見たラナンキュラスは

自分がカッコイイ事はセリーヌを喜ばせると

勘違いしてしまった。

この出来事はノチ

ラナンキュラス自身の人格形成に

大きく関わる事となった。


セリーヌ

「えぇ。ミシェール。あなたはカッコいいわ。

手足の長さも顔の作りも

バンジャマン家そのものね。

でも、あなたの目の色と髪色だけは

母親譲りよ。」


少年ラナンキュラス

「僕の母親?」


セリーヌ

「えぇ。イブリラ=ロラン=バンジャマン。

彼女はとても快活で清らかな人だった。

私は…」


少年ラナンキュラス

「ラナンキュラス?どうしたの?」


突然、暗い表情になったセリーヌは

悲しげな目でラナンキュラスを見た。



セリーヌ

「私は彼女を…」



少年ラナンキュラス

「どうしたの?」



































セリーヌ

「殺してしまった」




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挿絵(By みてみん)



作者 REN’sJackson


劇情版

千刃花センジンカ帝国特務戦闘部隊テイコクトクムセントウブタイ〜ー

3rd(サード) Anniver(アニバー)sary(サリー) Special(スペシャル) Edition(エディション)

Ranunculus(ラナンキュラス)'s() Side Story(サイド ストーリー)

The () Star (スター)gazing (ゲイジング)scene RED(シーン レッド)



※音楽がある場合鳴り止むまで待つ

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おまけ



























配役変更一覧

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アイビー▶︎▶︎▶︎イブリラ (ラナンの母)

挿絵(By みてみん)


画家▶︎▶︎▶︎キフォス (ハーゴンの父)

挿絵(By みてみん)


セリーヌ▶︎▶︎▶︎在りし日のセリーヌ

挿絵(By みてみん)


青年クリス▶︎▶︎▶︎N


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ーー時は更にガギリガギリと巻き戻るーー


それはまるで、物語のページをメクる様に。


在りし日の記憶をエガ


筆先の様に。



イブリラ

「こうして、広大な平原は黄昏タソガ

美しい風が吹き抜けるのでした。

めでたしめでたし…ウフフッ。

クリスは眠っちゃったみたいね。」


イブリラは大きいお腹を抱えながら

まだ幼いクリスを横に寝かせた。


イブリラ

「もうすぐクリスはお兄ちゃんになるのよ。

しっかり弟を守ってね。」


すると勢いよく扉がバンッと開いた。


在りし日のセリーヌ(息を切らしながら)

「ハァ…ハァ…ハァ…」


イブリラ

「!?お母様!!クリスが寝ています!!」


在りし日のセリーヌ(息を切らしながら)

「ハァ…ハァ…

イブリラ…今すぐ逃げなさい!!」


イブリラ

「何を仰っているのか分かりません!!

落ち着いて下さい!!」


イブリラはセリーヌが

両手に抱えている木箱を見た。


イブリラ

「お母様…それは」


在りし日のセリーヌ

剋刃(ゴクハ) 十三 • 遮々音々(シャシャオンオン)


セリーヌは両手を広げて

イブリラがいる寝室に

音を遮断する空気のマク

クリスだけを除き展開した。


在りし日のセリーヌ

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)です」


イブリラ

「いけませんお母様!!

持ち出してはなりません!!

それはバンジャマン家の宝剣です!!」


在りし日のセリーヌ

「宝剣ではありません。

これは呪いの(ツルギ)です。」


イブリラ

「それはただのイワれに過ぎません!」


在りし日のセリーヌ

「聞きなさい。

この死剣 緋葬殺那(フルスティング)

ユーガが不貞を働いた妻を殺し

その血と肉で創り上げたものです。」


イブリラ

「…妻を殺しその血と肉で創り上げた?

にわかに信じがたいです。

…そんな事どこで知ったんですか!?」


在りし日のセリーヌ

「これはハーゴンでさえも知りません。

死剣 緋葬殺那(フルスティング)には

ユーガの(オン)がこもっているのです。

バンジャマン家は呪われた一族。

バンジャマン家の者に真実の愛を誓われた者には

必ず災いが降り注ぐ。

それがユーガの呪いです。

その代償の引き換えに栄華繁栄エイガハンエイと力を

後世に約束したのです。」


イブリラ

「それでは辻褄ツジツマが合いません。

お母様には災いが降り注ぎましたか?」


在りし日のセリーヌ

「残念ながら…私は夫に

愛されていなかった様です。

唯一、夫から貰ったプレゼントは

あのオルゴールだけ…」


イブリラ

「そんな…」


在りし日のセリーヌ

「しかし、ハーゴンは違う。

イブリラ、あなたを深く愛しています。

私も長年、悩んで来ました。

死剣 緋葬殺那(フルスティング)の呪いを

断ち切るべきか否か。」


イブリラ

「何故…今なんですか?」


在りし日のセリーヌ

「それはコレです。」


セリーヌは小さな小瓶を手に取った。

その中には灰色の粉が入っていた。


イブリラ

「お母様、それは…不神鳥 (シンフェニックス)の灰。」


在りし日のセリーヌ

「士官学校時代に教えましたね。

S級 魔獣生物 (ドラゴン)

不神鳥 (シンフェニックス)の白い炎から生まれる灰には」


イブリラ(遮る様に)

「神をも穿ウガ能力(チカラ)がある。

お母様、まさかそれを使って死剣 緋葬殺那(フルスティング)

破壊するつもりですか?キフォス様は…

お父様は知っているのですか?」


在りし日のセリーヌ

「いいえ。

とにかく、私が確実に破壊するまで…

安全な場所に身を潜める必要がありまーーー」


キフォス(遮る様に)

剋刃(ゴクハ) 四十四(シジュウシ)断絶断壁(ダンゼツダンペキ)!!』


在りし日のセリーヌ

「グッ!!!!」


イブリラ

「お母様!!!!」


在りし日のセリーヌ

剋刃(ゴクハ) 十三 • 遮々音々(シャシャオンオン)!!』


遮々音々(シャシャオンオン)を破壊され

吹き飛ぶセリーヌだったが

クリスの周りにだけ音が遮断される様に

空気の膜を張り直した。


キフォス

「…セリーヌ」


そこに立っていたのはバンジャマン家当主であり

セリーヌの夫キフォスだった。


キフォス

「1つ。何故、お前が

死剣 緋葬殺那(フルスティング)を持っているのか。

2つ。この私をアザムけると思ったのか。

3つ。ここで首を斬り落とされたいか否か。

答えろセリーヌ。」


冷徹な目でセリーヌを見下ろすキフォスは

セリーヌに問いかけた。


在りし日のセリーヌ

「4つ。ノーコメントよ。

下がりなさいイブリラ!!」

剋刃(ゴクハ) 十一(ジュウイチ)天殿洞盾(テンデンドウム)!!』


キフォス(遮る様に)

剋刃(ゴクハ)の四・絞縄(シメナワ)


在りし日のセリーヌ(遮る様に)

滅刃(メツハ)ナナ渦螺旋ウズラセン!!』


キフォス(遮る様に)

剋刃(ゴクハ)ハチ(シュン)


在りし日のセリーヌ(遮る様に)

剋刃(ゴクハ)のニ・閃雷(センライ)!!』


セリーヌはドーム状の障壁を

イブリラとクリスを守る様に展開し

キフォスが放った縄を衝撃波でいなすと

目眩メクラマしの閃光を放った。


キフォス

「逃すか!!」

剋刃(ゴクハ)の五・ 痺草(シビレグサ)


在りし日のセリーヌ

「正気!?…グッ」


イブリラ

「お母様!!!!」


キフォスは白い花を咲かせて

しびれ粉を部屋に充満させた。


在りし日のセリーヌ

「クリスと…イブリラが…いる…のに」


キフォス

照刃ショウハ 二十二 ・膜空栓花マクウセンカ


キフォスは自身の顔の周りを酸素で覆った。


キフォス

天殿洞盾(テンデンドウム)を展開したのはお前だ。」


キフォスはゆっくりセリーヌに近づくと

木箱を手に取った。


キフォス

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)

どうする気だった。

ん?…これは…不神鳥 (シンフェニックス)の灰。

なるほど。

相変わらずサカしい女よ。

誰の入れ知恵か知らぬが

これを使って死剣 緋葬殺那(フルスティング)

破壊する気だった…のか!!フンッ!!」


キフォスはセリーヌの手から滑り落ちた小瓶を

思いっきり踏み潰した。



キフォス

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)

バンジャマン家の象徴。

それを破壊しようなどと恥を知れ!!」


在りし日のセリーヌ

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)は…呪いの(ツルギ)

あなたは…その意味を…

知っているのですか?」


キフォス

「…どこでそれを」


在りし日のセリーヌ

「知って…なお…あなたは…

イブリラ…に降りかかる災いを…

放って置くのですか?」


キフォス

「それがバンジャマン家だ。

私の父も母も祖父も祖母も

災いを甘んじて受け入れてきた。

バンジャマン家 繁栄の為なら

犠牲はむなし。」


イブリラ

「お父様…」


キフォス

「私の母も不慮フリョの事故で死んだ。

バンジャマン家の男は強い。

それは死剣 緋葬殺那(フルスティング)のおかげである」


在りし日のセリーヌ

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)のおかげ?

人の命を…なんだと…お思いなのですか?」


キフォス

「ユーガの怨念オンネンは強い。

しかし繁栄を願う力も強い。

心配するなイブリラ。

母がいなくとも子は育つ」


在りし日のセリーヌ

「私は…私の子と 義理の娘(ムスメ)を…守る。

その呪われた(ツルギ)を…渡して…キフォス」



キフォス

「いつまで恥をサラすつもりだ。

下級貴族の分際が

バンジャマン家に嫁がせてもらえただけ

有り難く思え。

私はお前の刃術(ジンジュツ)の才にしか

興味はない。その遺伝子があれば

お前など用はない。」


イブリラ

剋刃(ゴクハ) 三十四 •浮天波無フテンパムウ!!』


キフォス

「何!?!?」


イブリラ

照刃(ショウハ)の九 • 浄香草 (ジョウカソウ)!!』


キフォス

「…貴様」


イブリラ

「逃げて!!お母様!!

私の刃術(ジンジュツ)じゃ

長く足止めは出来ません!!」


イブリラはキフォスを無重力の結界に閉じ込め

しびれ粉が充満する部屋の空気を浄化した。


在りし日のセリーヌ

「あなたも来なさい!!!」


イブリラ

「いえ。私はここに残ります。」


在りし日のセリーヌ

「何を言っているの!!!」


イブリラ

「私は格式を重んじるバンジャマン家の女。

そして、この子達の母です」


在りし日のセリーヌ

「死んだら母としての務めを果たせません!」


イブリラ

「いいえ。子を産む事が母の務め。

死剣 緋葬殺那(フルスティング)を破壊すれば

バンジャマン家が

没落ボツラクする可能性もある。

そんな不自由はさせません。

何より…ハーゴンに愛されたまま

逝けるのなら本望」


するとキフォスは高らかに笑った。


キフォス

「フハハ…フハハハッ!!

フハハハハハハハ!!!!

滑稽コッケイだなセリーヌ!!!」


イブリラ

「逃げて…もう抑えられ…ません!!」


セリーヌは走り出した。


キフォス

滅刃(メツハ)サンナミ(イカヅチ)!!』


在りし日のセリーヌ

「ァァァア!!!!!!」


電撃がセリーヌの背を襲った。


イブリラ

「お父様!!!!!」


在りし日のセリーヌ

「…キフォス」


キフォスは死剣 緋葬殺那(フルスティング)を取り出し

天に掲げた。


イブリラ

「おやめ下さい!!!」


キフォス

ナンジはバンジャマン家の名をケガ

死剣 緋葬殺那(フルスティング)をも破壊しようと試みた。

ナーベルク帝国

初代皇帝からタマワりしメイにより

バンジャマン家当主

キフォス=カルテーノ=バンジャマンの名のモト

死剣 緋葬殺那(フルスティング)って極刑に処す。

(トザ)せ!!魂は地に…還らん!!

さらばだ!!!セリーヌ!!!」
















若きハーゴン▶︎▶︎▶︎在りし日のハーゴン







在りし日のハーゴン

「父上!!!!!!」


その声にキフォスはキッサキをピタリと止めた。


イブリラ

「ハーゴン!!

お父様を止めて!!!」


在りし日のハーゴン

「母上に何をしているのですか!!」


キフォス

「こやつは死剣 緋葬殺那(フルスティング)

破壊しようと試みた。」


在りし日のハーゴン

「…まさか!!それは本当ですか母上!!」


在りし日のセリーヌ

「死剣 緋葬殺那(フルスティング)には

呪いが込められているの!!!!」


キフォス

戯言ザレゴトだ。

聞く耳を持つ価値もない。」


在りし日のハーゴン

「おやめ下さい父上。

バンジャマン家は皇帝のサバキ

なれば道理に従い罪は償ってもらいましょう。

それが正しい判断です!!」


キフォス

「こんな失態、表に出せる訳なかろう!!

バンジャマン家の恥だ!!!!!

鬼籍に入れる。それにてシマいだ。」


イブリラ

「それはあんまりですお父様!!!」


キフォス

「黙れ。」


在りし日のハーゴン

「私の妻に黙れとは聞き捨てなりません父上。

(ツルギ)を収めないのであれば

ここからは私がお相手をしますぞ」


キフォス

随分 (ズイブン)と…

生意気な口を聞く様になったな。ハーゴン」


キフォスとハーゴンは

刃汽(ジンキ)(ホトバ)せ合いながら

互いに(ニラ)んでいた。


在りし日のセリーヌ

「おやめなさい!!!

これは私が1人で起こした謀反ムホン

ハーゴンが背負う事ではありません。」


在りし日のハーゴン

「父上。死剣 緋葬殺那(フルスティング)

お渡し下さい。」


イブリラ

「お父様!!」


すると、キフォスは死剣 緋葬殺那(フルスティング)

ゆっくりと降ろした。


在りし日のハーゴン

「母上!!!!!」


ハーゴンはセリーヌに駆け寄り傷を癒した。


在りし日のハーゴン

照刃ショウハ 三十八・泡盛(アブクサカン)


ブクブクと泡が立ち込めると

部屋に酒の匂いが充満した。


キフォス

「セントラルから出て行け。

二度とバンジャマン家の敷居をまたぐな。

外界との関わり一切断ち切るのであれば

見逃してやる」


在りし日のセリーヌ

「…キフォス」


キフォス

「出て行け!!!!!」


キフォスはキッとセリーヌを(ニラ)

マントをヒルガエすと

部屋を後にした。


在りし日のハーゴン

「何があった。」


イブリラ

「お父様が語った事が全てです。」


音を遮断していたおかげで

スヤスヤと寝ていたクリスを

イブリラはギュッと抱きしめた。


在りし日のハーゴン

「馬車を用意する。

母上はしばらく身を隠して下さい。」


そう言ってハーゴンは

部屋を出ていった。



在りし日のセリーヌ

「イブリラ…ハーゴンに伝えなさい」


イブリラ (遮る様に)

「いいえ。伝えません。

私に降りかかる災いがあるのなら

甘んじて受けます。

それがこの子達の為です。」


在りし日のセリーヌ

「そんな…」


イブリラ

「私もあなたの様に強く生きたかった。」


震える手を抑えながら言うイブリラの姿に

セリーヌの胸はギュッと締め付けられた。


在りし日のセリーヌ

「いいえ。あなたは強い。」


イブリラ

「私に何かあれば

ハーゴンを…

この子達をよろしくお願いします。」


その後、家を出たセリーヌは

セントラルの樹海に石造りの家を建てた。

そして時が経ち、一通の手紙が届く。


在りし日のセリーヌ

「これは…バンジャマン家の蝋封ロウフウ



セリーヌはその蝋封ロウフウ

なかなか開ける事が出来なかった。

いつもの様に家事を済ませ

ホッと一息をつく頃には既に夜になっていた。


在りし日のセリーヌ

フゥ(ため息)。」


そして、2階のバルコニーにある

ロッキングチェアに

ゆっくりと腰をかけて紅茶を注ぐと

セリーヌはオルゴールのネジを回した。

意を決して手紙の蝋封ロウフウ

開けてみるとそれはイブリラからだった。












♪1














イブリラ

((お母様…お元気ですか?

あれからどれほどの時が経ったのか

私には分かりません。

この手紙は私が死んだら送る様に

執事の者に言い伝えました。))


在りし日のセリーヌ

「そんな…」


イブリラ

((どうか自分を責めないで下さい。

お母様が死剣 緋葬殺那(フルスティング)

破壊する事を選んだ様に

私も自分自身でバンジャマン家に

残る事を選びました。


それと無事、元気な男の子を産みました。

とても綺麗な顔をしています。

名前はミシェール。

ミシェール=アール=バンジャマン。

神のご加護ある様にと願いを込めました。

そして、アールはラナンキュラス。

お母様の様に聡明で優しい人間に育って欲しいと

私が2つとも名付けました。

お父様からは大反対でしたけどね。

そこは産んだ人間として

ワガママを押し通しちゃいました。


最後に

ハーゴンも気丈に見えて寂しがり屋なので

何かあったら助けて下さいね。


愛を込めて 

イブリラ=ロラン=バンジャマン。


P.S

あの時、お母様が私達を思ってしてくれた事

私は誇りに思います。

どうか御自分を責めないで下さい。))




在りし日のセリーヌ(泣きながら)

「私が…あの時…ちゃんと…緋葬殺那(フルスティング)

破壊していれば…あなただって…今も…

子供達のそばに…いられたのに…」



星が煌めく夜



孤独に押しつぶされそうな日も



わずかに残る 幸せ(オモイデ)を頼りに



オルゴールの旋律が夜空を駆ける。



そしてセリーヌは


手紙と共に入っていた


ラナンキュラスの写真を胸に


ただ


ただ


泣いた。



挿絵(By みてみん)


(完)








物語はscene BLUEへと続きます。

読んでくれた人達の疑問は

全てそこで解決します。(たぶん)

ラナンキュラスが何故ミシェールと名乗らないのか

フルスティングの更なる秘密

そして、画家とは一体…

8月中旬に公開予定なので

それまで待っていてください。

そして、これを機にまた読み直してくれると とても嬉しいです。

新たな発見が沢山あると思います。


もし、気に入っていただけたら

お友達や家族にも紹介していただけたら

嬉しみがマリアナ海溝!!

物語長すぎるよ!って人は

こちらの記事を叩きつけてください。

ファンの方が書いてくれました。

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「これから千刃花に出会う、すべての人へ」

著者シュンタス・ルメ


https://note.com/gimmick8661/n/n57348ecaf052


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台本としてもそうですが

実は小説版もあるんですよ??


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URLコピー 又は 千刃花 小説 で検索


https://ncode.syosetu.com/n2380hd/

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さぁ、感動の物語は遂にフィナーレ。

最後までお付き合いください。


P.S

彼女欲しいです。

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