Season26 Jusqu’à ce que la mort nous sépare
だいぶ待たせてしまった。
休載する前からずっと描きたかったお話しで
ラナンキュラスが出てから
ずっと描きたかったお話しでもあります。
みんなが気付かない程度に伏線を貼ってきて
丁寧に丁寧に仕上げました。
ジギタリアスの言動の意味の全てが
ここで分かって来ます。
総集篇も出す予定なのでまとめて読んでみてください。
もし、出すまで待てないヨォ!って人は
S2.S3.S6.S15.S18を読んでみてね。
一つの物語がここで完結します。
みんな、ありがとう。
そして、ブックマークとレビューも書いてくれたら
とっても嬉しいです。
では、楽しんで!!長いよ!!
N2
前回までの千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜は
葡萄染麒麟による雷雲から
降り注ぐ雨の中
ラナンキュラスは遂に
鞘花最強の奥義である
"千年万花"
千年雷煌•麒麟武甕槌を発動した。
それに呼応するかの様に
ジギタリアスは神滅適合者の最強奥義
"最大輪"を発動したまま更に高次元の技である
共喰•無敵幽霊戦艦を発動する。
雨が更に強さを増し
両者による攻撃の余波により水門が壊れると
海水が一気になだれ込んだ。
そして、因縁の対決が幕を開ける。
ラナンキュラス
「男として...アイビーの仇を取る
だが、八刃花隊の隊長として
ジギタリアスを倒す。
どちらも...僕である事には...変わらない。
だが...今は...例え、憎き仇が目の前に居たとしても
僕は......
千刃花 八刃花隊隊長として
仲間を守る!!!!!!
それが!!!僕の誇りだ!!!!!!!」
ジギタリアス
「何!?急に刃汽量が跳ね上がった!!」
ラナンキュラス
「力を貸してくれ!!!葡萄染麒麟!!!!」
ジギタリアス
「何!?!?グッッ!!空気中に電撃が迸る!!
グッ!!近づけねぇ!!!!!グッッ
おいおい...周りの武具が溶けてんじゃねぇか...
それに...この刃汽の上昇率...
まさか!!!鞘花の"千年万花"か!!おもしれぇ!!!
その賭け!!乗ってやるよ!!!!」
----------------------------
N1
作者 REN’sJackson
ー千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜ー
煉獄 冥府大監獄篇
Season 26
Jusqu’à ce que la nous sépare
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ラナンキュラス
『千年雷煌•麒麟武甕槌!!!!』
ジギタリアス
『共喰•無敵幽霊戦艦!!』
N2
雷が降り注ぎ雷鳴が轟く。
紫電煌めく雷雲がラナンキュラスに向かって
一気に収束する。
バリバリバリッとラナンキュラスの足元から
逆さ雷が枝分かれする様に迸ると
葡萄染色の麒麟が雷雲を纏い降臨した。
ラナンキュラス
「こんなところに呼び出してすまない武甕槌
さぁ、共に逝こう。」
N2
ラナンキュラスは武甕槌を撫でると
キッとジギタリアスを睨んだ。
一方、ジギタリアスは
大海ノ 支配者 により展開された五つのゲートが一つになると
水門全体を不気味な霧が包んでいった。
ラナンキュラス
「なんだ...これは...一体何処だ...
どこに消えた...ジギタリアス!!」
N2
すると何処からともなく声が反響して聞こえる。
ジギタリアス
「ガッハッハッハ!!!
良かったなぁ!!!そのキリンちゃんがいてよぉ!!
じゃなかったら今頃沈んでたぜ!?」
ラナンキュラス
「なんだと!?姿を見せろ!!!ジギタリアス!!」
ジギタリアス
「そうカッカすんな坊主。
よーく見ろ」
ラナンキュラス
「何!?」
N2
少し霧が晴れるとラナンキュラスの視界に
無数の髑髏兵団と
波に揉まれ今にも沈みそうな
白金に輝く巨大な戦艦が見えた。
ジギタリアスはその船首に立ち
ラナンキュラスを見下ろしていた。
ラナンキュラス
「フフッ...空間転移に巨大戦艦...死者の兵か...
何てめちゃくちゃな能力だ...」
ジギタリアス
「有利な戦場で有利に戦況を運ぶのは
当たりめぇの話しだ。
タイミングが良かったみてぇだな。
どうやらエリカの千年万花が
空間の外で暴れ回ってやがる。
まぁ...見たところお前さんの千年万花は
場所を選ぶ必要はねぇみてぇだがな。
ちなみに...まさかとは思うが
雷雲を纏って浮いてんのか?それ。
ガッハッハッハッハッ!!面白れぇ!!!!
さぁ!!!!見せてみな!!ナーベルクの雷神!!
おめぇの千年万花の能力をよぉ!!」
ラナンキュラス
「フフッ。
言われなくてもそのつもりさ。
全力の貴様を全力を以って制す。ハッ!!!」
N2
ラナンキュラスは帝釈天ノ刃をグッと構えて
武甕槌を疾らせた。
ジギタリアス
((消えた!!雷速か!?))
ラナンキュラス
「ハァァァア!!!!!」
N2
雷速で距離を詰めるとジギタリアスに斬り掛かった。
ジギタリアス
「あめぇんだよ!!!」
N2
ラナンキュラスの動きに合わせて
ジギタリアスは拳の武具で
タイミングよくカウンターを繰り出した。
ジギタリアス
「ウォオオオオ!!!」
ラナンキュラス
「武甕槌!!!」
ジギタリアス
「な!?ガガガガガガガガガガガッッツ!!」
N2
ラナンキュラスは武甕槌ごと突進し
ジギタリアスをすり抜け海の上を駆け抜けていった。
ジギタリアス
「グッ...どういう...こと...だ。」
N2
シューっと煙をあげるジギタリアスは
口から煙を吐きながらラナンキュラスを見た。
ラナンキュラス
「武甕槌の雷撃を受けても
まだ、人の形を保っているのか...」
ジギタリアス
「グハッッ...お前さんが通るたび
海面が蒸発しやがる...。」
ラナンキュラス
「海面だけじゃないさ。」
N2
そう言うとジギタリアスの武具を指さした。
ジギタリアス
「どんなに溶けようが...また!!
付ければいいこった。」
N2
ジギタリアスは無敵幽霊戦艦から
射出された拳の武具を再び装着した。
ジギタリアス
「それよりも...その千年万花
どうなってやがる。坊主ごと俺を貫いたろ?」
ラナンキュラス
「教える訳無いだろう?」
ジギタリアス
「クックックック...そうだろうよ...。」
N2
そして、ゆらっとジギタリアスは船ごと消えてしまった。
ラナンキュラス
「何!?武甕槌!!!」
N2
ラナンキュラスは武甕槌で
空中を駆け上がり辺りを見渡した。
そしてまたもや
反響した声が空間に響く
ジギタリアス
「なんだぁ?消えた事に驚いてんのか!?
ガッハッハ!!」
ラナンキュラス
「無敵幽霊戦艦...幽霊戦艦という事か...
だが!!!葡萄染麒麟は
何処までもお前を追う!!!!!」
『麒麟導雷!!!』
N2
ラナンキュラスは帝釈天ノ刃を天高く掲げると
紫電の麒麟が一気に下へ駆け降りていった。
ラナンキュラス
「そこかぁぁあ!!!!!」
N2
するとザバーンッッと波が割れ
突如、ラナンキュラスの足元から
無敵幽霊戦艦が現れると
雷速で様々な武具が発射された。
ジギタリアス
「もらったぁあ!!!!」
ラナンキュラス
「グッ!!雷速!?!?」
N2
麒麟導雷と武具が衝突し
激しい爆発が巻き起こった。
ジギタリアス
「グッ」
ラナンキュラス
「逃すかぁあ!!!!!!ハッ!!」
N2
武甕槌は嘶き
ジギタリアスへ向けて突進した。
ジギタリアス
「バカが!!!自ら突っ込んでくるなんてよぉ!!」
ラナンキュラス
「ウォオオオオ!!!!!」
ジギタリアス
「ゾォリャリャリャリャリャリャ!!!!!!」
N2
無敵幽霊戦艦から
猛烈な武具が発射されるが
ラナンキュラスと武甕槌を
全てすり抜けていく。
そして帝釈天ノ刃を振り下ろしたその瞬間
ラナンキュラス
「これで終わりだぁ!!!ジギタリーーーー」
ジギタリアス
「バカが!!!!」
N2
ガキンッと音がしジギタリアスの武具が
ラナンキュラスの帝釈天ノ刃を受け止めた。
ラナンキュラス
「フッ。何度も言ってるだろう?
帝釈天ノ刃は雷速で振動する刀
そして、武甕槌の雷は
その武具さえも溶かす。
それに、忘れた訳じゃないだろ?
僕に触れてタダでーーー
ッッガハッッ!!」
N2
突然、背後から腹部を貫かれ
ゆっくりと後ろをラナンキュラスが見たのは
広大な海に広がった十隻の無敵幽霊戦艦だった。
ラナンキュラス
「グハッッ...あれだけの技を放つ船が...
もう十隻だと...」
ジギタリアス
「そんじょそこいらの神滅適合者と
一緒にしてくれんなよ?
俺は!!海王水軍 大提督!!
ジギタリアスだぁぁあ!!
ゾォリャァア!!!!!!!!!」
ラナンキュラス
「何!!??グァァア!!!!!」
N2
ジギタリアスはラナンキュラスと武甕槌を
鋭く尖った武具の上に叩きつけた。
無数の武具に貫かれたラナンキュラスだったが
すぐさま雷速で駆け抜け上空へと距離をとった。
ラナンキュラス
「はぁ...はぁ...ゥグッ」
ジギタリアス
「その態勢から逃げ出す...か。
それに、致命傷にも達してねぇ。」
ラナンキュラス
「はぁ...はぁ...」
N2
更にジギタリアスはラナンキュラスを
ジッと見つめると不思議そうな顔で
口を開いた。
ジギタリアス
「おい、戦闘刃術の達人のくせに
剋刃も使わねぇのはなんでだ?」
ラナンキュラス
「使う...までも...ないからさ...」
ジギタリアス
「ガッハッハッハ!!
なんだそりゃあ!!
ぁあ...そういう事か...
使わないんじゃねぇ。
千年万花を発動したら使えねぇのか!!」
ラナンキュラス
「それは...どうかな?」
ラナンキュラス
((無敵幽霊戦艦の射出速度は雷速。
それにあれほどの数...
そして、未だに動く気配を見せない髑髏兵...
いつまで僕の身体が持つか...時間との勝負!!))
ジギタリアス
「それによぉ。
その千年万花...
移動してる時は物理攻撃が効かねえ。
何故なら...お前さん自身が移動するその瞬間だけ
雷になってるからだ。
だから剋刃を使った所で意味がねぇ。
全ての刃術が
焼き焦げるからな。
移動以外でも相当な電圧を纏ってやがる。
だから、使いたくても使えねぇ。
そうだろ?坊主?」
ラナンキュラス
「はぁ...はぁ...はぁ...どう...かな?」
ジギタリアス
「己自身が雷になる。
そんな技にリスクがねぇ訳がねぇ。
長くは持たねぇのは明白だ。
クックックック。
あと、どんくらい持つんだろうな?
ラナンキュラス!!」
ラナンキュラス
「貴様...に...は...関係ない!!!!!!!」
ジギタリアス
「見えるぜ?お前さんが雷から戻れずに
消えて無くなるのがなぁ!!!!!!
無敵幽霊戦艦!!面舵いっぱい!!」
N2
無敵幽霊戦艦の砲口が
一斉にラナンキュラスに照準を合わせた。
ジギタリアス
『女帝喰いの•復讐因果戟!!』
ラナンキュラス
「グッッッ!!!!」
ジギタリアス
「麒麟に乗って来いよ!!
逃げたっていいんだぜ!?
俺の武具は尽きる事を知らねぇんだからよぉ!!!!!」
N2
ラナンキュラスは武甕槌を疾らせ
雷速で大きな弧を描き空中を駆け抜けると
ジギタリアスに向かって突撃していった。
ジギタリアス
「さっきからそう来るしか脳がねぇ野郎だ!!坊主!!」
ラナンキュラス
「そう思ってくれてるなら!!正解さ!!!」
『麒麟雷迎招雷!!!』
ジギタリアス
「ガッ!!何!!?」
ラナンキュラス
「ゥオオオオオオオオオオオオオオオ」
ジギタリアス
「アガッアガッガガガガガガガガガガガ」
N2
ラナンキュラスは武甕槌と共に
雷へと変化し
ジギタリアスの身体を何度も何度も貫くと
次第に紫色の球体が出来上がっていった。
ラナンキュラス
「終わりだぁああぁああ!!!!!」
『 超放電!!!!』
『雷迅虞斬!!!!!!!』
N2
ラナンキュラスはその球体を
上からバリバリと紫電を迸らせながら
雷を帯びた帝釈天ノ刃で斬り裂いていった。
ラナンキュラス
「ハァァァァァア!!!!!」
ラナンキュラス
((アイビー...これで漸く
君の仇を...討つことができる...))
ラナンキュラス
「ジギタリアス!!!!!!!!」
----------------------------
ナレーション▶︎▶︎▶︎N1
----------------------------
N1
ラナンキュラスの帝釈天ノ刃がジギタリアス近くまで
到達したその瞬間
ラナンキュラス
「アイ...ビー?」
N1
ラナンキュラスは帝釈天ノ刃をピタッと止めた。
すると、それを見逃さなかったジギタリアスは
鎖の武具でラナンキュラスを一瞬で縛り
猛烈な殴打の連打を喰らわせた。
ジギタリアス
「ゾォリャリャリャリャリャリャリャリャ」
ラナンキュラス
「オゴゴゴゴゴゴゴッッツ」
ジギタリアス
「ゾォリャァア!!!!!!」
ラナンキュラス
「ガハッッッッツ」
N1
ジギタリアスは鎖ごと砕くと
ラナンキュラスと武甕槌を
渾身の拳で吹き飛ばした。
ジギタリアス
『海呪投影』
「無敵幽霊戦艦の基本能力の一つだ。
最も嫌う場所をこの空間に投影し
この髑髏兵に最も逢いたい者を投影する。
人によって見える景色も逢いたいもんも違うが...
まさか...気付かなかったのか?坊主。
ここは...ジオザ海峡だ!!!スゴウ平野の大戦の場だ!!
数年ぶりの感想はどうだ!!!!???なぁ!!
髑髏兵と分かってても
アイビーは斬れなかったみてぇだな!!!
ガッハッハッハッハッ!!!!」
N1
ジオザ海峡とは
ラミオラス帝国の北に位置する海峡。
そして数年前のスゴウ平野の大戦で
ラナンキュラス率いる八刃花隊と
当時、海王軍の団長だったジギタリアスが対峙した場所であり
更に副隊長であったラナンキュラスの恋人アイビーが
ジギタリアスに殺された場でもあった。
ラナンキュラス
「そ...んな...」
N1
ラナンキュラスは走馬灯の様に当時を思い出していた。
配役変更
----------------------------
N2▶︎▶︎▶︎アイビー兼任
----------------------------
アイビー
「ラナンキュラス!!!!」
ジギタリアス
「仲良く死にな。」
アイビー
「ガッッ」
N1
アイビーの腹部を錨が貫くと
その先端は真っ直ぐラナンキュラスが
落ちていった所までグングンと伸びた。
同時に鎖が、ジャラジャラと
アイビーの腹部を通過していく。
アイビーは血反吐を吐きながら
叫び声を上げると
そのままラナンキュラスのいる海中まで
吹っ飛んだ。
アイビー
「アガゴゴゴガゴガゴゴゴカ」
N1
鎖が通過するたびに内臓はかき回され
痛みで頭が白くなっていく。
そして海水が体内に一気に流れ込んでいった。
すると海中で光が微かに見える。
ラナンキュラス
「アイビー!!!!!!!」
N1
アイビーは目を開けると
そこにはラナンキュラスがいた。
アイビー
「ラナン、、いいの、、」
ラナンキュラス
「しっかりするんだ!!」
N1
ラナンキュラスの鎖は消えていたが
アイビーの腹部には
まだ巨大な鎖が貫通していた。
アイビー
「ラナーーー」
ジギタリアス
「楽にしてやる」
N1
ジャラジャラジャラジャラと音がすると
鎖がジギタリアスに帰っていく。
その反動でアイビーも引き寄せられていった。
しかし、アイビーは声などあげなかった。
もはや痛みさえも感じていなかった。
ラナンキュラス
「やめろぉぉぉお!!
これ以上、、彼女を傷つけないでくれ!!」
ジギタリアス
「ガッハッハ!!
勝つことを諦め女を選ぶとは!!」
N1
ジギタリアスは引き寄せたアイビーを
海に投げ捨てるとラナンキュラスは
傷だらけの身体で海へと飛び込んだ。
ラナンキュラス
「アイビー!!!!!」
ジギタリアス
「死体が欲しいのかボウズ
そんなにその部下が大事か?
っと、、、ロージアから通信刃術だ。」
N1
ジギタリアスはめんどくさそうに応答すると
何やら話していた。
そしてしばらくすると口を開いた。
ジギタリアス
「おい。ボウズ。慈悲をくれてやる。
ちゃんと弔ってやんな。
野郎共!!!出港だ!!!」
N1
ラナンキュラスは海中で
アイビーの亡骸を受け止め
海から顔を出すと
ジギタリアスに向かって
喉から血が滲むほどに叫んだ。
ラナンキュラス
「僕が!!必ず!!!お前を!!!!
殺しに行く!!!
必ず!!殺しに行く!!!!
ジギタリアスゥゥウ!!!!!」
N1
そして、現在
ラナンキュラスは胸を押さえ
息を荒げていた。
ラナンキュラス
「はぁ...はぁ...はぁ...」
ジギタリアス
「ん?顔色が、えらくワリィじゃねぇか!!」
ラナンキュラス
「貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...
貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...
貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...
貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...貴様...
貴様ァァァァァアア!!!!!!!!!!
これ以上!!!!アイビーを!!!!!!
愚弄するなぁぁぁあ!!!!!!」
ジギタリアス
「ガッハッハッハッハッ!!!パチン
来い!!!!!」
『屍喰•髑髏兵団!!!!』
N1
ジギタリアスは指を鳴らすと
無敵幽霊戦艦十隻もろとも
ゆらりと姿を消した。
海中からゾロゾロと骨を軋ませながら
髑髏の大群がラナンキュラスの元へと向かっていく。
そして、近づくにつれ
髑髏兵の顔は次第に髑髏兵へと変わっていった。
冷めた声で
覇気のない声で
心のない声で
ラナンキュラスの名を呼んでいた。
髑髏兵
「ラナン...ラナン...ラナン」
ラナンキュラス
「やめろ...やめろ...やめてくれぇえええ!!!!」
髑髏兵
「ラナン...ラナン...ラナン」
N1
ラナンキュラスは武甕槌に跨ったまま
両耳を塞ぎ顔を沈めた。
ラナンキュラス
「アイビー...すまなかった...僕は...君を...」
髑髏兵
「ラナン...ラナン...ラナン」
ラナンキュラス
「助けられ...なかった...」
髑髏兵
「ラナン...ラナン...ラナン」
ラナンキュラス
「すまない...すまない...すまない...すまない」
N1
するとドーーンッと武甕槌の嘶きと共に
雷がラナンキュラスに落ちた。
ラナンキュラス
「グッ...そうだね...葡萄染麒麟
これは君が僕に見せた雷影なんかじゃない。
ジギタリアスが生み出した薄汚れた屍だ。
よくも...僕にこんな手を...こんな手を!!武甕槌!!!」
N1
ラナンキュラスは武甕槌を疾らせ
帝釈天ノ刃を構えた。
髑髏兵
「ラナン...ラナン...ラナンキュラス」
ラナンキュラス
「これ以上!!!!アイビーを愚弄するな!!
ジギタリアス!!!!!!!!!!
ハァァァア!!!!!!!!!!!!!」
N1
ラナンキュラスは髑髏兵に向けて
帝釈天ノ刃を振り下ろした。
髑髏兵
「愛し...てる」
N1
髑髏兵のその言葉に
ラナンキュラスは振り下ろした帝釈天ノ刃を
止めてしまった。
ラナンキュラス
「アイ...ビー」
ジギタリアス
「馬鹿が!!!!
無敵幽霊戦艦!!面舵いっぱい!!」
『女帝喰いの•復讐因果戟!!』
「ぶっ放せ!!!!!!!!!!!」
N1
無敵幽霊戦艦全艦による
一斉射撃と
髑髏兵による猛攻が
ラナンキュラスに襲い掛かった。
ラナンキュラス
「僕...僕は...グッグァァァアァアアァアァアア!!」
N1
波のように髑髏兵団がのしかかり
ラナンキュラスに襲いかかる。
ジギタリアス
「隊長として俺を斬るとか言ってたよな?
それがどうだ??ガッハッハッハッハッ
女1人にこんな戸惑いやがって!!!パチン」
『幻喰•遊覧船風ォォ!!』
N1
そう言ってジギタリアスは指を鳴らすと
突如、無敵幽霊戦艦が
ラナンキュラスの真横に現れ突進した。
ラナンキュラス
「真横!?グハッッ」
ジギタリアス
「それで終わると思うな。
悪夢はこれからだぜ!!!!」
N1
九隻もの巨大な無敵幽霊戦艦が
入れ替わり立ち替わり様々な方向から
ラナンキュラスに突撃しては消えていった。
ラナンキュラス
「アガッ!!ゥグッ!!!ガハッ
グッッッツ!!ゴハッ!!!オグッ
カッハッ!!グウゥッ!!オガッ!!」
髑髏兵
「ラナン...ラナンキュラス」
N1
崩れていく髑髏兵たち
血反吐を吐き続けるラナンキュラス
それを真剣な眼差しで見ているジギタリアス
限界を超える痛みの中で
ラナンキュラスは
頭蓋が割れていく髑髏兵を見た。
ラナンキュラス
((ジギタリアスは...強い...
おそらく...ラミオラスの中でも...屈指の強さだろう。
僕は...鞘神に選ばれた鞘花なのに
葡萄染麒麟の想いにも応えられぬまま
僕はこのまま死んでいくのか...
ダメだ...ここはみんなが安全に...帰れる退路...
だから...まだ死ぬわけには...))
N1
すると攻撃が止まった。
ラナンキュラス
「ガハッ」
N1
ラナンキュラスは最後の一撃で
ジギタリアスのいる無敵幽霊戦艦の甲板へと打ち上げられると
武甕槌が鼻息を荒くし
ジギタリアスを威嚇していた。
ジギタリアス
「ほぉ。この連撃の中でも葡萄染麒麟を
離さず、武甕槌からも落馬しないとはなぁ。
だが、刃汽が尽きたのかどうかは知らねぇが
もはや雷になる事さえも出来ねぇみてぇだな。
わざとセーブしてんのか?坊主。
いや、それとも...葡萄染麒麟の意思か?
まぁ、今更だけどよ。んなもん。」
N1
黒焦げた身体に血まみれのジギタリアスは
ヨロヨロとラナンキュラスに近づいていくと
それにならって髑髏兵団も
甲板に次々と上がっていった。
ジギタリアス
「もう武甕槌を操る気概もねぇのか?
...つまんねぇ幕引きだぜ。
海王軍副団長としてせめてもの慈悲だ。
この手で葬ってやるよ。」
N1
ジギタリアスが腕を伸ばすと
巨大な斧が射出され片手に収まった。
ジギタリアス
『悪喰•海皇ノ戦斧!!』
ジギタリアス
「この斧はなぁ。海呪投影の投影効果により
最も愛した人間を俺自身に投影出来る慈悲の斧だ。
高密度のオリハルコンであしらわれてるこの世で最も硬い武具。
無論、雷でも溶けやしねぇ。
1億ボルトもの雷で
溶けねぇって事は
お前さんの雷を斬れるって事だぜ?」
ラナンキュラス
「なん...だ...と!?」
N1
すると、ジギタリアスの身体が
ユラッと霧に包まれて行く。
ジギタリアス
「ほぅら、段々変わって来たろ?
なぁ?誰が見えてんだ?母か?父か?
兄か?それとも...」
ラナンキュラス
「フフッ...相変わらず...君は美しい...ね...アイビー。
それに...ゥグッ...なんでココに...君が...」
ジギタリアス
「クックックック。またアイビーかよ。
あっちもこっちもどこいっても
俺の髑髏兵団がアイビーに見えやがる!!!
坊主...お前はそれほどまでにその女を...フンッ
見てみなぁ。この髑髏兵をよ。
アイビーが笑ってやがる。クックックック」
N1
するとラナンキュラスは怪訝な顔でジギタリアスを見た。
ラナンキュラス
「なんだ...と?
もう一度...言ってみろ...」
ジギタリアス
「だから言ってんだろ坊主。
海呪投影は投影する能力
人によって見えるもんは違うってよ。
お前さんの場合は初めから
アイビーにしか見えてねぇんだろ?
今もそうだろうが!!!ガッハッハッハッハッ!!」
ラナンキュラス
「フフッ。...そうか...」
ジギタリアス
「何?」
ラナンキュラス
「...ジギタリアス」
N1
そう言うとラナンキュラスは武甕槌の手綱を
グイッと引っ張った。
ラナンキュラス
「アイビーが...見えてるんだね?」
ジギタリアス
「......何?」
ラナンキュラス
「フフッ。
初めからそうさ。
人によって...見えるものが違うなら...
お前には何が...見えてる?
ゴホッゴホッ...
ジオザ海峡とアイビーが見えるんだろう?
最初にお前は僕に言っていた。
ジオザ海峡だ...とね。
グッ...まさか...
お前にとって"最も嫌う場所がジオザ海峡"で
"最も逢いたい者"が"アイビー"...なの...かい?
笑わせるな!!!!!」
ジギタリアス
「俺の能力で
お前さんの景色を見てるだけだ!!
別に不思議な事なんてねぇんだよ!!!」
N1
ジギタリアスは目を見開き
ラナンキュラスをガッと睨んだ。
ジギタリアス
「くだらねぇ!!!!
どうでもいいんだよ!!!
そんな事はよぉ!!!
的外れもいいこった!!!!
今は殺し合いだろうよ!!!坊主!!
仮に見えてたとしても
お前さんには関係ねぇ!!
俺はラミオラスの将軍で!!
お前はナーベルクの将軍!!!!
敵にゃぁ変わりゃしねぇんだからよ!!」
N1
ジギタリアスがそう叫ぶと
ラナンキュラスと武甕槌の身体を
髑髏兵団が
ワラワラと押さえつけた。
ラナンキュラス
「グッ...そうさ...関係ない...どんな事があっても...
お前が...アイビーを殺した事には変わりない。
それを許す事は出来ない!!
ジギタリアス...確かにお前は強い。
だが...僕はお前に負けて
ここで倒れる訳にもいかない!!!
僕は!!千刃花 八刃花隊隊長
ミシェール=ラナンキュラス=バンジャマン!!
例え僕の命と引き換えても!!!
お前を殺して!!!
僕は!!仲間の退路を守る!!!!!」
N1
生気が再び戻ったラナンキュラスの眼前には
髑髏兵の姿はなく
アキレイ、ジジ、ツバキ、プラム、リナリア、アナスタシア
ジニア、キキョウ、クーワ、レンゲイ、チョウラン
オルケイディアといった千刃花隊士達が投影されていた。
ジギタリアス
「グッ!!!!何をする気だ!!!!!!
この期に及んで雷撃だと!?
グッ!!ガッハッッ!!!!」
N1
ラナンキュラスは尋常では考えられないほどの雷を
纏っていた。
そして、帝釈天ノ刃を握りしめ
自身の胸を貫くと
武甕槌が雷に変わり
ラナンキュラスを貫いた。
ラナンキュラス
「ガハッ!!
我が命を以って大悪を誅す!!!!!
雷よ!!!魂よ!!!!!
冥府の世界へ誘いたまえ!!!!!!!」
ジギタリアス
「グッ!!!」
ラナンキュラス
『雷霆ノ贄ァァァァア!!!!!』
ラナンキュラス
((葡萄染麒麟...すまない。
みんな...後は頼んだよ。))
ジギタリアス
「おいおいおいおい...なんて刃汽量...
なんて電圧...
自分から雷になりやがった!!!
お前さんが死んだら元も子もねぇだろうに!!
クックックック...少し侮ってたか...
本気で死ぬ気でいたのかよ...
坊主!!!!!!」
N1
凄まじい轟音と雷が
無敵幽霊戦艦の空間を走り抜けた。
ラナンキュラスの身体は徐々に雷と化していく。
そしてジギタリアスは雷に向かって
海皇ノ戦斧を振り下ろした。
ラナンキュラス
「ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
ジギタリアス
「ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
ジギタリアス
((強くなったじゃねぇか。
ラナンキュラス))
N1
ドーーーーンッと轟音が鳴り響き
水が干上がり、辺り一帯が光に包まれた。
※BGMがある場合鳴り止むまで待つ
アイビー
「ラナン?
ねぇ、起きて!!ラナン!!」
ラナンキュラス
「ん?...朝...かい?」
アイビー
「ううん。違うけど...」
ラナンキュラス
「じゃぁ...もう少し寝かせてくれ...
なんかずっと悪夢を見てた気がして
よく眠れなかったんだ。」
アイビー
「悪夢?」
ラナンキュラス
「そう。君が死んでしまう悪夢さ。
取り残された僕は永遠に君の面影を追い続けてたんだ。」
アイビー
「ウフフ!子供みたいね。相変わらず。」
ラナンキュラス
「フフッ。君のいない世界に僕は興味ないからね。」
アイビー
「もう。ラナンったら。
私が死んだってラナンには沢山の仲間がいるじゃない。」
ラナンキュラス
「寝言はベッドの上でしか聞かない事にしている。
フフッ。さぁアイビー。隣においで。」
N1
ラナンキュラスは
自身のベッドにアイビーを引き寄せた。
アイビー
「どうしたの?」
ラナンキュラス
「いや、なんだろう...懐かしいなって。」
アイビー
「うん。あたしも懐かしいなって思う。」
ラナンキュラス
「え?」
N1
そう言うとアイビーはラナンキュラスを抱きしめた。
アイビー
「紅茶の香り...。」
ラナンキュラス
「そうだね。」
アイビー
「花の香り...。」
ラナンキュラス
「そうだね。」
アイビー
「ラナンキュラスの香り。」
ラナンキュラス
「...毎晩君を抱き締める度に
思い出すんだ。
この戦争が終わったら
僕は君と旅に出て...」
アイビー
「世界中を周る。」
ラナンキュラス
「小さな家を建てて
そこで紅茶を育てて売るんだ。
そして家に帰れば」
アイビー
「私が夕飯の準備をして待ってる。
大きなパイ生地に白いシチュー。」
ラナンキュラス
「君によく似た男の子と」
アイビー
「ラナンによく似た女の子」
ラナンキュラス
「それが、僕達の夢...」
アイビー
「...そうだね。」
ラナンキュラス
「アイビー...覚えているかい?」
アイビー
「何?」
ラナンキュラス
「君の誕生月、2人で行った海をさ。」
アイビー
「うん。覚えてる。」
N1
ラナンキュラスは天井を見つめながら
思い出していた。
潮風が香る夜の海岸線を。
紫色のオープン魔進で駆け抜けたあの特別な日を。
----------------------------
アイビー
「ねぇ!見て!!ラナン!!
とっても綺麗!!」
N1
アイビーは月明かりで
照らされた青白い海を指差して
ラナンキュラスに微笑んだ。
ラナンキュラス
「フフッ。
それでも君の美しさには敵わないさ。」
アイビー
「ウフフッ。ラナンったら」
ラナンキュラス
「ちょっ!!アイビー!!」
N1
助手席にいるアイビーは
ラナンキュラスに抱きついた。
ラナンキュラス
「あ、危ないだろ?
君に怪我をさせるわけにはいかないからね。」
アイビー
「フフッ。
怪我なんてしないわ。
だって、何があっても
雷より早く助けに来てくれるんでしょ?」
ラナンキュラス
「フフッ。そうだね。
雷よりも早く抱きしめに行くさ。
そうだアイビー。
今日はここの海岸線一帯は
君だけのものだ。
望みとあれば何でも出来る。
君の望みはなんだい?」
アイビー
「ラナンと砂浜を歩きたい。」
ラナンキュラス
「それだけでいいのかい?」
アイビー
「うん。」
ラナンキュラス
「分かった。」
N1
ラナンキュラスはハンドルを切ると
砂浜に移動用 四輪駆動魔進を停めた。
アイビー
「わーーー!!すごーい!!」
N1
そこに待っていたのは砂浜一面を埋め尽くす
数千のキャンドルライトと
彩り豊かな花々だった。
ラナンキュラス
「少し、歩こうか。」
N1
ラナンキュラスはアイビーの手を引き
しばらく砂浜を歩いた。
さざ波が優雅な音色に乗って
潮風が吹き抜ける。
ラナンキュラスは遠くを見つめると
口を開いた。
ラナンキュラス
「風が気持ちいいね。」
アイビー
「そうね。とっても心地いい」
ラナンキュラス
「時折、思うんだ。
風になりたい。ってね。」
アイビー
「どうして?」
ラナンキュラス
「風になって、君とどこまでも
遠くへ行きたい。」
アイビー
「ウフフッ
雷の鞘花なのに
面白い事を言うのね。」
ラナンキュラス
「フフッ。そうだね。
でも、雷で運んだら
君が痺れるだろ?」
アイビー
「そんな事言ったら、
出逢った日から私はずっと
ラナンに痺れてるわ。」
ラナンキュラス
「フフッ。
それをなんて言うか知ってるかい?」
アイビー
「なんて言うの?」
ラナンキュラス
「恋。って言うのさ」
アイビー
「ウフフッ。ラナンったら。」
N1
すると、ラナンキュラスは
アイビーの手を取り
白いテントの中へとエスコートした。
中に入ると中央には白いテーブルと椅子
冷えたシャンパンが用意されていた。
ラナンキュラスはアイビーの椅子を引くと
シャンパンに手をかけ栓を抜き
グラスに注いだ。
ラナンキュラス
「君とこうして過ごせる事に感謝する。
また、来年も一緒に過ごそう。
おめでとうアイビー。」
アイビー
「ありがとう...ラナン。」
ラナンキュラス
「乾杯。」
アイビー
「乾杯。」
N1
2人はグラスを合わせると
シャンパンを口に運んだ。
しばらく談笑したあと
ラナンキュラスは
アイビーの手を引き
砂浜へと連れ出した。
ラナンキュラス
「せっかくだから
もう少し歩こうか。」
アイビー
「うん。」
N1
ラナンキュラスは
アイビーが転ばぬように
腰に手をかけてゆっくりと歩いた。
アイビー
「...凄い綺麗。
青白く光る海に、沢山の花とキャンドル...
なんか、天国みたいだね!」
ラナンキュラス
「フフッ。
天国?相変わらず君は面白いねアイビー。
僕らが一緒に入る墓標の周りには
沢山の花を咲かせよう。」
アイビー
「...うん。」
ラナンキュラス
「海の近くだと花が枯れちゃうだろうから
湖の近くにでも建てようか。」
アイビー
「そうだね。...ん?ちょっと待って
それってーーー」
ラナンキュラス
「アイビー=へデラ=ポーチス」
アイビー
「え?」
N1
ラナンキュラスは跪き
アイビーの左手を取った。
ラナンキュラス
「死が2人を別つまで
共に過ごそう。
結婚してくれアイビー。」
アイビー
「...ラナン。私...ラナンにーー」
ラナンキュラス
「YESと言ってくれないのかい?」
アイビー
「もちろんYES...」
ラナンキュラス
「分かってるさ。
心配しないでアイビー。
この戦争が終わったら
ハネムーンついでに旅にでよう。
その先で式をあげよう。」
アイビー
「...うん。」
ラナンキュラス
「よし。今日から君は僕の婚約者だ。
結婚式には
バンジャマン家も他の貴族達も呼んで
盛大に祝おう!!」
アイビー
「うん!!みんな呼ぼ!!」
ラナンキュラス
「ありがとうアイビー。愛してる。」
アイビー
「いつもありがとうね。ラナン。
私も愛してる。」
N1
アイビーはうなじをさすりながら
ラナンキュラスを見た。
ラナンキュラス
「うん?どうしたんだい?」
アイビー
「ううん。何でもない。」
N1
そして、ラナンキュラスは
ポケットから指輪を取り出して
アイビーの指に
大きなダイヤモンドの指輪をはめた。
それは、月明かりと海に照らされて
青く、青く輝いていた。
アイビー
「マリンブルー...すごく...綺麗...。」
ラナンキュラス
「君にこそ相応しい。」
アイビー
「ありがとう...ラナン」
----------------------------
※BGMがある場合鳴り止むまで待つ
N1
そして現在
アイビーとラナンキュラスは
天井を見上げていた。
ラナンキュラス
「つい最近の出来事なのに
遠い昔のように感じるのは何故だろう...」
アイビー
「遠い昔の事だからよ。」
ラナンキュラス
「フフッ。何を言ってるんだい?」
アイビー
「ラナン。あなたは戦わないといけない。」
ラナンキュラス
「え?何を言ってッッ」
N1
景色がグルンッと変わり
光あふれる世界に2人は立っていた。
ラナンキュラス
「ん?どう言う事だ...ここは...」
N1
神妙な顔で
アイビーはラナンキュラスを見ていた。
アイビー
「ラナン。思い出して。」
ラナンキュラス
「思い出す?一体何を?」
アイビー
「あなたはジギタリアスと...」
ラナンキュラス
「ジギタリ...アス?
グッ...ジギタリアス?
やめろ!!やめろ!!やめろやめろやめろやめろぉお!!」
アイビー
「ラナン!!!!!!」
ラナンキュラス
「僕は...僕は...」
アイビー
「聞いて。」
ラナンキュラス
「...アイビー...アイビー!!!!!!」
アイビー
「あなたに伝えたい事があるの。」
ラナンキュラス
「はぁ...はぁ...伝えた...い...事?」
アイビー
「私は...アイビー=へデラ=ポーチス」
ラナンキュラス
「どう...したんだい?」
アイビー
「...じゃない。
私はアイビー=へデラ=フォックス」
ラナンキュラス
「なん...だ...と?」
アイビー
「そう。ジギタリアスの娘よ」
ラナンキュラス
「嘘だ!!!!!!嘘だ!!!!
これはジギタリアスの神滅兵器か!!!
グッ!!これほどまでに僕を!!!
アイビーを!!!!」
アイビー
「最後まで聞いて!!!!ラナン!!
あなたは葡萄染麒麟の能力で
魂が冥府の世界へ来てる。
まだ分からないの!?!?
葡萄染麒麟はあなたを生かそうとしてる!!
なのに!!!!あなたは死にたがってるの!!!
しっかりして!!!ラナンキュラス!!!!!
あなたは神に選ばれた鞘花なのよ!!」
ラナンキュラス
「アイビー...僕は...」
アイビー
「生きて!!!生きるのラナン!!!!
お願い...だから...。」
ラナンキュラス
「アイビー...」
N1
ラナンキュラスは周りを見渡すと目を細めた。
ラナンキュラス
「冥府の世界...雷霆ノ贄の能力か...
じゃぁ、本当に君は...もう...いな...い...
でも待ってくれ!!!本当にジギタリアスが父なら
何故君を殺したんだ!!!!!!
何故、娘を...」
アイビー
「あの日の全てを話すわ。
お願い。葡萄染麒麟。」
N1
そう言うと景色がまたもやグルンッと変わり
ラナンキュラスの前に映像が浮かび上がった。
----------------------------
N1
数年前、ジオザ海峡
ラミオラス帝国 海王水軍"トリトン"の
巨大戦艦"藏亜10"内部通路
アイビー
「はぁ、はぁ、はぁ...」
N1
アイビーは奥の通路を曲がると
奥の扉をノックした。
アイビー
「 コンコンコン」
ジギタリアス
「誰だ。」
アイビー
「 コンコンコンコン」
ジギタリアス
「ん?」
アイビー
「 コンコン」
ジギタリアス
「この...リズムパターン..馬鹿やろうが!!」
N1
ジギタリアスは周囲を確認すると
急いで扉を開けた。
すると、光彩刃術を解いたアイビーの姿があった。
ジギタリアス
「アイビー!!!」
アイビー
「シッ!!」
ジギタリアス
「ここは大丈夫だ。早く入れ!!」
アイビー
「そう。なら良かった。」
ジギタリアス
「おい!なんでここに来た!!
お前は潜入任務だろうが!!!
ソープワイトとロージアにバレたら
どうする気だ!!!」
アイビー
「分かってる...だけど...」
ジギタリアス
「お前の任務はラナンキュラスと八刃花隊の殲滅だ!!
お前がおびき出して俺らが潰す手筈だろうが!!
長年の苦労を無駄にする気じゃねぇだろうな?」
アイビー
「分かってる...分かってる...だけど父さん...」
N1
するとアイビーは自身のうなじを
ジギタリアスに見せた。
ジギタリアス
「...おい。まさか...」
アイビー
「うん。」
ジギタリアス
「こいつぁ...氷紋華...お前...いつから...」
アイビー
「少し...前から...。」
ジギタリアス
「こんなに...くっきりと...」
N1
ジギタリアスは全身から汗が拭きだし
うろたえていた。
ジギタリアス
「アイ...ビー」
N1
氷紋華とは
裏切らぬように制約を結び
目的を達成した後
消える文様のことを指す。
制約違反した場合、内側から氷の種が芽吹き
胸を氷柱で貫かれる。
その時点で術者に制約違反が瞬時に伝わる。
制約違反まで色の濃さが警告を示しており
アイビーの文様は
くっきりと青白くなっていた。
しかし、この術の恐ろしさは
一度発動すれば術者以外は
解除する事ができない点である。
アイビー
「父さん、私から最初で最期のお願い聞いてくれる?」
ジギタリアス
「最初で最期のお願い...だと?
まさか...俺らを裏切ったのか!!!!!
なんでだ!!!!アイビー!!!!」
アイビー
「だって私...」
ジギタリアス
「だってじゃねぇ!!!!
氷紋華は破れぬ誓いだ!!
それに発動まで時間がねぇー!!!!
すぐにでも発動しちまうじゃねぇか!!
待ってろ!!!俺の傀驕壊操で
隷属出来るか試してやる!!!」
アイビー
「いいのよ。もう。」
ジギタリアス
「よくねぇ!!!!」
アイビー
「芽吹けば最期。どうせ殺されるなら
ロージア様じゃなくて父さんがいい。」
ジギタリアス
「やめろ...俺には...出来ねぇよ...」
アイビー
「お願い!!!!
芽吹いたら裏切りがバレる!!!
そうなったら海王軍はどうなるの!?
トギリや他の部下達も処刑されるの!!!!」
ジギタリアス
「だったらなんで!!!!!
俺達を裏切るようなマネをしたんだ!!!!」
N1
アイビーは顔に涙を浮かべて笑顔で答えた。
アイビー
「だって...好きになっちゃったんだもん。」
ジギタリアス
「なに!?
まさか...ラナンキュラスをか!?」
アイビー
「うん。」
N1
そのはっきりとした声に
ジギタリアスは呆気にとられた。
ジギタリアス
「ふざけん...じゃぁ...ねぇ...
大切な娘を...大切な一人娘を殺してぇ親なんかいねぇ!」
アイビー
「ワガママだって分かってる。
でも、私をロージア様の手で殺させないで!!!
あんな奴に殺されるくらいなら...私は!!!!」
ジギタリアス
「馬鹿野郎が...。
強情なのは...俺譲りかよ。」
アイビー
「父さんは海王軍のみんなが好きでしょ?
私の事を父さんが殺せば
ロージア様だって処罰は下さない。
今まで通りやっていける。
今私に出来るこれが最善の策なの。」
ジギタリアス
「...ロージアはお前が裏切る事を
見据えてやがったのか...アイビー。
いつ氷紋華を刻まれたんだ?
実際に会ったのか?」
アイビー
「分からないけど...突然浮かび上がったの。」
ジギタリアス
「時限式刃術の類いだな。
それほどの実力者は...
ゲイジュか...いや、ベロニカ...それとも...」
N1
すると、戦艦が大きく揺れ始めた。
アイビー
「グッ!!父さん!!」
ジギタリアス
「来たか...ラナンキュラス...」
アイビー
「もう時間がない。
外に出れば恐らく観られてる。
だから、容赦なく私を殺して!!!!
出来るだけ残忍に!!!!!!
ロージア様に見せるの!!忠誠を!!!」
ジギタリアス
「...出来ねえ。俺にそんな事...」
アイビー
「やるしか...ないの...やるしか...」
ジギタリアス
「怖ぇだろうに...震えてんじゃねぇか...」
アイビー
「怖...く...ないよ。」
N1
アイビーは震える手で
自身の身体をギュッと抱きしめていた。
娘のその様子を見ていたジギタリアスは
胸が張り裂けそうな想いを
必死で抑えながら悲しげな目で見つめていた。
ジギタリアス
「ラナンキュラスには...なんて言うつもりだ。」
アイビー
「何も言わない。
私は八刃花隊副隊長として、
父さんは海王軍の団長としてあくまでもいて。
だけど、あんまりやり過ぎちゃダメだよ?
ラナンも強いけど...
きっと父さんには敵わないからさ。今はね。
それにもし、真実を知ったら...」
ジギタリアス
「ラナンキュラスには黙ってろって事か?
氷紋華の事もロージアの事も。」
アイビー
「ラナンと父さんは敵同士。
きっと氷紋華の事を知れば
ラナンはロージア様に挑む。
そしたら絶対にラナンは死んじゃう。
だから!!!
その事は...言わないで。」
ジギタリアス
「...恐らく挑む。そして、死ぬ。
アイビー...それでいいんだな。」
アイビー
「うん。
ラナンキュラスには生きてほしいから」
ジギタリアス
「いずれはぶつかるぞ。」
アイビー
「分かってる。
だけど、今はまだ...」
ジギタリアス
「俺が強く...してやる。」
アイビー
「え...?」
ジギタリアス
「後生の頼みだろ?
普段だったらぶん殴ってるが
お前にも時間がねぇ...
俺にも選択の余地なんてねぇ。
心配するなラナンキュラスは...任せておけ」
アイビー
「ありがとう。」
N1
そう言うとジギタリアスは
パイプをくわえると天井を見上げた。
ジギタリアス
「 フゥーー
アイビー。氷紋華が発動する前に
泡盛で治癒を始めろ。
それと、薬毒系の刃術で痛みを緩和し続けろ。
二重詠唱は出来るな?麻痺させれば幾分マシだろうよ。
凍りつく事もねぇ。」
アイビー
「分かった。
もう、時間がないから今かけておくね...。」
『照刃 三十八• 泡盛』
『照刃 四十一• 芍薬甘草』
N1
アイビーが胸に手を当てると
身体中から泡が吹き出し身体を包み込む。
そして、緑色に光る煙が
スッとアイビーの鼻に入っていった。
アイビー
「私ね、父さんにも助かって欲しい
ラナンキュラスにも助かって欲しいの。
ワガママばかりでごめんなさい。
あともう一つ。」
ジギタリアス
「なんだ」
アイビー
「私の遺体はラナンキュラスに。」
ジギタリアス
「お前...それほどまでに...アイツを...」
アイビー
「うん。すごく大事にしてもらってる。」
ジギタリアス
「そうか。幸せだったのか。」
アイビー
「うん。」
ジギタリアス
「...もう行け。」
N1
アイビーは背を向けて扉に手をかけたその瞬間
ジギタリアスの方を振り向いた。
アイビー
「あなたの娘に生まれて良かった。」
N1
その言葉にジギタリアスは
溢れる涙を抑える事が出来なかった。
ジギタリアス
「馬鹿野郎!!!ゥグッ...ゥグッ!!
俺もだぁ...お前の父さんになれて...良がっだ!!!
こんな世界に...ゥグッ...産んじまって...!!
ごべんなぁあ!!!
ごべんなぁあ!!アイビー!!!!!」
アイビー
「父さんの夢。応援してる。
一足先に、母さんの所に行っーーーー」
N1
次の瞬間、パリンッとアイビーの胸から
氷柱が飛び出した。
ジギタリアス
「アイビー!!!!!!!!!」
アイビー
「ガハッ...」
ジギタリアス
「アイビー!!待ってろ!!その氷を砕いてやらぁ!!
ゾォリャァア!!!!!!」
N1
ジギタリアスは何度も何度も氷を砕いた。
ジギタリアス
「はぁ...はぁ...これで...ラナンキュラスにも
別れの挨拶が...できる...だろうよ...」
アイビー
「ありが...とう」
ジギタリアス
「行くぞ...ゾォリャァ!!!!」
N1
ジギタリアスは血塗れのアイビーを抱えると
戦艦の天井を突き破って甲板へと飛び出した。
ラナンキュラス
「何故逃げた先にこんなにも伏兵が、、
まさか、、追い込まれたのか、、
それに、、何故ここにお前がいるんだ!!」
N1
ラナンキュラスは手に汗を握り締めながら
目線の先にいる男を睨んでいた。
ラナンキュラス
「海王水軍 大提督ジギタリアス!!!!!」
N1
そして映像がバチンと消えてしまった。
ラナンキュラス
「アイビー...君は...」
アイビー
「ラナン...怒らないの?」
ラナンキュラス
「何をだい?
君がラミオラス帝国のスパイだったことかい?
それとも名前すら違った事かい?嘘をついてた事かい?」
アイビー
「...全てよ。」
ラナンキュラス
「フフッ。女の嘘は許してあげるものさ。
それに、僕が気にすると思うかい?
だって、君は...最後まで僕を...僕を...」
アイビー
「ラナン。」
ラナンキュラス
「なんだい?」
アイビー
「もう、私の事はいいから。
私の事はもういいから。」
ラナンキュラス
「何を言ってるんだ...
僕は、君を永遠に愛す。
例えこの身が滅びても。」
アイビー
「ウフフッ。相変わらず...嬉しいなぁ...」
ラナンキュラス
「当たり前さ。」
アイビー
「ラナン...」
ラナンキュラス
「なんだい?」
アイビー
「父さんの事は...恨まないで...」
ラナンキュラス
「...ぁあ。もし恨んだら君が悲しむだろ?
それに...全てはロージアが仕組んだことだ。」
アイビー
「ロージアとは...戦っちゃダメ。」
ラナンキュラス
「何故だ!!!
君を追い詰めたのはロージアじゃないか!!!!
僕はそれを知らずに
何年も君の父さんを恨み続けた!!」
アイビー
「ロージアは次元が違うの!!!
絶対に戦わないで!!!!」
ラナンキュラス
「僕は許せない。
君の人生を苦しめたのはアイツだ!!!!」
アイビー
「運命の終末...
きっといつか分かるわ。」
ラナンキュラス
「君までその事を...」
アイビー
「ウフフ」
N1
アイビーは悲しげに笑っていた。
アイビー
「最期にもう一つ...」
ラナンキュラス
「最期?」
アイビー
「一番、大切なことよ。」
N1
すると、アイビーはゆっくりラナンキュラスに近づいていった。
しかし、伸ばした手はすり抜けた。
ラナンキュラス
「アイビー...」
アイビー
「ラナン...」
間
アイビー
「私のことは忘れて下さい。」
ラナンキュラス
「僕には...出来ないよ。」
アイビー
「前に進んで。
鞘花として世界を守るの。
だってラナンはみんなの王子様でしょ?
私が愛した人はそういう人よ。」
ラナンキュラス
「僕にはまだ!!!君が!!!」
N1
ラナンキュラスはアイビーの方を振り向いた。その瞬間
アイビー
「ごめんね。ラナンキュラス」
ラナンキュラス
「ァ...ァ...」
N1
今にも消えてしまいそうなアイビーが
ラナンキュラスの頬に手を当て
互いに涙を流しながら
そっと、口付けをした。
アイビー
「さようなら。世界で一番愛し...た...ひ...」
N1
アイビーは光に包まれ
ゆっくりと
消えていった。
ラナンキュラス
「アイビィィィィィイ!!!!!」
----------------------------
N1
作者 REN’sJackson
ー千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜ー
煉獄 冥府大監獄篇
Season 26
Jusqu’à ce que la nous sépare(完)
※BGMがある場合鳴り止むまで待つ
----------------------------
配役変更
----------------------------
アイビー▶︎▶︎▶︎N2
----------------------------
N2
おまけ
N2
そして、現在
煉獄 冥府大監獄水門にて。
強大な雷が迸っていた。
ジギタリアス
「ガガガガガガガガガガガッ!!!!!
坊主!!俺を!!!殺すんじゃ!!無かったのかよ!!」
N2
ジギタリアスは海皇ノ戦斧で
雷を斬り裂こうとしていた。
ジギタリアス
「お前に!!!死なれたんじゃ!!!ガガッ
俺の!!!!!!!!娘に!!!!!!
顔向け出来ねぇだろうが!!!!!!!!!!
雷になるんじゃねぇ!!!
ラナンキュラス!!!!!!!!!
いっぱしの鞘花なら!!!!
暴走なんか!!!させねぇで!!!!!
しっかり支配してみろやぁ!!!
戻って来い!!!!」
N2
ジギタリアスのヒフは黒焦がれ肉が焼けただれていた。
そして、海皇ノ戦斧は
勢いよく雷を斬り裂いた。
ジギタリアス
「ゾォォォオリヤァァァア!!!!!!!!
はぁ...はぁ...はぁ...助かった...か...」
N2
ラナンキュラスは気を失いバタンと倒れ
海皇ノ戦斧が砕けると
ジギタリアスも膝から倒れてしまった。
ジギタリアス
「なかなか死ねねぇもん...なんだ...な...クックックック
強かったぜ...ラナンキュラス...。
流石は俺の娘が惚れた男だ。
だがよぉ...まだまだそんなもんじゃ...」
N2
そう言ってジギタリアスはゆっくりマブタを閉じた。
ジギタリアス
「ロージアには...勝てねぇ...ぞ」
N2
同時に霧が晴れ無敵幽霊戦艦の空間が
みるみると崩れていくと
ジギタリアスとラナンキュラスは水門へと戻っていた。
配役変更
----------------------------
N1▶︎▶︎▶︎トギリ
----------------------------
トギリ
「おい。おっさん。」
N2
すると水門の中に一隻の潜水艦が浮かんでいた。
そして、そこに現れたのは海王軍団長トギリだった。
ジギタリアス
「グッ...遅せぇぞ...坊主」
トギリ
「仕方ねーだろ?
地獄列車が止まってんだからよ。
お陰でこんなクソ暑い所に来るのに
海から水門に出るしか無かったんだよ。
それに...」
N2
トギリは辺り一帯をぐるっと見渡した。
トギリ
「原型留めてねぇぞ。ココ。」
ジギタリアス
「トギリ...刃汽は...隠せてるな...」
トギリ
「ぁあ。加勢しねぇのがバレるからな。
俺だってポセドニアから帰ってきたばかりなんだぜ?
もう少し休みてぇーよ。」
ジギタリアス
「鞘花に...なったんだな。」
トギリ
「ぁあ。
梔子猛虎の力はやっぱりスゲェわ。
何でも出来ちまうからな。」
ジギタリアス
「そうだろうよ。」
トギリ
「しっかしウサギ野郎もエリカも派手にやってんなぁ。」
ジギタリアス
「やり過ぎだ。特にエリカは...グッ」
トギリ
「ってかよぉ。プフッ!!死に損なったのかよ!!
確か俺におっさんの死体を
取りに来させたんじゃなかったけか?」
ジギタリアス
「クックックック...言ってくれるじゃねぇか...
奴の実力と自分の甘さを測れなかった
俺が悪いって話しだ。」
トギリ
「それで?仇を討たせてやれねぇとなると
この先、どうすんだよ。」
ジギタリアス
「グッ...さぁな。
風と潮の流れに...任せてみようじゃねぇか。」
トギリ
「なんだそれ。
ってかよ。わざわざ自分がここに来るって情報をよ
ラナンキュラスに掴ませたのに
おっさんが生き残るとか笑えんだけど。」
ジギタリアス
「クックックック。
死んでねーよ。よく見てみろ。」
トギリ
「嘘だろ?」
N2
トギリは地面に手を当て波動を流した。
トギリ
「マジかよ...あんな黒焦げて生きてんのかよ。
まぁ、おっさんも変わんねぇけどよ。
そもそも覚醒した神滅適合者相手に
よく戦った方だ。
相変わらず鞘花ってバケモンだな...」
ジギタリアス
「お互い中々死ねねぇからな...」
N2
するとトギリはジギタリアスの目を見た。
トギリ
「で、どうする??
俺一応さ、ラミオラス帝国の海王軍団長だろ?
ナーベルクの将軍が死にかけてんのは
絶好のチャンスなんだけど?」
ジギタリアス
「手を出すんじゃねぇ!!!」
N2
ジギタリアスの刃汽が
ドドドドドドドと空気中に迸った。
トギリ
「おーおーおー。
死にかけてんのに相変わらずの刃汽だこと。
でもよぉ。その怪我で俺と殺り合うのかい?」
ジギタリアス
「本気か?」
トギリ
「チッ。めんどくせぇ。
そんな事しねぇーよ。
死にかけると冗談も通じねぇのか?
ただ、見逃すってなると貸しがデカいぜ?」
ジギタリアス
「ガッハッハッハッハッハッ
貸しの話しすんなら...
お前を拾って育てた分も貸しか?」
トギリ
「それを引き合いに出すのは卑怯だろ!!」
ジギタリアス
「教えたろ?
タダよりタケェもんはねぇんだよってな!
ガッハッハッハッハッハッ!!!
ゴホッゴホッゴホッ」
トギリ
「おいおい、船に戻ったら治してやっから黙ってろよ。」
ジギタリアス
「言うように...なったじゃねぇかよ。坊主」
トギリ
「完治するまで酒は禁止だからな。」
ジギタリアス
「俺にそんな事言ったって意味ねぇのは
分かってんだろ?」
トギリ
「俺は団長だぜ?させねぇさ。」
ジギタリアス
「点滴から流してもらえばバレやしねぇさ!!
ガッハッハッハッハッハッ!!」
トギリ
「正気かよ!!
ったく。ほら、立つ...ぞ!!!っと」
ジギタリアス
「グッ」
N2
トギリはジギタリアスに肩を貸して歩き始めた。
トギリ
「おっさん。ラナンキュラスはどうだったんだ?」
ジギタリアス
「ガッハッハッハッハッハッ!!
まだまだケツの青いガキだったな!!」
トギリ
「...見栄張ってんじゃねぇよ。
おっさんがここまでボロボロになったのは
はじめて見たぜ?
あまり話さねぇけど
ジオザ海峡の一件以来
おっさんは退団を申し出た事あったろ?」
ジギタリアス
「あの後すぐにロージアにな。
やっぱり奴はアイビーの事を知ってやがった。」
トギリ
「だろうよ。ロージア様だぜ?
何でもありのバケモンだ。」
ジギタリアス
「ガッハッハッハッハッハッ。そうだな!!」
N2
そしてトギリは一度足を止めた。
トギリ
「なぁ、おっさん。もういいだろう。」
ジギタリアス
「何をだ?」
トギリ
「自分を許してやれよ。
いつまでも苦しむ事はねぇさ。
数万人の部下と自分の娘を天秤にかけたんだ。
それに、アイビーちゃんが選んだ道だ。
裏切った事には変わりねぇんだしよ。」
ジギタリアス
「分かってる。
だけどよ坊主。理屈じゃねぇ。
これはな自分の娘を殺した罰だ。
せめてラナンキュラスには
やり場のない怒りを俺にぶつけてもらわねーと
浮かばれねぇだろ?」
トギリ
「だけど失敗して
逆にボロボロじゃねぇかラナンキュラス。
それこそアイビーちゃん可哀想だろうが。」
ジギタリアス
「一本取られた。ガッハッハッハッハッハッ。」
トギリ
「いや、一番可哀想なのは
二人が争う事だ。
けどよ。敵国同士それは仕方がねーのは事実だ。」
ジギタリアス
「だから俺が殺されるのが正解だったんだよ。」
トギリ
「よく言うぜ。
途中でラナンキュラスの本気を引き出しに行ったんだろ?
どこの戦闘民族だっつーの。」
ジギタリアス
「分かってんじゃねぇか!!
ガッハッハッハッハッハッ!!」
トギリ
「ほら、行くぞ。
スイセ達が待ってる。」
N2
潜水艦の方を見ると
スイセがハッチを開けて怒涛の投げキッスを送っていた。
ジギタリアス
「あの野郎...刃汽は隠せてんだろうな...」
トギリ
「知らねー。」
ジギタリアス
「馬鹿野郎が...」
トギリ
「それで?どうなんだよ。
アイビーちゃんが最後まで愛した男は。」
N2
するとトギリは再び歩きだすと
ジギタリアスはニィっと笑って言った。
ジギタリアス
「ぁあ。最高の漢だったぜ」
(完)
ジギタリアスとアイビー
そしてラナンキュラス
全てはロージアに帰着します。
いつか、トギリとジギタリアスの出会いの物語は
声が多く上がれば書きたいかなー。
タイトルの意味はフランス語で
死が2人を別つまで という意味です。
この意味をどう捉えるかはお任せします。
ちなみに
ジギタリアスは
アイビーを殺した事をとても悔やんでおり
毎晩毎晩思い出しています。
アイビーとの約束もあり
ラナンキュラスの恨みを買うことにより
ラナンキュラスを強くする道を選びましたが
酒の量も、増え、心身ともに疲弊し
ロージアに再度、退団を申し込みましたが
トギリ以外の部下達が必死に引き止めました。
元々、トギリを団長に据えるつもりもあり
副団長として留まることになりました。
恐らく、千刃花の物語の中では
ジギタリアスほど深く人を思い
心を殺した人はいないと思っています。
そして、普段はトギリに全てを任せて
海王水軍トリトンの船員を引き連れ
世界中の海を渡り宝探しをしています。
実質、隠居のように思いますが
世界を揺るがす大秘宝を探しています。
それは世界の秘宝でもあり
物語で重要なキーを握っています。
その内、書くと思うので
その時にまた。