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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第6章 しろねこ姫の生徒会活動
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85-I モンスター退治

 今日は朝から興奮していた。昨日生徒会の仕事が山のようにあって疲れ果てた事も、何度かの王妃教育で忙しく、体に残っていた疲れも吹き飛んだ。


 わたしは期待を込めて空を見上げた。澄み渡った空はどこまでも青く、どこまでも続いていた。


 わあ、久しぶりに遊べるわ!授業も楽しいけれど、やっぱり実践はそれ以上よね。


「リリー、嬉しそうだな」

「ええ、だって魔術が自由に使えるのよ」


 昔はレオンハルトやレイチェルと家の訓練所で遊んでいた。しかし、一度()という場所に行って、そこの広大さに感動した。


 ここなら、きっと我慢しないで魔術が使えるわ!


『魔力変質』が起こってしまったので、前にモンスターと戦った時程自由にはいかないだろうけれど、それは仕方ないわよね。


「生徒会は補助だからな。少し手助けする程度だ」

「分かってますわ」


 苦笑いしたライアックス様に釘を刺される。昨日の大量の仕事をこなしながら、それはしっかりと頭に刻み込んだ。それでも、わくわくした気持ちは収まりそうになかった。











 少ししてライアックス様が宣言した。


「皆、これよりモンスター退治の授業を始める!魔術の授業とは違い、外には様々な危険がある!それをゆめゆめ忘れるな!」


 それから注意事項を伝える。


「ここ一帯は学院の練習場として、モンスターもそこまで強くはない。だが、少し離れれば保証はできない。決して我々生徒会の者の目が届かない範囲には行かない事、良いな?」


 五年生の生徒達がその言葉に頷く。そして、それぞれモンスターに向かって行った。その背中にライアックス様が叫ぶ。


「そうそう、言い忘れていたが何かあれば上に球を撃ってくれ!生徒会が手助けに向かう!」


 そしてわたし達生徒会役員に向かって言う。


「昨日も言ったが、我々生徒会の仕事はこの練習場の見回りだ。練習場から出る人がいないように、そして何より、間違っても誰も死なないように。では、二人一組で行動してくれ」

「リリー、行こうか」


 ライアックス様が言い終わると同時に、シリウスがやって来た。そしてさっさとわたしを連れて歩き出した。だけど、歩くのが速くてついて行くのが大変だわ。


「シル…待って……!」


 小走りになって漸く追いついてからシリウスに文句を言った。


「もうっ、そんなに先に行かないで」

「……ごめんよ」


 少し目を伏せたシリウスは、わたしを見て安心した表情を浮かべた。そして次に歩き出す時にはいつもの速さで歩いてくれた。そうして二人で練習場を見回る。


 練習場は、草原で出来た場所、湿地の場所、岩場に森林と大きく四つの場所に分かれている。今後どのような場所でもモンスターと戦えるように。


 そもそも、貴族であるわたし達がどうしてモンスターと戦うのかというと、それは自分達の領地を守るため。


 王都などは特別で、普通モンスターはあちらこちらに生息している。そのため、農民が育てた作物や、平民達の家が襲われたりする。そんな事になっては困るのはそこを治める領主、ひいては国である。


 そこで、アイルクス王国初代国王は逆にモンスターを利用して上手く民の信頼を得る事にした。つまりは、作物や住む場所は守るから、きちんと税を収めるようにと平民達にお触れを出したのだ。一方でそこの領主となる貴族にはモンスター退治という義務をつけた。


 この政策は上手くいき、建国当初は小さな国だったアイルクス王国は、僅か一代で国土を三倍近くにした。それ以降国内では大きな反乱もなく、モンスターの被害による飢饉も最小限に抑えられている。


 最も、最近はヴィレヒト関連の被害が多いけれど。











 考え事をしながら歩いていたわたしは、あまり周りが見えていなかったらしい。何かに躓いて転びかけた。


「あっ、危ないっ」

「ぅにゃっ」


 焦ったようなシリウスの声と共に身体を引っ張られる。ちょうど草原と岩場の狭間で、足元に段差があった。引っ張られた事でシリウスの胸元に飛び込んだわたしは、その体勢のままシリウスを見上げた。


「ありがとう」

「どういたしまして。リリー、次からは気をつけろよ。考え事をしながら歩くのは危ない」

「……ごめんなさい」


 シリウスに優しく諭されて反省する。そうね、草原だからと油断していたわ。これではモンスター退治どころではないわ。


 今度は周りに気を配りながら歩く。少しすると、前方から火と風の魔力と、若干の邪悪な気配がした。そこに近づくにつれ、声も聞こえてきた。


「おい、何でそこまで攻撃すんだよ!」

「いや、お前だって俺の所攻撃しただろ!」


 器用な事に、モンスターを倒しながらお互いに魔術を放るという事をしていた。そのせいか相変わらず二人の周りは酷い事になっていた。


 言い争いをしながら戦っていた二人、グレン先輩とヨゼフ先輩。その前に一体のゴーレムが現れた。それを見た二人は交互に攻撃を仕掛ける。しかしゴーレムは、それも岩場にいるものは表面が岩で出来ていて、なかなか攻撃が通らない。


 一人では無理だと見たのか、今度は二人同時に魔術を放つ。しかし、せっかくの炎の威力も風で一部が吹き飛ばされ、風も若干弱まってしまう。


「俺の攻撃を弱めんな!」

「いやお前もだろうが!」


 またも言い争いを始めた二人を見て、シリウスが唖然としていた。


「せっかく火と風で相性が良いはずなのに、勿体ない……」


 全くシリウスの言う通りだわ。これが火と水とかであればまだ分かるけれど、威力を高めあえる事に気づいてないのかしら。


「あの、ちょっと宜しいかしら」


 我慢できなくなって、わたしは思わず二人の間に入ってしまった。大声で言い合っていた二人は突然割り込んだわたしに驚いたように口を開けた。


「ア、アイリーナ嬢……?」

「何でここに…」

「生徒会の見回りですわ。それより、今言い争ってらした事なんですけれど」


 二人をゴーレムの方に向かせて、効率的な戦い方を説明する。


「先輩方は、お互いの魔術を打ち消そうとしてますわよね?そうではなく、寧ろお互いの魔術を利用して威力を上げてみるのですわ」

「お互いを……利用?」

「その考え方はなかった……」


 話している間にもゴーレムの攻撃は飛んでくる。それをさっと避けると、グレン先輩が炎を吹き出した。ヨゼフ先輩は風で炎を燃え上がらせる。そのままゴーレムを飲み込んだ。


 さらに攻撃を加えていく二人。後一撃で倒せるという所まで来た時、しかし二人は膝をついた。


「くそ、後少しなのに……」

「魔力切れか……」


 わたしは二人の前に出て、ゴーレムを見据えた。『水刃』の一撃を浴びせてから二人の方を振り向く。


「グレン先輩、ヨゼフ先輩、お見事でしたわ」


 声をかけられた二人は、ゆっくりと顔を上げて満足そうに笑った。


「ああ……ありがとうな」


 その後、シリウスと一緒に、二人を魔力切れを起こした人の集まる場所に連れて行った。











「リリー、あの二人は…」

「先輩方ですわ」


 二人を先生に預けてからシリウスに聞かれた。わたしの答えに物足りなさそうな表情を浮かべたシリウスに、ローレンス様に呼ばれた用事の事を説明した。


 それでもまだ表情を変えないシリウス。あら、必要な説明はこれではなかったのかしら。それなら、一体何が?


「シル?……あ、ちなみにあのゴーレム、シルなら五回も攻撃すれば倒せるはずよ」

「……そうじゃない」


 シリウスは首を振って頬を膨らませた。これでもないのなら、もう分からないわ。どうしてそんな表情をするの?


 じっとシリウスを見ながら考えていると、ふといたずらしたくなった。頬に手を伸ばして軽く引っ張ってみる。


「にゃ、にゃにを……」

「うふふ、シル、喋り方が猫みたいよ」


 尚も頬を膨らませようとするシリウスが面白くて、反対の頬も引っ張る。しかし、すぐに手を掴まれてしまった。


「こら、リリー、何するんだ」


 呆れたようにシリウスが言う。その表情の奥には笑顔が見え隠れしていた。


「いたずらよ。だってシルが拗ねるんだもの」

「…拗ねてない……」


 やれやれという風に首を振ると、やっとシリウスはいつもの笑顔になった。


「リリーがそんな事して良いのは、僕だけだからな?」

「レオンとチェルは?」

「……仕方ない、特別だ」

「分かったわ」


 微笑んで頷くと、シリウスはにっこり笑って前を向いた。


「さあ、仕事に戻ろうか」


 シリウスについて行きながら、大事な事を思い出した。


 そういえば、わたし、笑わないようにするんだったわ……

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