表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第6章 しろねこ姫の生徒会活動
94/125

80-I 生徒会の仕事

 次の日の授業終わり。午前授業だけだったので、お昼を食べて集まった。生徒会室で、わたし達はライアックス様に大量の書類を渡された。


「君達の最初の仕事だ。これを、内容ごとに分けてくれ」

「こ、これを……全て?」

「ああ。辛いと思うが、毎年恒例の事だから頑張ってほしい」


 ディランが絶句する。シリウスやノエルも顔を顰めた。アレックスだけは変わらずいつもの真顔だった。


 ライアックス様が頼んだよと言って出て行ってしまう。固まっていても仕方ないわ。ライアックス様を見送って、わたしは早速仕分けに取りかかった。しかし、それは思ったよりも大変な作業だった。


 まず、ある程度書類を読んで、大体の内容を把握する必要がある。そして、その内容に従って大まかにモンスター関連、大学院祭関連、毎年の学校行事関連、そして授業関連とその他に分ける。そうやって一つ仕分けるのに軽く二分は費やしてしまう。


「これ……終わらなくないか?」

「……ああ、僕もそう思う」


 そうよね、一番大変なのは内容把握だから、これを何とか出来れば………


 シリウスとディランの会話を聞き、考え事をしながらも書類を仕分けていく。ぱっと見てモンスター関連の書類だけはすぐ分かるのに、他が仕分けにくいわ。多くの物から一つを探す方が楽なのだけれど………


「……そうだわ」

「リリー?」


 ある事を思いついたわたしは顔を上げた。ノエルが不思議そうにわたしを見てくる。


「何かあった?」

「うん、少し提案があるの」


 一度皆に作業を止めてもらって、例え話を始めた。


「ねえ、たくさんの色のついた球がある時、赤い球だけ取るのと、全部仕分けるのとどっちが楽かしら?」

「いきなりだな……そりゃ赤い球だけの方が楽だろう」

「……ああ、そういう事か」

「なるほど、面白い案だ」


 雑な例え話だったけれど、シリウスとアレックスには伝わったみたい。わたしは話を纏めた。


「つまり、それぞれが一つの種類の書類だけ仕分けた方が楽だということよ。例えば、わたしがモンスター関連の書類を分けるわ」

「なら、次は僕が大学院祭関連の書類を分けよう」

「ああ、なるほどな」

「分かった、やってみよう」


 ノエルとディランも頷いて、早速作業を始める。わたしは書類の山からモンスター関連の物を仕分け、そうでない物はシリウスに回す。シリウスはそこから大学院祭に関する物を仕分け、アレックスに回す。


 そうしてざっくりと五つに分けられていく書類。取りこぼしてしまった物は、最後のディランが仕分けてくれる。それぞれが集中して書類を仕分けていく。











 気がついた時には、山のようにあった書類は残り半分を切っていた。ずっと文字を読んでいたので疲れた目を窓の外に向ければ、澄み切った青空が広がっていた。


「うーん、疲れたぁ」

「そうだよな、僕らかなり仕分けて……あれ、まだそんなに時間が経ってないな」


 シリウスが外を見て驚く。それに対してアレックスが進捗状況を伝えた。


「それにしてはもう半分仕分け終わってるぞ」

「えっ、嘘……本当だ!」


 一旦作業を中断して皆で休憩する。横にいたシリウスがわたしの手を取ろうとする。


「なあリリー……」


 ちょうどその時に部屋のドアが開く音がして、水色のさらさらな髪を持った男の人が入って来た。綺麗な、だけれどかなり鋭い茶色の瞳を向けてくる。そしてよく通る声で言った。


「君達は……新しい役員か。ちょうど良い、一人来てくれ。ああ、君で良い」


 指名されたわたしは立ち上がって呼ばれた方へ向かった。立ち上がるとシリウスが名残惜しそうにした。心配そうな視線に、大丈夫と微笑んだ。


 あっ、笑わないようにするんだったわ。気を抜くとすぐに忘れてしまうわね。


「少し手伝ってくれ」

「分かりましたわ」


 男の人に連れられて部屋を出る。どこに向かうのか、何をするかなどは歩いている間には何も説明されなかった。それどころか、名前すら知らないまま暫く無言で歩き続けた。











「なあ、フローラと仲良いのか?」

「えっ?」


 いきなり話しかけられて、わたしはすぐには反応できなかった。


「え……ええ、いつも一緒にいますわ」

「……そうか」


 これを聞いた男の人は頷いて、そして気づいたように言ってきた。


「そういえば自己紹介してなかったな。俺はローレンス·アル·コーネル。フローラの兄だ」

「あっ、わたしはアイリーナ·フォン·セイレンベルクです」


 確かに言われてみればどことなくフローラの面影があるような……?髪の色も同じだわ。


 俺の話を聞いてくれるかと聞かれ、はいと答えるとローレンス様は徐に口を開いた。


「……俺は三年の時から生徒会役員なんだ。だから、一年の時のあいつのした事も知ってる」


 鋭い目を上に向けながら、ローレンス様が話す。その時にフローラの事情に気づけなかった事を後悔しているという。


「……俺は、あいつを追いつめてしまった………」

「ローレンス様…」


 そんな事はないと、簡単には否定出来なかった。ローレンス様がどれほどフローラの事を考えているかは話し方と表情で分かる。しかし、知り合ったばかりのわたしが慰めてもローレンス様の心には届かないわ。


「……………」


 何も言う事が出来ず、わたしはただただローレンス様を見た。視線に気がついたローレンス様が少し驚きの表情を浮かべた。


「………珍しい人だ」

「……何がです?」

「あっ、いや……」


 思わず漏れたような呟き。聞き返すと、ローレンス様がバツの悪そうな顔になった。恐る恐るといったように聞いてくる。


「……俺が、怖くは……ないのか……?」

「…………えっ?」


 怖い?確かに目つきは鋭いし、眉間に皺も寄っていてまるで怒っているような表情だけれど……


「……いいえ、怖くなんてありませんわ」


 そんな事で人を避けてはいけないわよね。王妃教育でも言われたわ。外交や政治においては、人の表情を簡単に信用してはいけない。その奥にある本当の考えを見抜きなさい、と。


 再び見上げた時には、目を大きく見開いて驚愕を表していた。そしてぼそっと呟いた。


「………もっと早く出会いたかった……」


 わたしには何も聞き取れなかったけれど、残念そうな中に少し嬉しそうな表情が滲んでいるから、多分気にしなくて大丈夫よね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ