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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第5章 しろねこ姫の長い一日
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74-I 誘拐犯と対峙しました

 飛んでくる水刃に怯える子供達。わたしは隙をついて手を前に出すと、『防壁』を張った。わたしの防壁の前に、男達の放った攻撃はなす術もなく防がれた。


「何、わしの攻撃が防がれただとお!?」


 大声を出して驚く男に、子供達がまた怯える。大丈夫だよと宥めつつ、これ以上怯えさせないように、わたしは立ち上がった。


「何だ君はぁ!邪魔をするなぁ!」

「お邪魔でしたか?それでは、皆を連れて出て行きますので」

「そうじゃない!」


 怒った男は、わたしを指している。その指がぷるぷる震えていた。


「ゆっ、許さん!存分に痛めつけてやるぅ!」


 言葉と共にたくさんの水刃が飛んでくる。さらには、横に控えていた男達も風刃を飛ばしてきた。


「『防御(プロテクショ)結界(ン·シールド)』」


 子供達に被害が出ないように結界を張る。


「ここにいたら安全だから、動かないでね?」


 子供達が頷いたのを見て、わたしは前に出た。男はふんと鼻を鳴らした。


「その目、水属性だろぉ?水属性に水属性が勝てるわけないんだぁ!」

「その言葉、そっくりお返ししますわ」


 今度は水砲が飛んできたので、こちらも水砲で迎え撃つ。その横から竜巻が迫ってきた。


「こっちには風属性もいるんだぞぉ!」

「そうですか。『水砲(アクアキャノン)』」


 仕方なしに両手から水を吹き出させ、片手で水砲を、もう片方の手で竜巻を相手した。


「竜巻を受け止めるとはやるなぁ。だが、わしはギリジャフ様の腹心。ここで負けるような男ではないのよぉ!」

「ギリジャフ様?」


 面倒だからさっさと終わらせようと思った所に、男が叫んだ事で気が変わった。攻撃を止めて聞き返せば、男は誇らしげに喋り出した。


「そうだよぉ。わしは偉大なるギリジャフ様の命でここにいる。アイルクスの奴らを連れてきて、セトルータでこき使ってやるのよぉ!」


 その後も男は面白いくらいに重要な話を喋り続けた。


 セトルータ王国とインヴェノ帝国が秘密裏に同盟関係にある事。


 今頃仲間が王宮で暗躍している事。


 セトルータ王国がアイルクス王国に戦争をしかけようとしている事、などなど。











「……お前も来るか?」

「お断りします」

「ならば、力づくで連れていくのみぃ!」


 飛んでくる攻撃を尽く受け止めると、男が再び怒鳴り声を上げた。


「ええい、このぉ!!」

「あらまあ、頭をお冷やしになったらいかが?『滝行(トゥラッシュ)』」


 男達の頭上から水が降り注ぐ。全身ずぶ濡れになった彼らを見据える。


「何なら全身冷やして差し上げますわ。『凍結(フリジナム)』」


 死なない程度に威力を落として水を凍らせると、ずぶ濡れの彼らは凍りついたように動かなくなった。


「なっ、お前……それは……」

「あら、誰が水属性しか使えないと言ったかしら?」


 唖然として、しかしまだ負けを認めない男は、何かに気がついてにやりと笑った。


 直後、新たに二人の男が現れた。わたしがここに忍び込んだ時に出て行った、あの二人だわ。二人は子供を連れていて、わたし達の方に押しだした。慌てて受け止める。


「誰がこれで全員だと言ったかなぁ!わしらは七人なのよぉ!」


 しかし、それを確かめようと魔力の流れを見ると、十数人が、それも魔力を持った人達がここに集まってきていた。


「本当に七人?」

「何だよ、疑うのかぁ!?正真正銘、わしらは七人だぁ!!」

「そうか、それは良い事を聞いたな」


 突然別の声が割って入ったかと思うと、最後に来た二人が呻き声を上げた。カシャカシャと音を立てながら部屋に入って来たのは、寧ろわたし達の味方だった。


「誘拐の現行犯、及び人身売買の疑いでお前らを拘束する」


 そうは言ってももはや相手は全員が動けなくなっている。男達を連れていくよう指示した後、その代表と思しき人がわたしの所にやって来た。


「ご助力、感謝します」

「いいえ、当然の事をしたまでよ」


 やって来た彼らは王都警備隊。れっきとした騎士で、王都での事件などを取り締まっている。彼らが来て男達を連れていった事で、漸く子供達もほっと安心したらしい。見回せばまた涙を浮かべていた。


「ほら、泣かないの。お母さん達の所に行きましょう?」











 皆がわたしと手を繋ぎたがり、なかなか進まなかった。やっとの事で外に出る。路地裏から広場に向かうと、そこでは暖かな日差しの中たくさんの人が待っていた。


「あっ、お母さん!」

「兄ちゃんっ」

「ああ、良かった!」


 親を、家族を見つけた子供達が駆け出していく。広場のそこかしこで抱き合う姿が見受けられた。ああ、良かったわ。


「良かったわ、皆笑顔が戻ってきたわ」

「……お優しいですね」


 微笑みながらその光景を見ていたわたしに、横に立っていた警備隊長が呟いた。


「そうかしら」

「ええ。ここまで平民の事を気にされる貴族の方は、あまりいらっしゃいませんので」

「ただ生まれた場所が違うだけなのに、悲しい事だわ」


 本当にそうだわ。ただ平民だからと嫌がらせされる。自分の方が身分が上だと思い知らせようとする。一体何のために?


 それは、一年間とはいえ学院に平民として通ったわたしの、貴族に対する疑問だった。











「しろねこ姫様、本当にありがとうございます……!」

「もう何と言ったら良いのか……」

「ひめさま、ありがとう!」


 あちこちから人々が集まってくる。ひっきりなしにお礼を言われ、気がついた時にはかなりの時間が経っていた。


「あの、そろそろわたしも帰らなくては……」

「あっ、ごめんなさい」

「いいえ、それでは失礼しますね」


 そう言って帰ろうとしたわたしは、少しして手を引かれた。


「姫様、待って」

「ミシェたちも、つれていって」

「貴方達、お母さんは?いないの?」

「分からない。気がついたらここにいたんだ」

「分かったわ、一緒に行きましょうか」

「うん、ありがとう!」


 結局ミラルドとミシェラも連れて、わたしは家に帰った。





















「ただ今帰りました」


 家に帰ると、侍女達が飛んできた。


「アイリーナ様、お帰りなさいませ」

「ご無事で何よりでございます」

「奥様を呼んで参ります」


 その様子を、戸惑ったように見ているミラルドとミシェラ。家に着くまで話した結果、二人はマグラドア侯爵家の子だという事が分かった。


 マグラドア侯爵家と言えば、王妃様の生家で、現当主は人事大臣を務めている。先程の男の言っていた事と合わせて、二人と一緒にいる事をお父様に『伝鳥』で伝えた。


「お帰りなさい、リーナ。その子達は?」

「お母様、実は……」


 現れたお母様に粗方の事情を説明すると、お母様は微笑んだ。


「分かったわ。それより、リーナを心配して落ち着かない方がいらっしゃるから、応接間に行ってあげて」


 二人をお母様に任せ、言われた部屋に向かう。落ち着かない人、誰かしら?考えながらドアを開ける。


「今帰ったわ」


 言った途端に誰かが飛びついてきた。

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