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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第4章 しろねこ姫のデビュタント
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58-I 正式に

 その日は朝から忙しかった。


「アイリーナ様、お久しぶりです」

「お久しぶりですフィリップさん、カイル、元気でした?」

「ええ」

「元気ですよ」

「良かった」

「それでは、早速採寸を始めますね」


 フィリップさんとカイル、ミルも手伝って手早く採寸をする。全身を隈なく採寸され、続いて生地を目の前に出された。


「どれに致しますか?」

「ええと、どうしようかしら」


 色とりどり、さらに触り心地も材料も様々で、どうしても迷ってしまう。どうしよう、かわいらしいピンク色?この間のような黄色?はたまた、濃いめの色にする?


 散々迷った挙句、意見を聞いてみた。


「皆さんはどれが良いと思います?」

「そうですね……どれもお似合いですが………」

「これなどいかがでしょう」


 そう言ってカイルが示したのは水色の滑らかな布。フィリップさん、ミルも頷く。


「そうだな、瞳の色とも合ってますし」

「私も賛成です」

「では、それにします」

「かしこまりました」


 そうして数日後に取りに行く事にしてドレスはお任せする。











 次に、王宮に馬車で向かい、宰相の執務室へ足を向けた。途中ですれ違う人々皆に軽く膝を曲げて礼をし、優雅に歩き続ける。やがて執務室に辿り着くと、ドアを叩いた。


「お父様、ただ今参りました」

「入りなさい」


 執務室に入ると、書類が積み上がった机からお父様が立ち上がる。心配そうにもう一度確認してくる。


「リーナ、本当に良いんだな?」

「ええ、もちろんですわ」

「それなら行こうか」


 わたしがしっかり頷くと、お父様は少し微笑んだ。そして二人で陛下のもとへ向かう。正式に婚約を決め、その後の予定について打ち合わせをするために。


 やって来たのは陛下の休憩室。お父様がドアを叩く。


「陛下、今宜しいですか」

「ああ、どうぞ」


 ドアを開ければ、ソファには陛下とシリウスが座っていた。礼をしようとすると、陛下に止められた。


「礼はいい、そこに座ってくれ」


 お父様と共に示されたソファに座る。目の前のシリウスと目が合って、シリウスが微笑んだ。わたしも微笑み返す。


「それで、今回正式に婚約が決まったわけだが、婚約発表は二人のデビュタントの時にしようかと思っている」

「そうですね、それが良いと……」

「テオドール」


 お父様が返すと、陛下が怒ったように遮る。対するお父様は苦笑いした。


「分かったよ、ユリウス。それで?かわいいリーナを縛り付けるつもりか?」


 横を見ると、わたしには決して見せることのない厳しい表情。そんなお父様が怖くなる。お父様がお父様でなくなっていくような、そんな感覚がする。わたしは思わずお父様の手を握った。


「リーナ、大丈夫だよ」


 そっと囁いてくれるお父様は、いつもの優しいお父様。それに安心して、少し微笑んだ。


「…常に冷静沈着な宰相殿が、そんな優しい顔も出来るんだな」


 その声に前を向けば、今度は陛下が苦笑いしていた。シリウスは少し不機嫌そうに見える。


「それで、どうなんだ」

「そんな事はしないよ。ただ、来年度から王妃教育を始める事にするから、少し忙しくさせるかもしれない」

「それは仕方ないな。だが、絶対に……」

「分かってる、無理はさせないから」


 わたしとシリウスを置き去りにして、話し合いは進んでいく。


 結局、婚約発表の段取りと王妃教育について細かく決めて、わたし達は退室する。去り際にシリウスが囁いた。


「これから学院行く?」


 それに頷く事で返すと、シリウスは待ってるよと言ってきた。そうね、どちらにせよあの本を読まないといけないし、それは早い方が良いわ。


 王宮を出たわたしは、一度家に帰って制服に着替えてから、ミルと共に学院へと向かった。












 馬車を降りると、見慣れた風景が広がる。わたしは寮の自分の部屋に向かって歩き出した。


 途中でわたしが勉強や実技の指導をした人達にお礼を言われた。


「セイレンベルク公爵令嬢様、ありがとうございました。おかげさまで試験を無事に終える事が出来ました」

「それは良かったわ。あと、わたしの事は名前で呼んで構わないわ。その呼び方だと長いでしょう?」

「良いんですか?」

「もちろんよ」


 こんな感じのやり取りを繰り返しながらも進み続ける。やっと部屋に着いた時にはクタクタになっていた。


 こう考えると、試験前はシリウスやシャルロッテ達に相当守られていた事が分かる。しかも試験後二日は学院は休みで、家に帰っても良い事になっている。それにも関わらずこんなに人に話しかけられるとは………


「アイリーナ様、こちらをどうぞ」

「ありがとう」


 いつの間にか紅茶を準備していたミル。椅子に腰かけて一口飲む。温かい、上品な香りがわたしを包んでいく。


 ゆっくりと紅茶を飲み干すと、幾分か疲れが和らいだ。大きく息をつくと、お気に入りの本、『最高峰魔術の危険性』を開く。


『七、『天女(サンパトローネ)祝福(アテスマルカ)


 この術は光属性最上級魔術で、範囲内の全ての生き物を回復させる。怪我、状態異常はもちろんの事、闇属性魔術による呪いにも有効である。ただし、死者を蘇らせる事は不可能である。

 術を使う際は、一般的な呪文である術名の詠唱の前に、"強大なる光の精霊よ、我、その力を以て、かの者達にあらん限りの祝福を与えん"と唱える必要がある。』


 流石に最上級魔術、効果は絶大ね。だけどその分膨大な魔力を消費するのだろう。とりあえず呪文を繰り返し言って覚える。


「"強大なる光の精霊よ、我、その力を以て、かの者達にある限り"……間違えた、"あらん限りの祝福を与えん"」


 唱える度に身体に馴染んでいく。そして、漸く覚えた所で一度使ってみるつもりでイメージを膨らませ、唱えてみる。


「"強大なる光の精霊よ、我、その力を以て、かの者達にあらん限りの祝福を与えん、『天女(サンパトローネ)祝福(アテスマルカ)』"」


 大量の魔力が動いた感覚がするけれど、何も起きない。だけどわたしは諦めない。練習して、出来るだけ早く使えるようになって、それできっとクラウス殿下を助けてみせるわ!

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