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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第3章 貴族しろねこ姫
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46-I 怒りました

 無事に試験も終わり、わたしはアレックスとお茶している。今日はサファイアのお礼のために、お母様に頂いたあれを用意した。


「アレク、これ、サファイアのお礼よ」

「お礼なんて良いのに……」


 そう言いながらカップを覗き込んだアレックスは、その体勢のまま固まった。


「ど、どうして……」

「ふふ、お母様に頂いたのよ」

「セシリア叔母上が……」


 そう、アレックスに差し出したカップの中身は、ファルク王国産のココア。お礼といったらこれくらいしか思いつかなかった。


「王国でも珍しいのに、よく集めたな」

「あら、そうなの?」

「ああ。病気の時に飲むくらいだ」


 そう言いつつカップを傾けるアレックス。驚いたせいか真顔になっていたアレックスは、だんだん笑顔になってきた。良かったわ、嫌いだと言われたらどうしようかと思ってたのよ。











「リリー!探したよ」


 アレックスと談笑していた所に、わたしを呼ぶ声がした。振り向くと、こちらに歩いてくるシリウスがいた。とても探していたようには見えないけれど……


「どうかしたのですか?」


 わたしの問いかけには答えず、シリウスはアレックスに詰め寄った。笑顔で、だけど怒っている。


「アレックス殿下、こんな所で何をなさっているのです?」

「見たままですよ。リーナとお茶してました」

「リーナ?」


 そこでわたしの方を見る。笑顔なのに鋭い視線がとても怖い。


「どういう関係だ……?」

「従兄弟同士ですわ」

「従兄弟?」

「ええ、お母様がファルク王国の王女でしたの」

「な……」


 固まったシリウス。わたしはアレックスと顔を見合わせた。もしかして機密事項だったかしら?


「秘密だった?」

「いや、そんな事はないと思うが…」


 一方でシリウスは色々呟いていた。


「…確かに聞いた事が……いや、でもだからって……」


 考え事をしているシリウスをそっと椅子に座らせて、目の前にココアを差し出した。シリウスはぼうっとしながらカップを手に取りそれを飲む。途端、驚きの表情になった。


「……っ、何だこれは」

「ファルク王国産のココアですわ。お口に合いませんでしたか?」

「…いや、美味しい。初めての味だな。甘くて、それでいて適度に苦くて……」


 ココアを飲みながら呆然と呟く。シリウスにも気に入ってもらえて良かったわ。あれ、でも何でシリウスが来たんだっけ?


 一息ついたシリウスに問いかける。


「ところで、わたしに何の用事があったのですか?」

「ああ、そうだった。シャルロッテ嬢が探していてな」

「シャルロッテが?何かあったのかしら」

「分からないが、何か慌てていたようだった」

「シャルロッテはどこに?」

「女子寮じゃないか?」

「分かりましたわ。シリウス様、ありがとうございます。アレックス様、ごめんなさい、ここで失礼しますわ」


 シリウスとアレックスに礼をして寮に向かう。











 寮の手前でシャルロッテと会えた。


「シャルロッテ、どうしたのかしら?」

「ああ、アイリーナ様、探しましたわ!実は、アイリーナ様の部屋にレテフィア嬢達が来て……」


 あらましを聞きながら部屋に向かう。どうも、わたしの部屋を通りがかった所、中でレテフィア嬢達が何かをしていたらしい。そんな大したものはないと思うのだけれど。


 部屋に着いて中を覗き込む。わたしは中を見て呆然と呟いた。


「これは、どういう事……?」


 部屋は足の置き場もないくらい荒らされていた。本棚の中身や教科書は全て床に散らかされている。そして、その上に何かを探し回るレテフィア嬢達がいた。


 わたしを見たレテフィア嬢は、わたしの本を踏みつけて迫ってきた。先程のシリウス並に鋭い目付きをしている。


「貴女、頂き物はどうなさったの?」

「頂き物……?何の事かしら?」

「とぼけないで!貴女がアレックス様から何かを贈られたって、そう聞いたのよ!」

「ああ、あれですか」


 アレックスがファルク王国の国王陛下からの物だと言っていた、あのサファイアのブローチかしら。……まさか、それを奪おうとしたのかしら?侯爵令嬢であるレテフィア嬢が?


「貴女だけ貰うなんて狡いわ!」

「………くだらないわ」


 たかがそんな事でわたしの部屋を荒らしたのかしら?狙われたらしいブローチは、わたしがちょうど持ち歩いていたので見つからなかったようだ。しかし、その分本が犠牲になってしまった。


 わたしは伝鳥(フォナー)を飛ばした。そしてレテフィア嬢達に向き直る。


「貴女達、ここがどこか分かってるのよね?」

「もちろんですわ!貴女の部屋でしょう!」

「そうよ、わたし、セイレンベルク公爵令嬢の部屋ですわ。身分が上の人の部屋に勝手に入った挙句、そこを荒らすなんて一体どんな教育を受けたのかしら?」


 わたしは怒っている。部屋を荒らされたのは良い。勝手に入られたのもまだ良い。問題は、散らかされた物だった。わたしが大事にしている本を、無造作に散らかした上、踏みつけるなんて許せない。


 冷たく言い放つと、取り巻き二人、レニア嬢とベネジット嬢は俯いて押し黙った。ただレテフィア嬢は言い返してきた。


「だったらアレックス様に頂いた物を寄越しなさいよ!」

「何だと……!」


 支離滅裂な発言に呆気にとられたその時、後ろから怒りの声がした。ちょうど良い時に来たわね。


「あれには父上の意も込められている。それを、お前如きが、寄越せだと!?」

「な、んで………」


 現れた人を見て絶句するレテフィア嬢。しかし、来客はアレックスだけに留まらなかった。


 アレックスの後ろからやって来たのは、先程と同じ、いやそれ以上に怒ったシリウス。そして、その後ろからは。


「これはどういう事だ!」


 わたしと同じ事を言ってお祖父様が入って来た。良かった、ちゃんと連絡出来たわ。本来女子寮に男性は入ってはいけないのだけど、この場合は仕方ないだろう。


「レテフィア·フォン·ディアクト侯爵令嬢、ベネジット·アル·アロー伯爵令嬢、レニア·ラ·ゴートン子爵令嬢。これをやったのはお前達か?」

「………はい」

「「……………」」

「分かった、話を聞こうか」


 ああ、お祖父様、静かだけれどかなり怒ってらっしゃるわ。それ以上何も言わずに、問題児三人を引き連れて去っていった。一方でわたしは大きく深呼吸した。


「『浮遊(フローサ)』、『掃除(クリナー)』」


 部屋全体に魔術をかけ、一気に元通りにした。それを見てだんだん怒りが収まっていく。しかし、アレックスとシリウスはまだ怒っていた。


「全く、下手したら外交問題だっていうのに」

「部屋を荒らすなんて………」


 とりあえず何か盗られた物がないか確かめて、一息ついた。物は揃っていたけれど、胸騒ぎがする。何だろう、何か見落としてるような……


 その日は何もしないで寝た。

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