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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第1章 しろねこ姫の幼少期
5/125

1-I 日常

本編です。

主人公が五歳になった頃です。

 暗い部屋で、黒い何かを纏った男がわたしを見ている。何か言っているけれど、聞き取れない。ただ一言だけ聞こえてくる─『死の紋章(キルマーレム)』─わたしは黒い光に包まれて──目を開けた。


(夢か……)


 まだ心臓がバクバクいっていたので、ベッドの上で落ち着くのを待った。目を閉じればまたあの夢を見そうで怖い。夢とはいえ、あの恐怖はそうそう忘れられるようなものじゃない。やっと落ち着いてきたころに、ノックの音が聞こえた。


「アイリーナお嬢様、おはようございます」


 そう言って入ってきたのは、侍女のミルだ。一般的な茶色の髪に、灰色の目。それでいて端正な顔立ちをしている。


「ミル、おはよう」


 やっとベッドから降りたわたしは、部屋に備え付けの鏡の前に向かう。そこで座ったわたしは、鏡に映るわたし─アイリーナ·フォン·セイレンベルクを見つめる。


 ふんわりと巻いているピンクがかった金色(ストロベリーブロンド)の髪。ぱっちりと開いた大きな空色の瞳は、よく猫みたいと言われる。


 ふと手を見たわたしは、左の手のひらにうっすらと浮かぶ白い紋章を見つけた。よく見ないと分からないこの紋章を見て、朝見た夢を思い出し、わたしは小さく震えた。


「お嬢様、朝ごはんはどうなさいますか?」

「お父様といっしょがいい」

「かしこまりました」


 テオドール様は部屋でお召し上がりになりますと言われ、わたしはお父様の部屋に向かった。


「お父様、おはようございます」

「おはよう、リーナ」


 ふんわり微笑んだ金髪で長身のお父様に抱きつく。お父様はわたしをそっと抱き上げ、膝に乗せて座った。優しく頭を撫でる。


「リーナ、また夢をみたのか?」


 わたしは小さく頷いた。お父様は背中にトントンと手を当て、大丈夫だ、お父様がいるからな、と言って、わたしの恐怖を消してくれた。


 元気を取り戻したわたしは、お父様の横に座り、目の前に並べられた料理に手を合わせた。











「……ごちそうさまでした」

「ごちそうさま。リーナ、これから街に行こうか」

「ほんとう!?あっ、でも今日はダンスとマナーを学ぶことに」

「ミレーユとフランジーナには僕が言っとくよ。これも()()だからね」

「ありがとうございます、お父様!」


 お父様が、二歳になるわたしの弟、レオンハルト·フォン·セイレンベルクも連れていく、と言ったのを聞き、わたしは準備のために部屋に戻った。











「ミル、お父様と街に行くことになったの。準備お願いね」

「かしこまりました。こちらのワンピースでよろしいですか?」

「うん、ありがとう」


 ミルが選んでくれた水色のワンピースを着て、髪を結ってもらう間、久しぶりに街に行けることで落ち着かなかった。ミレーユさまに教わるダンスも、フランジーナさまのマナーの講義も楽しいけど、やっぱりお父様との()()が一番楽しい。今日は何を教えてもらえるんだろう、平民の暮らしかたか、人ごみの歩き方か。


「お嬢様、出来ましたよ」

「ありがとうミル、行ってきます!」

「お気をつけて」











 家の前に出ると、お父様とレオンハルトが待っていた。


「お待たせしましたお父様、レオン」

「大丈夫、僕らも来たばかりだ」

「おねえしゃま」


 レオンハルトが駆け寄ってきた。お父様譲りのサラサラの金髪と、茶色がかった紅い瞳を持つレオンハルトは、瞳の色以外はお父様そっくりだ。ちなみにお父様の瞳は青が強い黄緑にほんのり茶色が入っている。駆け寄ってきたレオンハルトをぎゅっと抱きしめ、左手を握った。そして左手でお父様の手を握る。


「……?」

「お父様?なにか?」

「あ、いや、なんでもないよ。さあ、行こうか」


 握ったとたん首をちょっとだけ傾げたお父様を見上げると、彼はふっと微笑んだ。わたしも微笑む。そうして、三人で手を繋いで街に向かった。

ごめんなさい、一部訂正しました。

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