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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
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α-Y 転生ヒロイン

 私、ユリアンナ·ラ·クレノール男爵令嬢は、昔から何かが違うと思っていた。私がいるべき場所はこんな所じゃない、もっと華やかな所よ。王都に行ってみたりしたが何も分からない。


 ずっと悶々としていたが、私も十二歳になって、学院に入学する事になった。学院の建物、雰囲気を感じて何かが引っかかった。あれ、この風景どこかで見た事がある。どこだ、家でじゃない。


 思い出そうと悩む私は俯いていて、前に人がいるのに気づかなかった。


「きゃっ」

「うわっ?」


 顔を上げた時にはもう遅かった。ちょうど正面にいた男子とぶつかってしまった。


「あっ、ごめんなさい」

「いや、考え事をしてた僕が悪かった。すまない」


 その男子は日光を反射する銀髪で。碧翠の瞳が印象的で……この瞬間、私の頭の中で全てが繋がった。


 そうか、ここ、ゲームの中の世界だ!


 私が思い出したのは前世の記憶。その世界ではかなりの金持ちの家に生まれた私は、ある時ゲームにハマり、四六時中プレイしていた。


 ここはそのゲーム、『君の瞳の輝きに』の世界。これは、平民ながら珍しい光属性持ちのヒロインが、王子や騎士団長子息達と協力してモンスター、そしてその頂点にいる魔王を倒す、バトル系のゲーム。


 しかし、このゲームはそれだけじゃない。ストーリーを進めるには、協力する中で王子達との親密度を上げる事が必要で、そのためのイベントが発生する。


 つまりまとめれば、ここはバトル系乙女ゲームの世界で、私はそのヒロイン。平民じゃなくて男爵令嬢だけど、名前が初期設定のユリアンナだし、光属性持ちだから間違いない。


 さっきぶつかったのは、協力者かつ攻略対象の中で私が一番好きな人、シリウス王子。今のは出会いイベントだった。慌てて声をかけようとしたが、もういなくなっていた。まあいっか、また後で会えるし。











 学年は四つのクラスに分けられる。火術クラス、水術クラス、風術クラス、そして地術クラス。光属性の私は、人数調整で水術クラスに入った。これはゲーム通りだわ。


 そして、そこにシリウスと魔導師長の息子、ノエルがいるのも同じ。しかし、違う事が一つだけ。セイレンベルク公爵令嬢のアイリーナがいなかった。これはチャンスだわ!


 ゲームのアイリーナはシリウスに恋をしていて、シリウスに近づく女子に尽く嫌がらせをしていた。ヒロインは特にひどかった。廊下で会えば水をかけられるのは当たり前。そのせいでシリウスに愛想を尽かされてしまう。嫉妬に狂ったアイリーナはヒロインを階段から突き落とし、果ては魔王に取り込まれてしまう。


 ともかく、そんな彼女がいない今のうちに、シリウスを手に入れるのよ!











 それから、毎日のようにシリウスに話しかけた。最初の頃は他の令嬢達もいたが、いつしか私だけになっていた。やったわ、私のために他の令嬢を遠ざけたのね!


 ただ、シリウスがたまに言っているリリーという女子が気になるわ。そんな人私は知らないし、ゲームにもいなかった。どういう事だろう?











 そんなある日、食堂でシリウスを見ていると、いきなり通りかかった令嬢の手をつかんだ。なっ、何してるのよ!シリウスに触れていいのは私だけよ!


 その後、何とかその令嬢を探し出し、そして平民だと知った。なんて事、平民のくせに私を差し置いてシリウスに手を握られたですって?気に食わないわ!











 それからというもの、私はその平民と会う度に転ばせたり水をかけたりした。もちろん私は水属性の魔術は使えないので、クラスの平民を『制圧』してやらせた。


制圧(サプレッサー)』というのは、ゲームで魔王がアイリーナにかけた魔術だ。これで他人を好きに操れる。学院に入学した頃に夢で見て、起きたら使えるようになっていた。


 さすが、神様はヒロインの私の欲しいものが分かってるわね!直接平民にかけるのも考えたけど、それじゃ気がおさまらない。


 しかし、いくらやっても()()()に堪えた様子はない。それどころか、むしろシリウス達に覚えられていた。私はあれからもずっとシリウスに話しかけていたが、一向にイベントが起きない。ああもう、全部()()()のせいよ!


 ある日、階段であいつを見かけた。いっその事落としてしまおうとした。しかし、私は階段の下に、あいつは誰かと一緒に上にいた。


 どうしようかと思っていれば、何とあいつが落ちてきた。魔術で止めようとしたらしいが、失敗して転げ落ち、階段の下にぺしゃんこになった。


 ラッキーだわ!そうよ、あんたは平民らしく床に這いつくばってればいいのよ!起き上がろうとするやつを発光で目くらましして、思い切り水球をぶつけてやった。そのままそこを立ち去る。ああ、スッキリした!











 しかし、その日の授業終わりに呼び出しをくらった。何だろう、首を傾げつつも学院長室に向かった。


「今日、君が事件を起こしたと聞いた。何が起こったのか説明してくれ」


 席に着くやいなや学院長様が本題に入った。ああ、その事ね。


「それでしたら──」


 ありのままの事実を述べる。ただし、真実とは限らないが。あいつに思っている事は全部はぐらかした。ついでに嫌がらせについても言わなかった。だって、聞かれてないし、言う必要もないよね。


 聞き終わった学院長様は小さくため息をついて、そうか、と頷いた。


「分かった。他の人にも話を聞くので、処分は追って通達する。今日はもういいぞ」


 一応礼をして部屋を出る。歩きながら私はイライラしていた。処分ですって?何でよ、気に食わなかった平民に水をかけただけで処分?こんなのストーリーには無かったわ。何なのよあいつ、ストーリーにすら出てこないような平民より、ヒロインの私の方がよっぽど立場は上よ!











 結局一ヶ月の休学処分となった。その間は寮にある専用の部屋に閉じ込められ、一からマナーや礼儀作法を学ばされた。


 ああ、こんな事してる場合じゃないのに。もうすぐ一大イベント、シリウスの過去の話が聞けるチャンスがあるのよ。これをこなせばかなりの親密度が稼げる、今まで以上に仲良く出来るのよ!


 それに、私がいなくて寂しい思いをさせているかもしれない。せっかく半年かけて他の令嬢を追い払って手に入れた立場なのに!











 一ヶ月してようやく授業に復帰した私は、令嬢達を牽制しつつ一ヶ月前の立場を取り戻した。


 そして、そろそろあのイベントだわ。シリウスが過去、そして能力という秘密を打ち明けてくれる、重要なイベント。


 ある時、中庭の一角に蹲るシリウスを見つけたヒロインは、シリウスの抱える秘密を聞く事となり、秘密を共有する事で親密度がかなり上がるというもの。


 だけど、一向にその気配がない。痺れを切らした私はある日シリウスに、話があるから今日の放課後に時間をくれないか、と聞きに行った。


「明日でいいか?」


 返ってきた答えは淡々としたもので。私は頷くしか出来なかった。


 その日の放課後、ゲームでシリウスが蹲っていた場所に来た。今日イベントが起こらなければ、ストーリーが進まない。しかし、いくら待ってもシリウスは来ない。


 どうして、何で来ないの?だって、ずっと何か思い悩んでたじゃない。リリーっていうのも、シリウスを苦しめてる原因でしょ?どうせいじめの中心的存在なんでしょうね。私が悩みを解決してあげるわ。


 気がつけば私は寮に向かっていた。結局シリウスは来ず、落ち込んでいる私の耳に嬉しそうな声が聞こえてきた。


「いつも通りだと思うけど……」

「いつも以上によ」

「ええ?」


 ああ、ヒロインのこの私がこんなに落ち込んでいるのに、何であいつばっかり幸せそうなのよ!思わず八つ当たり気味に言う。


「あなた、私が落ち込んでるのに、よくそんな嬉しそうに出来るわね。私が不幸なのが嬉しいの!?」

「決してそんな事はないです」

「うるさいっ!」


 口答えなんか聞きたくないわ。そこ通るのに邪魔よ。気に食わないあの平民を突き飛ばし、足早に立ち去る。


「何でイベントが起きないのよっ」


 何でストーリー通りにいかないのよ!それもこれも全部あいつのせいよ!











 翌日、シリウスに決定的な一言を言われた。


「あの子を見習った方がいいんじゃないか?」


 そう言ってシリウスが示したのは例の平民で。さすがにもう限界よ!私は()()()()()()()()なのよ!何でこんな平民を見習わなくちゃいけないのよ!


 怒りのままに引っ叩いて押し倒す。しかし、隙をついて立ち上がった彼女は平然としていて。


「ユリアンナ様、どうなさったのですか?」


 何ですって!あんたのせいで色々狂ってるのよ!こいつ、絶対に許さない!











 その日は授業中も懲らしめる方法を考えていて、昼に閃いた。そうだ、あの隠し部屋に閉じ込めてやればいいんじゃない?


 ゲームでは、五年生になったヒロインがアイリーナに閉じ込められる部屋。奥には合成魔獣がいて、危うく殺されかける所を、攻略対象が助けに来る。


 これも重要なイベントだが、もうそんな事言ってられない。あの平民さえいなくなれば、ストーリーは元に戻るはずよね!


 放課後、図書室に向かう彼女を捕まえて、地下に連れて行く。彼女は大人しくついてきた。馬鹿だわ、数時間後には死んでるっていうのに。


 真っ暗な部屋に彼女を押し込んでドアを閉めた。このドアは中からは開かないようになっている。よし、これでいいわ!











 寮に戻る途中でちょうどシリウス達に会った。


「シリウス様、どこに行かれるの?」

「少し人を探しにな。朝の子なんだが」

「ああ、あの子なら閉じ込めました。生意気なのよ、平民のくせに」

「はあ?」

「どこに?」

「誰も知らない場所に。そんな事より、私と……」

「失礼する」


 えっ、どうして行ってしまうの?邪魔者なら私が片付けたのに。今日の放課後、時間をくれるって言ってたのに。私は呆然とそこに立ち尽くした。

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