表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
40/125

32-I 心の支え

 元気になったので、さっそく魔術の練習よ。家の訓練所に行って魔術を使ってみる。


「『水泡(バブル)』」


 普通に泡を出そうとしてイメージした。しかし。


「なっ、うわっ!?」


 体が埋まる程大量の泡が出てきた。慌てて泡を消す。えっ、どういう事、()()()()()()()()()()()()のよ。


 気を取り直して、次の魔術。本当は突風でも起こそうと思っていたけど、この勢いでは家を壊してしまうわ。


「『発光(フラッシュ)』」


 少し部屋が明るくなるくらいに魔力を込めてイメージして使う。今度は、部屋の中全体が白い光に包まれ、眩しさに目を開けていられない。


 光を消して、しばらく立ち尽くす。今の、結構魔力を使った時の明るさだわ。え、どうしよう、普通の威力の魔術が出せないわ。これじゃ、レオンやチェル達と遊べないわ。











 しばらく悩んで、一つの結論に辿り着く。やっぱり、練習するしかないわ!


 そして、ひたすら泡を作り続けた。体が埋まるくらいの量を出し、全て消してはまた作る。これを一日中やりまくり、やっといつもの五倍くらいの数まで減らす事が出来た。


 だけど、まだまだね。治癒や防壁にはちょうど良さそうだけど、攻撃力が高すぎるわ。


 一度氷矢を軽く飛ばしてみたら、普通に壁を突き抜けた。さすがに驚いたわ。この建物は、かなり魔術に耐えられるように造られている。いつもなら氷矢が当たってもビクともしないのよ。


 呆然としつつも修繕で直してため息をついた。











 その日の夜、お父様の部屋に向かった。


「リーナ、どうした?体はもう良いのか?」

「はいお父様、すっかり治りましたわ」


 心配気なお父様に大丈夫だと告げる。そうかと頷いたお父様に座るように促された所で、お父様の向かい側に座って切り出す。


「実は今日、魔術を使ってみたのですが、威力がとても高くて。お父様、理由が何かご存知ですか?」

「それは『魔力変質』だろう。魔力量は変わらないが、前よりも少ない魔力で同じくらいの魔術が使えるんだ」

「そうでしたか。普通に泡を出そうとして、部屋を埋め尽くす手前までいってしまったので、慌てましたわ」


 良かった、最初に使ったのが攻撃魔術でなくて。そしてお父様は呆然としたように聞いてくる。


「そ、そうか。他のはどうだった?」

「家を壊してしまうと思って、『水泡(バブル)』と『発光(フラッシュ)』しか練習してませんが、部屋が真っ白くなりました」

「……分かった。今度外にでも行こうか。そこで思い切り練習しよう」

「……仕事は良いのですか?」


 宰相のお仕事、大変でしょうに。休んでも大丈夫なのかしら。そう聞くと、お父様は微笑んだ。


「ああ、一日くらい何とかなるさ。そうしたら、レオンとチェル、シシーも連れていくか」

「楽しみですわ!」


 お父様の仕事が心配だけど、そう言うなら楽しまなくちゃ!久しぶりの外、いつ以来かしら?


「リーナ、それと、もう一つ話があるんだ」

「何でしょう?」

「あの魔獣の事なんだが」


 真剣な顔で話し始めたお父様、その話は驚きのものだった。


「まず、あれを作ったのは奴で間違いないだろう。そしてあれは、首元の核部分を壊さないといくらでも復活する事が分かった」

「えっ、では、また戦うのですか?」

「いや、核は見事に壊されていたよ。問題は、リーナが切ったと言った尻尾の方だ。傷口すら残さず、完全に元通りになっていた。リーナに教えてもらっていても、切られていたとは信じられない」

「そんな、つまり無傷だと、そういう事ですか?」

「そうだ。核だけ壊されても、体の自己回復機能は働くみたいだ」


 じゃあ、もう少し倒すのが遅ければ、尻尾を切ったのが意味ない事になっていたという事?そんな事になってたら負けて倒されてたわ。今更ながらに震える。


「それと、リーナが消し去った闇の魔力だが、リーナの予想通り魔力を吸収するようだ」

「やっぱり……」


 うう、こう考えると、やっぱりあれに勝てたのは偶然の産物だわ。もう一度やれと言われても、同じ事をしても、勝つ自信は全くと言っていいほどない。



「それで、今回の件で、ミレイルを閉じ込めたクレノール男爵令嬢は、話を聞いた限りでは、あれの事を知らなかったらしいので、不本意ながら三ヶ月の停学処分とした」


 苦い顔をしながら言ったお父様。だが、と続けた。


「僕としては、退学にしてやっても良かったんだがな」


 そう言ってわたしのほっぺたに触れた。


「大事なリーナをこんな目に遭わせるなんて」

「ごめんなさい」


 少し俯いて言うと、ほっぺたを軽くつねられた。


「全く、自分の安全も考えなさい」


 つねられたのに驚いて顔を上げると、嬉しそうに微笑むお父様が目に入った。


「ありがとうリーナ、僕らを心の支えにしてくれて。だけど、それは僕らも同じなんだ。僕らもリーナを支えにしているんだよ、だからな、何よりも無事でいて欲しい」

「…お父様………はい、分かりましたわ」


 しっかりお父様の言葉を心に刻む。支えになっている人達が、わたしを支えにしてくれている、それはとても嬉しかった。そんな人達を悲しませてはいけないと強く思った。











 そして。そういえば助けてくれたシリウス達にお礼もしていないと思い、刺繍入りのハンカチを贈る事にした。


 柄は何が良いかしら、図鑑を見ながら考える。


 かなり悩んだ末、シリウスは白くて凛として咲くシュンクの花。ノエルは優しい青色のビラートの花。そしてディランは、燃えるように赤い花のユジミナテに決めた。


 まずはシュンクの花から。白い糸を使って丁寧に刺繍していく。シュンクは、茎がすっと真っ直ぐ伸びていて、その上に一輪の白い大きな花を咲かせる。まさにシリウスぴったりな、気品のある花なのよ。


 次に、ビラート。これは群生していて、ふんわりとした優しい香りと柔らかい六枚の花びらが特徴。青色の他に、黄色やピンク色などいろんな色があるけれど、やっぱりノエルには青よね。


 そして、ユジミナテの花。まさしく炎が咲いているような雰囲気の花で、ディランと似ていると思うの。特に、この花はシュンクの花の周りに咲いて、まるで守っているようだから、騎士のディランにはぴったりだわ。


 一日半程かけて、三枚のハンカチを仕上げた。右下にそれぞれの花と、小さく猫の肉球が刺繍してある。だけど、これをどうやって渡そうかしら。学院には入れないし、いつ会えるのかな。











 ぼんやりと窓から街を眺めていると、馬車が家の前に停まった。あら、お客様かしら?今日はそんな予定はなかったと思うけれど。


 馬車から降りてきたのは三人。光を反射して輝く銀髪の人。燃えるような赤い髪と流れるような青い髪の人達。シリウス、ノエル、ディランが家に来ていた。


 ちょうど会いたい時に来てくれた。部屋から飛び出したいのを堪え、ミルが呼びに来るのをじっと待った。こういう時、使用人が呼びに来るのを待たなくてはいけないのが焦れったい。


「アイリーナ様、お客様でございます」

「分かったわ」


 やっと来たミルに付いて三人のいる部屋に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ