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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
37/125

29-I 帰ってきました

 ううん、ここ、暖かくてふわふわだわ。だめ、もう少しここにいさせて……


 はっと目を開ける。あれ、ここは?どこか懐かしいわ。部屋を見回すと、壁に取り付けられた白い本棚がある。ふと横を見ると、白いモフモフの物があった。ここ、わたしの家、わたしの部屋だわ。


「にゃ、アイリス、おはよう」

「ミャー」


 アイリスを抱きしめる。窓の外は明るくて、お昼頃かしら。少し体を起こすと、クラっとした。どうしよう、これじゃ何も出来ないわ。











 どうしようかと思っていると、ドアの方で小さな音がした。見れば、ちょうどお母様が部屋に入って来る所だった。


「お、お母様……」

「!?リーナ、起きたのね!」


 声をかけると、一瞬固まってからやってきて、しっかり抱きしめられた。だんだん涙声になっていく。


「良かったわっ。リーナ、もうっ、心配したのよ。一週間も起きないんですもの」


 い、一週間?わたし、そんなに寝ていたの?え、えっ?というか、そもそも、いつから?


 わたしはしばらく混乱していた。その後、お母様に優しく聞かれた。


「リーナ、どこか痛い所はあるかしら?」

「少し動くと頭がクラっとしますわ」

「まあ、なんて事!」


 お母様はそれを聞くなり侍女を呼んで、良い香りの蝋燭と薬湯を持ってこさせた。わたしが薬湯を飲んでいる間に、お母様は魔術で蝋燭に火を灯し、部屋を少し暖かくした。部屋中に良い香りが広がる。この香り、とても安心するわ。











 落ち着いた所で、お母様に質問する。


「お母様、わたしいつから寝ていたのかしら?」

「テオ様が学院に行った日からよ。テオ様がリーナを抱いて帰ってきた時は、何事かと思ったわ。すっかり疲れきって、リーナを寝かせた後はフラフラだったのよ。それに、ずっと何かに怒ってたわ」

「え、あの時から一週間経ったのですか?」

「ええ、そうよ。一体何があったの、リーナがそんなに寝込むなんて」


 お父様が学院に来た日から……その言葉で、何があったか思い出した。


 そうよ、ユリアンナ様に閉じ込められて、合成魔獣を倒して。お父様達と部屋に戻って、シリウス達に戦いの様子を伝えて。


 その後、どうしたんだっけ?記憶がないわ。


 覚えているのは、誰かの鼓動の音と温もり、その安心感。ああ、わたし、その人の腕の中で寝てしまったのかしら。











「……リーナ、どうしたの?」

「え?」

「いきなり黙り込むんですもの」

「ごめんなさい」

「いいのよ、疲れているのよね。ゆっくり休みなさいな」


 そう言って部屋を出ようとするお母様に、最後に一つ聞いた。


「お母様、わたしはいつから学院に戻れるのでしょうか」


 それを聞いて振り返ったお母様は、曖昧に微笑んだ。


「リーナが元気になったらかしらね」


 それだけ言うと、お母様は静かに出て行った。











「ねえアイリス、お母様の言葉、どう思う?」


 横にいたアイリスに聞こうとそちらを向くと、その姿はもうなかった。


「アイリス……?」


 部屋を見回しても見つからない。もう、仕方ないわ。少し一人で考えるわ。


 わたしが元気になったら、学院に戻れる?それは、誰として?


 アイリーナは来年からだとお父様が言ってたわ。それまで後三ヶ月くらい。その間はミレイルとして通うのかしら?


 いいえ、シリウス達にバレてしまった今、それはもう意味のない事だわ。


 だって、わたしを目立たないようにするために、わざわざあの三人に言わないで通っていたんですもの。


 いくら見た目を誤魔化したって、すぐに学院中に知れ渡るでしょうね。王子様達とずっと一緒にいる、平民の子がいると。


 アイリーナとして通っても、ヴィレヒトという問題があるわ。元はと言えば彼に見つからないために平民を装っていたわけだし。あら?それなら、来年もアイリーナとして通ったらいけないのでは?











「……もう分かんないわ」


 色々考えて、わたしは頭が痛くなってきた。どちらにせよ、学院はしばらく休む事になりそうね。


 だったら、魔術の本を読もうと思った。もっと様々な魔術を使えれば、万が一再び今回みたいな事があっても倒しやすいはずだわ。


浮遊(フローサ)』で本をとろうとして、手を向けた。しかし、魔術が発動しない。えっ嘘、わたし本当に何も出来ないわ!


 その上、頭を揺さぶられるような感覚がする。頭を押さえてそれに耐えながら人を呼ぶ。











「どう致しましたか」

「うう、ミル、お母様を呼んでもらえるかしら?」

「はい、かしこまりました」


 ミルに頼んでわたしは横になった。少ししてお母様が急いでやって来た。


「リーナ、どうしたの?」

「お母様、魔術を使おうとしたら頭がクラっとしたのですが」

「まあ、大変」


 お母様がわたしの頭に手を当てた。冷たくて気持ちいいわ。お母様が慌てる。


「なんて事、ひどい熱だわ!」


 あっという間に頭に冷たいタオルが置かれた。その冷たさと、部屋の香りですっかり落ち着いていたわたしは、気がつけば眠り込んでいた。


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