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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
35/125

27-I 助けに来た三人

「ああ、リリー、会いたかったっ!」


 シリウスが飛びついてくる。あっという間に抱きつかれた。あまりの事に身動きも出来なかった。まさか、どうしてここが分かったの?


「シル、どうして……」

「探したよ。閉じ込めたとか言われたから、結構焦った」

「えっ?だ、誰に?」

「クレノール男爵令嬢に決まってるだろ」


 平然とそう言って、わたしの首筋に顔を埋める。ユリアンナ様に言われた…?でも、あの時わたしはミレイルで………えっ、まさか、わたしが平民として学院に通ってたの、ばれてる?


「ね、ねえシル、」

「シル、どうだった?」


 ばれてるかどうか聞こうとした時、ドアの方から声がした。シリウスを少し離して声の方を向く。ああ、この声、わたしはちゃんと帰れるのね。


「ネル、ディル……」

「!?」

「リリー!」


 ノエルとディランがドアの所に立っていた。わたしが声をかけると、すぐさま駆け寄ってきて、順番に抱きしめられた。


 三人とも、暖かいわ。その温もりで、ずっと緊張していた心が解かれていく。わたし、皆の所に、帰れるわ。


「……ふぇぇ、怖かったよぉ」


 安心したら、涙が出てきて止まらなくなった。体がぼろぼろになるまで、一人で合成魔獣と戦っていた恐怖が、溢れ出した。


「リリー、大丈夫?」

「ねえ、リリーその格好……」


 シリウスが聞いてきたその時、後ろのドアの向こうから物音がした。ビクリと体が反応し、恐怖で思わず近くにいたノエルに抱きついた。


「なっ、リリー?何があった?」

「うぇぇぇん、真っ暗で、誰もいなくてっ、なのに……」


 それ以上何も言えなくて、ただドアを指した。ノエルが優しく背中をとんとんと叩いてくれる。わたしはその胸に顔を埋めた。ノエルの少し速い鼓動が聞こえて来る。高めの体温も、ちょうど気持ちいい。


 大分落ち着いてきて、ちょっと顔を上げてノエルを見ると、頬をほんのり赤く染めて、少し目を大きくしていた。











「じゃあ、開けるよ」

「ああ」


 シリウスがドアを開ける。その奥のものを思い出して、ノエルに強くしがみついた。()()を見たノエルが、しっかりとわたしを抱きしめた。片手で頭を軽く押さえられる。


「リリーは見ない方がいい」


 ありがとうノエル、ちなみにそれを倒したのはわたしよ。とっても強くて怖かったわ。


 わたしは大人しくノエルに抱かれていた。


「なっ、な、何だこれは」

「ドラゴン……?」


 シリウスとディランが驚いて一歩引く音が聞こえる。そのまま少し誰も動かなかった。











 ノエルがそっとわたしを離す。心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。


「リリー、もう大丈夫?」

「うん、ありがとう」


 そこに、控えめにシリウスが質問してきた。


「ねえリリー、あれ何か知ってる?」

「あれ、合成魔獣よ。禁術にされてる、『魔獣(モンスル)合体(クルバイン)』でドラゴンの形にされたみたい。そこの本の研究結果らしいわ」

「何だって!?」

「『魔獣(モンスル)合体(クルバイン)』だと……」











 しばらくして、シリウスが何かに気づいたように聞いてきた。


「まさか、リリー、あれ倒したの?」

「うん、そうだよ」

「な、まさか!」

「だって、そうじゃなきゃこの状況が説明出来ない」

「それはまあ、確かに」


 三人が見つめてくる。その瞳には安堵と不安の色が滲んでいた。


「リリー、無茶するなよ……」

「よ、良かった……」

「死なないでっ」

「ご、ごめんなさい……」


 でも、仕方ないじゃない?外には出られず、かといって放っておけなかったんだもの。でも、やっぱり。


「ものすごく怖かったわ……」

「もう、体も制服もぼろぼろにしてまで、一人で頑張って。リリーが魔力使い果たすなんて、相当だよ」


 それは思うわ。ここまで疲れたのは初めてよ。……あれ、制服をぼろぼろに……?


 ハッとして三人を見上げる。やっぱり気づかれたかしら?


「ところでリリー、どうして()()()()()()()()()()()のかな?」


 ノエルがにやりとしながら聞いてきた。シリウスも追い打ちをかけてくる。


「そうだな、僕が聞いたのは()()()()()()()()事だし」

「リリー、話してくれるよね?」


 ディランに優しく問い詰められ、わたしは折れた。



「は、話すから、ここから出よう……?」

「あ、ごめん…」

「そうだね、合成魔獣の事を学院長様に伝えないとね」

「リリーも一緒にな」


 わたしは頷く。だけど、ちょっと待って。


「わたし、動けないの……」

「え?」


 きょとんとする三人にもう一度言った。


「わたし、魔力切れで動けないわ」

「そうだろうな。……あ」

「僕が連れて行こうか?」

「いいの?じゃあディル、お願い」


 連れて行ってくれると言うディランに抱きかかえられて、やっと部屋を出た。シリウスとノエルは一瞬呆然としてから、慌てて追いかけてきた。











 階段を上がって外に出る。わたしがユリアンナ様に連れて来られた時はまだ明るかったのに、今は日が落ちて薄暗い。それが、逆にわたし達を目立たなくしてくれた。


 ともかく、やっと外に出られたわ!少し周りを見ようとして落ちそうになり、慌ててディランにつかまった。ディランが苦笑いする。


「リリー、危ないからじっとしててな」

「うん、ごめんね」


 落ちないようにしっかりディランにつかまり、少し寄りかかるように体を預ける。ディランの体温と揺れが心地よくて、わたしは目を閉じた。





















「リリー、起きて。着いたよ」

「……んっ、ふにゃぁ」


 肩を優しく揺さぶられて、欠伸をしながら目を開ける。優しく微笑むディランと目が合った。


「うにゃ、おはよう」

「おはよう。体の方は大丈夫?」


 聞かれて、体が少し軽くなった事に気づいた。


「うん、少し楽になったわ。ディル、ありがとう」

「それは良かった」


 ゆっくりとわたしを下ろしてくれた。そして、四人でドアに向かい合う。シリウスがドアを叩いた。


「失礼します、シリウス·サン·アイルクスです。入ってもよろしいですか」

「どうぞ」


 ドアを開け、シリウスを先頭に部屋に入る。わたしも、深呼吸してシリウス達に続いた。

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