3.宰相の心配と決断
短めです。一応第三者目線です。
「アイリーナが、襲われた…」
孫を殺されかけたクリストファー宰相は、さすがに呆然としていた。その隣ではゲオルグ国王が苦い顔をしていた。
「……それもそうだが、問題は、ヴァイス公爵だ。テオドールによれば、気がついた時にはいなかった、と。ならば、やつはどこに?」
「ああ、そうだな。……ふむ。やつが行きそうな所は探させるが…」
「…無駄だろうな」
苦笑いした国王は、しかし、宰相の次の言葉に固まった。
「この件は、内密にしてほしい」
「なっ、なんだと?内密になどしたら、やつは野放しだ、そんなことは出来ない」
「やつの爵位を剥奪出来るくらいの証拠はある。今までテオドールにやらせていた結果だ」
「いつの間に…いや、なぜこんなことをする?わざわざそんな回りくどいことをしなくても、今回の件で極刑だ」
「傷ついて欲しくないんだ」
「なに…?」
思わず横を見た国王は、宰相が辛そうな表情を浮かべているのに気づいて、口をつぐんだ。
「幼い頃の私と同じ目にあわせたくない。アイリーナがやつを退けたと噂になれば、ただでさえやつに殺されかけたというのに、それを何度も思い出させることになる」
「…そうか」
宰相には五歳頃のトラウマのせいで、長い間心を閉ざしていた、という過去がある。アイリーナは二歳。宰相の心配は当然といえた。
「…わかった、彼らは表向き病気の療養ということにしよう」
「ありがとうございます、陛下」
「あとはヴァイス公爵だが…ヴァイス公爵家を取り潰すことにしよう。テオドールのおかげだな」
「だが、まだ油断はできないな」
数日後、ヴァイス公爵家の取り潰しが発表された。長い間ヴァイス公爵の影におびえながら暮らしていた人々は、差し迫った危機から逃れたことに歓喜した。
彼らはまさしく生きる希望をもたらした、宰相であるセイレンベルク公爵と、その息子を讃え、国中でお祭り騒ぎとなった。
しばらくして発表されたテオドール一家の療養は、国民を大いに心配させたが、ヴァイス公爵と関連づける者はいなかった。
某有名ファンタジーとかなり似通った出だしですが………
時間を見てストーリーは変えずに順次改稿していくつもりです。
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