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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
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23-I 平民の扱い?

 その日から、わたしに対する嫌がらせがひどくなった。廊下でレテフィア様やユリアンナ様とすれ違えば、土や水をかけられる、足を引っかけられる。


 わたしの持ち物も、水浸しになったりズタズタに切り裂かれていたり。わたしはその全てをこっそり魔術で元通りにした。そして平然としているわたしに、また嫌がらせをして来る。


 だけど、わたしは何とも思っていない。全部大した事ないのよ。攪乱一部解除でどうとでもなるくらい。あんなので嫌がらせしているつもりかしら。初めこそその態度に驚いたものの、慣れてしまえばなんて事ないわ。






















 そうして半年程経ったある日。階段の上で、レテフィア様と出会った。いつも通りお辞儀して通り過ぎようとしたら、手を引かれた。


「目障りよ、消えてしまいなさい」


 耳元で囁かれる。意味がわからずに混乱するわたしは、勢いよく突き飛ばされた。体が傾いていく。えっ?ま、まずいわ、どうしよう!咄嗟に土壁を出したが、わたしを支えきれずに崩れる。解除しないと何も出来ない、けどここにはたくさんの人が……


 一瞬の後、全身に衝撃が来た。思わず呻く。その勢いのままわたしは階段を転げ落ちた。痛みに耐えながら立とうとする。しかし、目の前に誰かが立った。


「そうよ、そうやって這いつくばってればいいのよ」


 ユリアンナ様はそう言うと同時に光を放ち、目をつぶったわたしは水に呑まれた。ああ、意識が遠くなっていく──





















 気がつくと、真っ白い世界。眩しくて目を瞬かせる。しばらくすると、明るさに慣れてきた。わたし、どうしてこんな所にいるのかしら?


「気がついた?」


 声の方に目を向ける。そこには、レシーナとテルアが座っていた。


「レシーナ、テルア……ここは?」

「保健室よ。覚えてない?」


 言われて思い出す。そうだわ、わたしレテフィア様に階段から突き落とされたんだわ。その後、ユリアンナ様に水をかけられて……


「あの二人、どうなったの?」

「学院長様に呼び出されたよ」

「ミレイルも後で話を聞くって」


 お祖父様……迷惑かけてごめんなさい。


「そんな事より、ミレイルが無事で良かったぁ!」

「心配したんだから!」


 二人が抱きしめてきた。温もりが暖かいわ。水をかけられたのとは大違いね。


 気がつけば、わたしも二人と一緒に泣いていた。その日はそのまま部屋に戻り、眠りについた。











 次の日。わたしは学院長室に向かった。ドアを叩く。


「失礼致します、ミレイル·エンジュです」

「入りなさい」


 ドアを開け、一礼して部屋に入る。ドアを閉めてお祖父様の目の前まで行く。


「そこに座りなさい」


 言われた通りに座る。お祖父様はわたしを見つめると、徐に呪文を唱えた。


「『防音(サウンドプ)結界(ル·シールド)』」


 そして頷くと、質問してきた。


「アイリーナ、一体何があった」

「えっ、お祖父様?」

「ああ、防音したから大丈夫だ。それより、何があったか教えてくれ。昨日からテオドールがうるさいんだ」

「お父様……」


 わたしはお祖父様に昨日あった事を話した。聞き終わったお祖父様は頭を押さえた。


「それは前からか?」

「いえ、階段から突き落とされたのは初めてですわ」

()()()()()()()()()?って事は、他に何かされてたのか?」

「まあ、すれ違ったら水や土をかけられたり、持ち物を壊されたりですわね。嫌がらせにもなってませんでしたけど」

「アイリーナ、それを嫌がらせと言うんだ……」


 お祖父様に呆れられてしまったわ。だけど、何とも思っていなかったからいいんじゃないの?


「それでな、あの二人の処分なんだが……」

「一時休学で十分だと思いますわ」

「アイリーナ、それでいいのか?」

「ええ。ちょっと攪乱を解除すれば何とでもなりましたから」

「分かった。それと、後でテオドールに連絡してやれ、ずっと心配してるからな」

「はい」


 わたしが頷くと、お祖父様は微笑み、結界を解除した。


「ミレイル、もう良いぞ」

「学院長様、ありがとうございました」


 一礼して部屋を出る。大きく息をつくと、歩き出した。平民ミレイルとして。











 寮に戻り、部屋に入る。もうお昼だわ。午後の授業の準備をしてから、お父様に連絡するのに伝鳥(フォナー)を使う。お父様、心配かけてしまってごめんなさい。わたしは元気で暮らしてますわ。


 伝鳥(フォナー)をお父様のもとに飛ばし、食堂へ向かう。











 食堂に入ってすぐにレシーナ達を見つけ、手を振った。レシーナが驚いている。


「遅くなっちゃった」

「ミ、ミレイル、もう大丈夫なの?」

「うん。学院長様とも話してきたよ」

「ま、まあ、ミレイルが大丈夫って言うなら大丈夫か」


 昼食を食べて、三人で午後の授業に行く。もうすっかりいつも通りね。











 しかし、午後の授業、地属性魔術の授業に顔を出した途端、その場にいた全員の視線を受けた気がした。レテフィア様はいなかった。その内の一人が近づいてくる。


「あの、階段から落ちたって聞いたんだけど……」

「そうだよ」

「もう戻ってきて大丈夫なのか?」


 口々に聞かれる。わたしは頷いて、大丈夫と言いながら訓練室の真ん中、先生の所まで行った。


「ご迷惑かけてごめんなさい」

「いや、それより本当にもう良いのか?」


 先生にも言われた。そんなに心配かしら?わたし、もう元気いっぱいよ。











「本日は中級魔術、『成長(グレイア)』を教える」


 やっとね。今までずっと初級魔術だったから、少しつまらなかったの。


 生徒それぞれに一つ植木鉢が配られた。小さな苗が植えてある。


「……では、その苗を成長させなさい」


 先生が締めくくると、皆一斉に取りかかる。もちろん、わたしも。最近は、少ない今の魔力量でも、ある程度の魔術は使えるの。そう言っても習った初級魔術しか使えないから、咄嗟の時はあまり役に立たないけれど。


 目の前の苗に集中して、呪文を唱える。すると、苗が少し動いた。これは、上手くいく時の動きだわ。ちょっと微笑んでさらに魔力を込める。苗は、ゆっくりながらもしっかりと成長した。











 授業が終わって部屋に戻ると、どこからか鳥が飛んできた。お父様の伝鳥(フォナー)だわ。手を差し伸べる。


『リーナ、良かった、無事なんだな!何も出来なくてごめんな。次そんな事があったら、容赦なく解除していいから。怪我だけはもうしないでくれ』


 お父様、心配かけてしまってごめんなさい。その優しさにまた涙があふれた。


 それから一ヶ月、何事もなく平穏無事に過ごした。

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