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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第2章 しろねこ姫の学院入学
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17-I 初めての戦い

 まずは、『防壁(バリアル)』で防御する。続けて、シリウスとノエルが魔術を放つ。


「『風刃(ウィンドエッジ)』」

「『水砲(アクアキャノン)』」


 風の刃はモンスターを切り裂き、水の勢いがモンスターを吹き飛ばす。わたしは一瞬怯んだ。まだ距離があるとはいえ、モンスターが切り裂かれたのよ、さすがに心臓に悪いわ。横にいたディランがそっと手を握ってくれた。


「リリー、大丈夫?」


 その手の温もりで徐々に落ち着いてきた。うん、相手はモンスター。倒さなきゃいけない。


「ありがとうディル、落ち着けたわ」

「良かった」


 ディランは少し笑うと、剣を抜いてモンスターに切りかかる。魔術を習っているとはいえ、ディランは騎士になる訓練もしている。そして、シリウスも。


「『氷剣(アイスブレード)』。シル!これ使って!」


 わたしは氷で剣を作り出し、シリウスに渡した。受け取ったシリウスはディランと共に敵を切っていく。わたしはノエルの方を見た。


「僕らは手助けだな。『水泡(バブル)』」

「そうね。だけど、容赦はしないわ。『電撃(スパーク)』」


 ノエルが作り出した泡で敵の動きを遅くしようとする。わたしも、一体ずつ確実に倒していく。その時、モンスターの攻撃を受けきれなかったシリウスが飛ばされた。


「シル!『浮遊(フローサ)』!」


 ノエルが慌てて浮遊をかけ、シリウスを受け止めた。少し怪我している。


「大変、『治癒(キュアヒーリス)』」


 魔術で傷を癒してシリウスを見つめる。ディランも退いてきた。











「大丈夫?」

「ああ、ありがとう。だが、もう少しモンスターの動きを遅く出来ないか?」

「泡は使ってるんだけど……」


 どうしようか。考えている間にも、モンスターはどんどんやってくる。ああもう、時間を止めたいわ!……止める?そういえば……


「麻痺させてみる?」

「耐性ないかな?」

「見てみよう、『解析(アナリス)』………耐性はないよ」

「じゃあそれで行こう!」

「でも、一体ずつだよね……」


 相談しながらも攻撃は止めない。ノエルが片っ端から水で吹き飛ばしていく。しかし、すぐに立ち直ってやってくる。切りがない。近くの一体が泡に触れ、泡が弾けた。すぐにディランが切り倒す。


「泡……そうよ、泡だわ!」

「リリー、何か思いついた?」

「ええ、これでどうかしら?『水泡(バブル)』-麻痺(パラステューレ)付与(エンチャント)!」


 思いついたのは、泡に麻痺効果を上乗せすること。麻痺はその対象が一体のみ。しかし、麻痺を付与した泡なら?触れれば弾けるが、いくらでも作り出せるわ!


 わたしの作り出した泡がモンスターに触れる。途端、モンスターの動きが鈍くなった。


「リリー、よくやった!」

「ありがとう、戦いやすいよ!」


 そして再びモンスターに切りかかる。ノエルも攻撃に転じた。


「僕も攻撃するか。『泡弾(バブルショット)』」


 作り出した泡をどんどん敵に撃つ。わたしが作った泡に触れたモンスターが動きを遅くし、シリウスとディランが切り飛ばす。わたしも『氷矢(アイスアロー)』で加勢する。次々に敵を倒し、そろそろ半分かという時。それは現れた。











「シル、ディル、大丈夫?」

「ああ、あと半分か?」

「そのくらいならいけるよ!」


 二人に聞いた後、新たな氷矢をお見舞いしようとして、異変に気づいた。


「あれ?何か後ろの方静かじゃない?」

「本当だ。何でだ……っ!?」


 ノエルが息を呑む。その視線の先には……


「っ!?シル、ディル、退いて!」

「えっ?」

「なっ、オーク!?」


 そこにいたのは、わたし達の倍はありそうなオーク。一旦作戦を立てる。


「オークか。僕ら四人全員でかかって行くしかないかな」

「そうだな。だが、周りのモンスターは……」

「全滅させないと危ないな」

「だったらわたしがやってもいい?」


 皆が頷く。それを確認して、呪文を唱える。


「『炎弾(ファイアバーレ)』」


 飛んでいった弾は、モンスターに当たると弾け、周りも巻き込んだ。続けて。


「『竜巻-刃(サイクロン-エッジ)』」


 竜巻に風刃を組み合わせ、中の敵を切り刻む。燃えている敵を巻き込むと、炎の勢いが増した。竜巻を移動させ、その炎と刃でモンスターを圧倒した。


「リリー、相変わらずすごいな」

「最初からこれで良かったんじゃ?」

「それじゃ勉強にならないわ」


 ディランがふてくされている。後ろでは、騎士達がざわめいている。しかし、今はそれよりもオーク。


「上からの攻撃を気をつけないと」

「足もだな」

「『解析(アナリス)』………うん、耐性はないけどこれといった弱点もないな」

「凍らせる?」


 それに固まる皆。シリウスが苦笑いした。


「リリー、オークを丸ごと凍らせるのか?」

「いくらリリーでもそれはなあ」


 皆が勝手にいろいろ言う。さすがにそんなことはしないわよ。出来ると思うけど……


「そうじゃなくて、足だけよ」

「なるほど、それは良いかも」


 ノエルが賛成する。シリウスとディランも頷く。よし、決まったら早速実行ね!


「『凍結(フリジナム)』」


 オークの足を狙って魔術を使う。オークはその場から動けなくなった。その代わり、腕を振り回す。これは予想してなかったわ。


「あー、危ないわね、『麻痺(パラステューレ)』」


 仕方なしに麻痺させる。動きは遅くなったが、相変わらず危ない。そこを、ノエルとシリウスが魔術で攻撃する。腕を切られ、水砲を頭に受けたオークは、足が凍っているためにそのまま後ろに傾く。振り回す腕もなくただ倒れるオークを、ディランが真っ二つにした。











 驚嘆の声があがった。振り向くと、騎士達とカリオン様、ディルクーフェン様が呆然としている。わたしはカリオン様に近づいて笑顔で報告する。


「先生、モンスター殲滅しました!」

「リリー、皆びっくりしてるから!」


 ノエルに止められる。きょとんとして首を傾げると、ノエルが苦笑いしながら手を頭に乗せた。


「僕らの強さにびっくりしてるんだよ」

「そうなの?」


 シリウスとディランにも聞いてみる。二人はちょっとむっとしながら答えた。


「たぶんな」

「ああ」


 そしてノエルの方を向く。


「「ネル、ずるいぞ!」」

「ああ、ごめん」


 ノエルはちょっと笑うと手を離した。そのまま三人で言い合いを始める。その間にカリオン様が口を開く。


「アイリーナ、今の、本気か?」

「いいえ、ちょっと手を抜きました」


 その言葉にどよめく騎士達。カリオン様は頭を押さえてため息をついた。


「アイリーナ、本気でわたしに攻撃してみろ」

「いいんですか?」

「ああ。『防御(プロテクショ)結界(ン·シールド)』」


 わたしは深呼吸してカリオン様に向き合った。


「いきます!『陽光(ソーライサー)』!」


 全力で攻撃する。使ったのは、光属性の中級魔術、『陽光(ソーライサー)』。天から一筋の光が降り注ぐ技なの。


 周りの人は、皆ただそれを見つめる。だけどこれだけじゃないわ。


「『竜巻-刃(サイクロン-エッジ)』、『炎弾(ファイアバーレ)』」


 さっきの炎の竜巻を再現する。カリオン様を飲み込んだ。全力だからね、もう一つ使いましょ。


「『地揺れ(アースウェイア)』!」


 範囲攻撃する、地属性上級魔術を放った。カリオン様以外に当てないように気をつける。しばらくして、竜巻を止めた。


 中からカリオン様が無傷で出てくる。そうよね、『防御(プロテクショ)結界(ン·シールド)』は生活最上級魔術。傷つくわけがないわ。わたしの狙いはね、今この瞬間。


「『麻痺(パラステューレ)』」


 呟くように唱え、油断して結界を解除したカリオン様に向ける。


「これが全りょ……っ!?」


 まともに麻痺を食らったカリオン様が結界を作り出す前に、水球を飛ばした。











「……リリー、やりすぎ……」

「うん、先生びしょ濡れだよ」

「だって全力でって言われたんだもの」


 いつの間にか側にいた二人に言われてわたしは頬を膨らませた。


「それより、先生治してあげなよ。麻痺させてるでしょ」

「そうだね。『快癒(リスキュール)』」


 シリウスに言われて、光属性中級魔術、『快癒(リスキュール)』でカリオン様の麻痺を治す。水属性中級魔術の『治癒(キュアヒーリス)』は怪我にしか効果がないけど、これは状態異常まで治すの。


 復活したカリオン様は、わたしを見つめてきた。


「制限しててこれか……」

「ごめんなさい、やりすぎましたか?」


 わたしは謝った。カリオン様の元気が無いように見える。


「いや、大丈夫だ。しかし、威力が半端ないな」


 そうしてレッスンを終えた。

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