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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第1章 しろねこ姫の幼少期
20/125

14α-S 王子、初めての……

番外編です

14 魔術のレッスンのシリウス視点です。


 ずっと今日が待ち遠しかった。新年祭の時に会ってから、寝ても覚めてもあの時の()使()──アイリーナのことが頭から離れない。その様子を見ていた母上はずっとニコニコしていた。そして聞いてきた。


「ねえシリウス、誰のことを考えているのかしら?」

「はい母上、新年祭の時に会った女の子のことです」


 そしてずっと頭から離れないことも話した。それを聞いた母上は少し考えて、もう一つ聞いてくる。


「その子をとられたらどう思うかしら」


 アイリーナをとられる?そんなこと、考えられない。考えたくない。僕はかぶりを振った。


「いやです。とられたくない」

「あらまあ。ふふ」


 母上は何かに気づいたようだったが、それ以上何も言ってくれなかった。





















 ノエルと待ち合わせて、カリオン殿のいる部屋に向かう。昨日、レッスン中は先生と呼ぶこと、敬語も使うこと、自分は敬語は使わないことをカリオン殿に言われた。


 部屋の前についた。僕とノエルは気を引きしめる。そしてドアを開けた。


「『発光(フラッシュ)』」


 なぜか泡が浮かんでいるその部屋は、色とりどりに輝いた。あまりの出来ごとに言葉も出ない。魔術を使ったらしき女の子が振り返る。そして微笑んだ。


「こんな感じでしょうか」


 まだ泡できらめく部屋の中、僕はその子──アイリーナにくぎ付けになった。目が合う。アイリーナが首を傾げた。とたん、凍りついたように動けなくなった。胸の奥が熱くなる。


 見ている間に、アイリーナは部屋を見回すと、はっとして泡を一斉に弾けさせた。そしてようやく僕たちに気がついたカリオン殿が紹介してくれて、自己紹介する。


 ぼうっとしていると、アイリーナがノエルに微笑んで話しかける。僕には話しかけてくれないの?もしかして僕が誰かわかってない?覚えてるか聞いてみたら。


「もちろん、覚えてます、殿下」


 敬語。それに殿下呼び。やだ、僕はもっと仲良くなりたいんだ。敬語はいらない、シリウスって呼んでと言うと、ノエルも乗ってきた。それを聞いてアイリーナがとびきりの笑顔を浮かべる。僕は息を飲んだ。かわいすぎる!


 咳払いが聞こえて、あわててわれに返る。そして、声をそろえて言った。


「「「よろしくお願いします、カリオン先生」」」











「これを、初めから十ページ読みなさい」


 カリオン殿に渡された教科書を見る。そしてアイリーナを見た。隣に座ろうとしたら、ノエルがじゃましてきた。ちょっと言い合っているうちに、そこには白猫が座ってしまった。しょんぼりしながらソファーに座って教科書を開いた。











「魔術は、剣や弓矢と同じように、モンスターを倒すことにも使われる。もちろん、生活にも使われているが、危険だということは頭に置いといてくれ」


 それはわかってる。父上にさんざん言われてるからな。


「だったら実践だ。その前に、シリウス、こっちへ」


 僕は言われるまま手を水晶玉に置いた。水晶玉が輝きだす。青。そして緑に変わると、輝きを増した。カリオン様が頷く。


「もういいぞ。それでは、全員が使えるのは生活魔術、それと水属性か。これから始めよう」











「まず覚えてもらうのは『防壁(バリアル)』だ。自分を守ってくれる、生活魔術の初級のやつだ。アイリーナ、攻撃してみてくれ」


 アイリーナが泡をカリオン殿に向かって飛ばした。アイリーナ、もうそんなに魔術使えるのか。僕も負けてられない。


 練習しろと言ったのを聞いて、僕も練習する。しかし、上手くいかない。アイリーナもノエルも合格して、僕だけ残ってしまった。あせっていると、飛んでくる泡に気づいてあわてて呪文を唱える。


「『防壁(バリアル)』っ」


 何とか泡を防ぐと、アイリーナに何で泡を飛ばしたのか聞いた。すると。


「でも、魔術使えたでしょ?」


 え?あ、そういえば確かに。ってことは僕が上手く魔術を使えるように、わざと?アイリーナの微笑みを見て思った。


「シリウスも合格だ。次の魔術にいくぞ」











 少しすると、祖父上が現れた。


「……ふむ。だったら手伝うか」











 そして今。カリオン殿といっしょに攻撃してくる。


「「「『防壁(バリアル)』!」」」


 大量に飛んでくる風の刃と氷の矢を、難なく全部弾き飛ばした。ところが。祖父上がとんでもないことを言いだした。


「もっと本気で攻撃してみろ。私たちの防壁に傷がついたらお前達の勝ちだ」

「「「はいっ!」」」

「おいゲオルグ、そんな無茶な」


 うん、これは無茶だ。さすがに少し前まで国王だった人の防御が弱いわけがない。だけど。アイリーナ、ノエルと目を合わせた時、出来るかもしれない、そう感じた。しかし。


「どうした?そんなものか?」


 さすがに一筋縄じゃいかない。でも俄然やる気が出てきた。アイリーナを見ると、その瞳は水色に輝く。


「『氷矢(アイスアロー)』、『風刃(ウィンドエッジ)』、『突風(ハイウィンド)』っ!」

「『水球(アクアボール)』!」

「『水泡(バブル)』っ」


 アイリーナがカリオン殿と祖父上の使った魔術をそっくりお返しした。僕は水球を小さくして防壁を貫こうと考えた。そして、見事にヒビを入れた。やった!三人で喜び合う。そこに、カリオン殿がケーキを持ってきた。


「おいしい」


 微笑むアイリーナ。猫を抱き上げて撫でている姿はとても温かかった。抱きしめたいとそう思った。


 そして、ようやく気づく。


(僕、アイリーナのこと……)

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