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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第6章 しろねこ姫の生徒会活動
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94-I 二日目の後半に

 今日のシリウスはおかしい。いつもなら優しく笑いかけてくれるのに、何やら考え込んでいたり、ため息をついたりしている。それも、色々な所を回るにつれてその頻度が高くなってきた。


 もしかして、疲れてるのかしら?わたし、シリウスに無理させてる?


 そっと横を窺うと、シリウスはまたしても考え込んでいた。ごめんね、わたしに無理に付き合わせて。疲れている事に気が付かないで。


 声をかけて、近くのベンチに座らせてから、わたしはその場を離れた。向かったのは、飲み物を売っている屋台。


「すみません、ハーブティーありますか?」

「ありますよ、少しお待ちください」

「あっ、それに……」


 少し細かく注文すると、店員さんは快く作ってくれた。頼んだのはハチミツ入りハーブティー。甘さと香りで疲れを癒してくれるはずだわ。


「ありがとうございます」


 時間がかかってしまったけれど、シリウスは大丈夫かしら。少し急ぎながら戻ると、まだ考え事をしていた。


「ごめんね、わたしのわがままに付き合わせちゃって」

「……ぃりゃっ!?」


 俯いて手元を見ていたシリウスに声をかけると、シリウスは謎の声を発してばっと顔を上げた。頼りになるシリウスが、こんなに疲れるなんて、悪い事をしたわ。


 それ以上驚かせないように、そっとハーブティーを渡して隣に座った。


「ハーブティーよ。疲れを癒す効果があるらしいの。今までずっと歩き回っていて疲れたのでしょう?わがまま過ぎたわ、ごめんね」

「い、いや、大丈夫」


 いいえ、大丈夫なわけないわ。何というか、心ここに在らずという感じがするわ。ぼうっとしながらもハーブティーを飲んだシリウスは、美味しいと言いながら微笑んだ。そのいつもの顔、いつもの表情を見て安心した。良かった、ハーブティー効いたみたいね。


 そう言うと、シリウスが不思議そうに聞き返してくる。あら、無意識だったのかしら?


「だって、いつも楽しそうに笑ってるシルが、今日は疲れてるような、辛そうな表情を浮かべてたもの。何かあったのかと心配したのよ?」


 念のためにシリウスの顔を覗き込んで見た。まだ完全には疲れは取れていなさそうだけれど、それでも今日の今までよりはずっと良くなったわ。


 安心して顔を離そうとすると、シリウスが手を伸ばして頬を撫でてきた。優しく、もはや触られているのかも分からないくらいの強さで撫でられて、擽ったさに少し笑う。


「ごめんね心配かけて。リリーのおかげですっきりした」


 シリウスはすっきりした顔でそう言って少し俯いた。次に顔を上げた時には、真剣な眼差しがわたしを見つめてきていた。


 この表情、前にどこかで……


「……好きだよ、リリー」


 シリウスの表情に気を取られて、一瞬シリウスが何を言ったか理解出来なかった。その言葉の意味を理解すると同時にまさかという思いが頭をよぎる。


 わたし達は婚約者同士とはいえ政略結婚、きっとシリウスはわたしの事を仲の良い令嬢くらいに思っているはず。それに……ああ、思い出したわ。シリウスのこの表情、婚約を申し込まれた時のあの表情と同じだわ。だとしたら、今の発言は、『(友達として)好きだよ』という事よね?


「……ありがとう。わたしも、シルの事好きよ」


 五歳からずっと一緒にいるのよ、シリウスもノエルも、ディランも大好きな幼なじみだわ。そんなシリウスに、わたしはそのままで良いと言われた気がして嬉しかった。


 次の瞬間には、嬉しそうに笑ったシリウスに抱き寄せられる。そのまま温かいシリウスに身を任せたい、けれど今日はわたしのわがままでシリウスを困らせてしまったわ。


 でも、そうよ、疲れているのならわたしの魔力をあげなくちゃ。それに、シリウスも離してくれそうにないわ。ああ、けれどわがままは……


 結局、わたしは誘惑に負けて暫くシリウスの温もりに包まれていた。




















「まあ、それは本当ですのね!?」

「えっ、ええ、そうよ」


 きゃあきゃあと、しかし控えめに騒ぐシャルロッテとフローラ。ここはわたしの部屋だから静かにしているのであって、もし外だったら大騒ぎしていたに違いないわ。


「そ、それでっ、アイリーナ様は何と返したんですの?」

「『わたしも好きよ』と言ったわ」


 再び騒ぎ出す二人。ええと、どうして今日の話をしただけでそこまで騒ぐのかしら。好きと言われたのは初めてだけれど、あれは友達としてであって、そんな反応をする程ではないわ。


 大分落ち着いてきた頃に、シャルロッテが遠くを見る目をした。


「羨ましい……」

「あら、シャルロッテも、もちろんフローラも好きよ。友達ですもの」

「いえ、そういう事ではなく……」

「え?違うのかしら?」

「ですから……」

「アイリーナ様、わたし達とシリウス様は一緒では…」

「一緒よ?どちらも友達として好きだと言ったのよ」


 寧ろどうして一緒にしないのかしら。シリウスがわたしに友達以上の思いを持っているなんて、まさかそんな事はないわよ。


「で、ですが……いつもあのような瞳で……抱きしめられて…」

「ええ、()()()ね。昔から、それこそ出会った頃からずっとそうよ?だからあれがシリウス様の普通でしょう?」


 戸惑っているシャルロッテに逆に問いかける。いつも優しく笑っているのがシリウスだから。だから、今日のシリウスの異変に気がついたわけなのよ。


 しかし、それを肯定するどころか、二人は顔を見合わせて意味ありげに苦笑いした。


「あそこまで分かりやすいのに……」

「アイリーナ様らしいですわね……」


 何の事かしら?……というか、今のところわたしの話しかしてないわ。二人はどうだったのかしら。


「ねえ、シャルロッテとフローラは、今日は楽しめたかしら?」


 昨日はわたしのわがままで色々任せてしまったから、あまり楽しめなかったのではないかしら。現に今日のシリウスだってかなり疲れていたわ。最後は嬉しそうだったけれど。


 二人で小さく呟きあっていたシャルロッテ達は、キョトンとしてわたしを見た。


「何言ってるんですか、今日も昨日も楽しかったに決まってますわ!」

「ええ、もう三年後が楽しみですわ」

「……ふふ、そうね、次の学院祭、本当に楽しみだわ」


 シャルロッテの答えを聞いて安心した。良かった、二人に無理させていたわけではなさそうだわ。だけどわがままは何とかしなければいけないわね。


 それに、学院祭は準備が大変だから、その分楽しさもひとしおね。ああ、早く三年経って欲しいわ。

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