1.世界の敵
初投稿です。文章を書くのは苦手なので、温かく見守っていただけると嬉しいです。投稿は不定期で更新するつもりです。
――ここは、魔法と剣の国、アイルクス王国。長い間平和だったこの国は、ある一人の男―ヴァイス公爵、別名『闇の邪王』―によって混乱の中にあった。しかし、何人もの人を殺したとされている彼は、決して証拠を残さなかった。よって国王でも打つ手がなく、日々頭を悩ませていた。
ある日、国王―ゲオルグ·サン·アイルクス―がいつものように執務室で頭痛の種に対応して、自分の無力さに思わずため息をつくと、
「―『闇の邪王』に対抗出来る子が生まれた」
「!?」
国王は驚いてあたりを見回したが、声の主は見つからず、しかし尚も声が響いてくる。
「かの者は未だ邪王の魔の手が伸びていない家に生まれた。何らかの印を持つだろう。かの者と純粋な仲間に祝福を―」
「女神、様……」
声が聞こえなくなっても、しばらく国王は呆然としていた。彼が我に返ったのは、書類を大量に抱えた宰相が入室してからだった。
「陛下、対応策を考えましたので確認を――陛下?」
「未だ邪王の魔の手が伸びていない家……」
「陛下―ゲオルグ!大丈夫か!?」
「印を持って―うん?クリスか、どうした?」
宰相ことクリストファー·フォン·セイレンベルク公爵は書類を机に置き、親友であるゲオルグ国王の肩をつかんで揺さぶった。
「いくつかの案件の解決策を考えて来たんだが…」
「おお、ぜひ聞かせてくれ」
「いや、この話は今度だ。疲れている頭には難しいだろう。それより、何があった?ゲオルグが呆然とするなんて珍しい」
「クリス…この話は内密に願うんだが…」
親友を信頼して話すことにしたゲオルグがそう前置きすると、クリストファーは周りに防音魔法をかけ、話を促した。
「つい先ほど、私に女神様のお告げがあった。『未だ邪王の魔の手が伸びていない家に、ある印を持つ、邪王に対抗出来る子が生まれた』と」
「邪王の魔の手が伸びていない家、か…」
「どこがあるだろうか?今や市井はもちろん、上位貴族でさえ奴にやられている」
「私に思いつくのは、この国の根本のアイルクス王家、我がセイレンベルク公爵家、代々魔導師長を務めるフォルティス公爵家、騎士団長のアークウェル侯爵家、確実なのはこの辺か」
「そうだな。確かにクリスのところ以外は孫が生まれている」
ゲオルグが納得したように頷くと、クリストファーが少し微笑みを浮かべた。
「ああ、それなんだが…実はつい先日私のところにも生まれたんだ、かわいい女の子が」
「なんと…めでたいことだ。うむ、そうだな。今度、子供たちを見に行こう。印がついていれば、間違いなくお告げにあった子だろう」