認識されない意識たち
2008年に書いた詩です
目の前にあるものしか見えない
世界はつくられた枠ぐみに侵される
名づけられ 囲まれ 細かく分かれ
その小さなひとつが全てを手に入れる
心を心と名づけて信じる
私を私と名づけて信じる
空を空と名づけて信じる
だが意識は永遠に心には届かない
その鼓動を意識できないように
この足もまた勝手に歩きだす
景色が見えて 記憶になり 思い出になる
認識される以前にあった感覚を捨てる
私が生まれてきたこと
私が生まれる前の感覚を捨てること
それは他人の痛み もう何も感じない
私をそっと抱きしめれば それはもう知らない人
いくつもの壁を通り抜ける
私 私たち 全ての世界たち
その間にあるものを捨てる
私をそっと抱きしめるように
心をそっと手にとるように
空にそっと溶けこむように
認識されることでなくなってしまう
その全てを解放して 引き戻す
そこから新しいものが見えない
絶望と 何かが見えそうな希望
認識できない影のなくなった光
机上に転がる痛みの陰翳 涙の欠片 その全部
それをどこから見ても
眺める以前の意識はもうここにはない