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プロローグ:魔道士と仲間達

「ご主人、私疲れちゃったぁ」


そんな事を言いながら、桃色の髪を腰のあたりまで伸ばした少女が背中にもたれかかってきた。


同時に伝わってくる柔らかい感触。それがいったい彼女の何なのか、それに気づくまでにはそれほど時間を必要とせず、俺は黙って振り返る。


「俺は男だ」

「うん?」

「胸を……それも、そんな爆弾級の胸を押し当てられるとだな、さすがに我慢するのも辛くなる」


真後ろに立っていたのは、男なら誰でも目を奪われてしまう程の美少女。いつも通り無表情なのでなんだか眠そうにも見えるこの少女は、背が高いわけではないけど雰囲気がエロい。


そして右目は前髪で隠れているが、それも彼女の魅力の一つと言えるだろう。


「ご主人、もしかしてムラムラしてる?」

「ああ、していますとも。アスモはすぐ密着してくるから非常に困る」


彼女の名はアスモ。とりあえず俺は不満そうに見てくるアスモから離れ、やれやれとため息を吐いた。


「レイン君ったら。あまり変なことを考えすぎると、突然の戦闘に対応できなくなるわよ?」

「いや待って、別に今は変なこと考えてないから」

「あら、今は……ね」


そんな俺に話しかけてきたのは、陽の光を浴びて美しく輝くブロンドの長髪が良く似合う美少女。


胸はアスモよりも更に大きく、彼女が動く度に揺れている。正直目のやり場に困るのだが、本人も結構気にしているらしいので何も言わないでおこう。


シスターの格好をしているこの少女は、このパーティ内のお姉さん的存在で、リエルという名の大事な仲間である。


そして、俺の名はレイン。この世界では珍しいと言われる黒髪黒目の健全な青年で、昔から愛用してきた杖が相棒の所謂〝魔道士〟というやつだ。


さて、そんな美少女達と共に行動している俺が羨ましいと思う人は、この世に一体何人いるだろうか。 残念ながら、ずっと一緒に行動していると、彼女達の性格に恐怖を感じるようになるんだよなぁ。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「ん〜、お腹空いたからソーセージでも食べよ」

「馬鹿野郎。誰のソーセージを食べようとしてるんだ」

「あんっ。今の、もう1回……」


休憩中、突然俺の下半身に顔を近づけてきたアスモの頭を軽く叩いたのだが、何故かアスモは頬を赤く染め、更にとても嬉しそうに俺を見つめてきた。


若干涎が垂れているのは気の所為だろうか───いいや、気の所為ではないので俺は急いでアスモから離れる。


「あらあら、痛い?痛いのね?大丈夫、すぐに回復魔法で癒してあげるからね」


避難先では、恐らく休憩していたリエルを襲ったと思われる大鬼オークが、ピクピク痙攣しながら彼女の前に倒れていた。


そんなオークをうっとりと見つめながら、リエルは聖母のような笑みを浮かべて回復魔法を唱える。


「ふふ、うふふふふ。でも、悪い子にはお仕置きしなきゃ。我慢してねぇ、うふふふふ……」


回復魔法で傷が消えたオークは、顔を青ざめさせながら急いでその場から逃げ出そうとしたのだが、リエルが手に持つ釘バット(・・・・)で思いっきり後頭部を殴られ、派手に転倒した。


飛び散った血がリエルの頬に付着する。しかし、気にせず彼女はオークの上にのしかかり、にっこり微笑んだまま何度も何度もオークを殴打し続けた。


そう、これが2人の恐ろしいところだ。アスモはどんな場所でも気にせずエロいことをする性格で、それに加えて超がつくほどのドMである。


先程のように叩いても逆に彼女を喜ばせるだけで、だからといって何もしなければ平気でズボンを脱がせたりしてくる。


そして、シスターのリエル。彼女が持ち歩いているのは釘バットだけではなく、ああやって魔物をボコボコにしては回復魔法を唱えて傷を癒し、再びボコボコにする。


スイッチが入ると俺が止めるまで何度もそれを繰り返す恐ろしい性格の持ち主、サイコシスターだ。


だがしかし、俺の旅の仲間はそんな性格に難アリな2人だけではない。






「アスモさん、リエルさん!レインさんを困らせちゃ駄目ですよ!」


その声を聞き、リエルがオークフルボッコを中断してこっちに歩いてきた。さらにアスモも俺から離れ、眠そうに欠伸をしながら立ち上がる。


「すまん。毎度助かるよ、ミティア」

「いえ、大したことは」


そう言って、少女は俺の隣に腰掛けた。栗色の髪はセミロングの長さで、2人と違って胸は小さいが、これまた信じられないほどの美少女である。


思わず守ってあげたくなるような可憐さで、仲間の中で唯一まともな天使的存在。小柄だが剣を軽々と振るうこの少女は、人類最後の切り札として期待されている〝勇者〟に選ばれたミティアだ。


「こうしている間にも、魔王軍は世界侵攻を続けています。いつ何処で敵と遭遇するか分からないんですからね」


俺が3人と旅をしている理由。それは、俺達人間を滅ぼして世界を支配するなどと、そんな子供の夢みたいなことを言っている魔王を倒す為である。


魔王の命を奪うことができる唯一の武器、そう呼ばれる聖剣に選ばれし勇者のミティア。


魔物を虐めるのが大好きだが、回復魔法や支援魔法を使ってパーティをサポートしてくれるリエル。


わざと相手の攻撃を受けて幸せそうにする馬鹿だが、凄まじい戦闘力を誇るアスモ。


そして、これでも一応住んでいた王国一の魔道士と呼ばれ、ミティアの護衛として旅することになった俺、レイン。


俺達なら魔王なんて余裕で倒せるような気もするけど、我らが天使であるミティアとの旅が終わるのは嫌だな。なんてことを思っていると、ミティアが俺をじっと見つめていることに気がついた。


「どうした?」

「いえ、レインさんは今日も素敵だなと思いまして」

「こらこら。そう言ってくれるのは嬉しいけど、そうやって俺をからかうのはやめなさい」

「えへへ」


サラサラな髪を撫でてやると、ミティアは目を細めてとても嬉しそうに微笑んだ。


ああ、可愛い。こうして天使と旅ができることに心から感謝しながら、俺はしばらくミティアの頭を撫で続けた。












まあ、その頃の俺は知らなかったんだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「えへ、えへへへ。今日はレインさんに合計1分21秒間も頭を撫でられました……と」


夜、もう既に他の3人が夢の世界へと旅立っている頃、ミティアは1人嬉しそうにノートを開き、今日の出来事をカリカリと書き記していた。


「それにしてもアスモさんったら。またレインさんに変なことしようとしていたけど……ふふ、もしも行為を中断しなかったら私、レインさんの目の前でアスモさんのこと斬っちゃってたかも。リエルさんも、レインさんの前で暴力ばかり。しつこいと逆に貴女を八つ裂きにしちゃいますよって、1度言っておくべきかなぁ」


そう言ってちらりと向こうに顔を向ける。とても気持ち良さそうにぐっすり眠っているレインが目に映り、ミティアは恍惚とした表情を浮かべた。


「本当はアスモさんもリエルさんも邪魔なんだけど、そんな事を言ったらきっとレインさんに嫌われちゃう。私はレインさんと2人だけで旅をしたいのにな。レインさんが居れば私は何処にだって行けるのに。レインさん、貴方に出逢えた私は本当に幸せ者です。あぁ、レインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさんレインさん……♡」







残念ながら、レインの周りにまともな少女など1人もいなかった。



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