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第七話 悪夢の開始

教会内は静かだった。誰も、一言も話さない。カイとラールはバルコニーへ出て、敵の突撃隊を狙いすましている。

「…そろそろだな」

バルカンがそう言ったすぐ後、外で戦闘が開始された。入り口付近のディナは外の方を向く。グランは中央で、何か考え込んでいるように天を仰いでいる。

「…俺たちはここでいていいのか?」

不意にディナが尋ねる。彼は実直であり、自分がこのように戦闘に参加できないのをあまりよく思っていない。

「…仕方ないだろ、隊長がそう言ったんだ。従う他ないだろう。」

「そうだけどさ…」

「まあ、外は大丈夫だろう。俺らは命令を遂行しよう」

そう言ってグランが二人の方を向く。…次の瞬間だった。

パリーン

その音を聞いた三人は、すぐさま音の方を向いた。しかし、彼らは遅かった。割れたガラスからは、既に『彼』が侵入していたのだ。グランが剣を抜こうとした腕をぴたりと止めた。いや、止まった。グランの首には、根元まで抉りこまれた剣が赤々とした血をしたたらせながら突き刺さっていた。バルカンとディナがその光景を目に留めると同時に、その剣の主は一気に首の半分を切り飛ばした。グラン『だったもの』は地に崩れ落ちていた。二人が呆然とする。その隙を見逃す程の心は相手にはなかったのだろう。くるりと体の方向を変えると、入り口にいたディナに剣を向け、そのまま、まるでダーツのように投げた。彼の手から離れた剣は、一直線にディナに向かい…胸元に深々と突き刺さった。

「グラン!ディナ!」

ようやく我に返ったバルカンが二人の名前を呼ぶも、もう返事は返ってこなかった。

「貴様あああああ!!」

バルカンが駆け出す。普段は温厚であった彼の心には、もう怒りしか残っていなかった。

しかし敵の手には、既に新たな剣があった。足元にあったグランの剣を拾った敵は、怒りに任せて剣を振るうバルカンを軽くあしらうと、懐に潜り込み、そのまま胸元を切り裂いた。バルカンは、一瞬何が起きたか分からない様子だったが、すぐにその場に倒れ伏した。これまでには、ひどくかかったようにも思えるが、実際は1分と経っていなかった。転がった3つの死体の上に佇んだその男が次に反応したのは、その直後だった。

「何が起きた!」

バルコニーから降りてきた二つの影があったからだ。その二人は、そこに転がる3つの亡骸を見て、目を見開いた。しかし彼らは冷静だった。

「行くぞ!」

そう言って、その二人は同時に一歩目を踏み込んだ。2対1の構図に持ち込んだのだ。しかし、二人が冷静である以上に、もう一人の男も冷静だった。その男は同時に切りかかってくる二人の剣をまるで蝶のようにひらりと躱していく。二人がかりで幾ら剣を振るおうとも、一撃も当たらないのだ。二人が焦り始めた。このままではこちらの方が先に消耗する。そのような思いが頭をよぎったその時だった。カイの腕が掴まれ、そのまま手首を捻られた。そしてその手の剣先にあったのは、ラールの腹部だった。なすすべもなく動かされたその腕は、ラールの腹にめがけて動かされ、止まった。ラールの腹部には、カイの剣が残っていた。刺さっていたという表現ができないのは、刺さった後剣を回転させて抉られたからであろう。カイが剣を離すと同時に、ラールの体は地面に叩きつけられた。呼吸をしている様には見えなかった。

「おい…うそだろ…」

カイが震えながら、膝から崩れ落ちる。しかし、彼にも無情の嵐が降り注ぐ。髪を掴まれて頭を固定され、そのままその男の手によって頭と胴が切り離された。その男が入って3分後には、教会内に5つの死体が転がっていることとなった。


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