第三話 セイガ小隊
二日後、セイガ小隊に入る面々が集められた。全員合わせて23人、小隊としては丁度いい人数である。
「レオン!エル!お前たちもいたのか」
レオン・ミュラー、エル・アルディ。セイガの同期であり、訓練などでもよく共に行動している。
「お前が隊長の部隊だ、俺らが来なくてどうする。」
「そうそう、よろしくね、隊長」
エルが笑いながらセイガの肩を叩く。
「で、お前の彼女さんたちは?」
レオンが辺りを見回す。
「誰が彼女よバカ、殴るよ?」
いつの間にかレオンの後ろにメリーが立っていた。レオンがビクッとしてそのまま背中を押さえて仰け反る。殴るよと聞きながら本当に殴っていたようだ。
「悪かった悪かった。お前は元気だな。メルは?」
「メルちゃんはここに…あれ?」
メリーが虚空を指差すも居らず、辺りをきょろきょろ見回す。
「いないじゃねえか」
と言いつつセイガも探すと、壁の方で座ってるメルを見つけた。顔を膝に埋めている様だった。
「居た居た、おいメル」
と言って近づくも、反応が無い。
「大丈夫か?腹でも痛いか?」
と、メルを揺する。しかし、やはりメルは動かない。心配になったセイガが顔を覗き込む。
「・・・」
寝ていた。こくりこくりとしながら、静かに眠りについている。
「おいメル、起きろ。」
セイガが軽く頭を叩くと、
「…あたっ…あれ、お花畑は…」
「お前の脳内がすでにお花畑だ、安心しろ。」
セイガが呆れる。
「おいトラスト、少し皆の前で話せ。」
と、教官が近づいてきた。
「特に話すことはありませんが…」
「なんでもいい。隊長が話さなくてどうする」
セイガは仕方なく、皆の前に立った。
「あー、特に何も話すことはないが…皆、無理をしないでほしい。俺が隊長になったからには、この23名、一人も欠けることなく戦争を終わらせる。自分の命も、名誉も、両方を求めろとは言わん。ただ、我が祖国、ラルガンドの誇りをを守り、領土を求め、侵攻に踏み切った異敵、カインドルトを打ち倒す。我々の目標はそこだ。…矛盾はするが、死ぬ気で臨んでくれ。以上だ」
セイガがしゃべり終わると、聞いていた皆から拍手がおこった。
「良かったぞトラスト。お前らの最初の任務は2日後、通達される。そのつもりで待機しろ。」
了解しました、といってセイガはその場を後にした。セイガの脳内には、やはりアイグの事が浮かんでいた。メリーとアイグの祖国を悪いように言ってしまったことを、ひどく後悔した。