第一話 始まり
あおがみと申します。
初めての小説投稿なので、至らぬ点もあるかとは思いますが、暖かな目で見ていただけると幸いです。
校内はにぎわっていた。午前中の授業が終わり、皆昼食をとるために学食へ向かう。
アムルストン騎士養成学校。ラルガンド帝国、帝都アムルストンの東部に位置する。市街地から少し離れた山脈の狭間にあり、500年の歴史を重ねてきた由緒正しき学び舎である。石煉瓦に囲まれた外観から古城を思わせるものがあり、「ラルガンド第二の城」と形容される。
この学校には、大学で3年間学んだ後編入でき、5年の学習、訓練を積み、騎士になる。しかし、正当に騎士と扱ってくれる人間はごく一部であり、残りは一般兵より少しいい程度の対応しかされない。この学校はS,A,B,Cと成績により分かれ、S,Aは指揮官、B,Cは前線兵としての知識、訓練を叩き込まれる。
食堂、図書館など、普通の大学にもある施設は勿論のことながら、訓練後の学生の事も考慮し、大浴場、仮眠室も設置されている。
その日、4年のセイガは同級生のメル、メリー、5年のアイグと共に学食でいつものように過ごしていた。
「あ!メルちゃんオレンジ取らないでよ!」
「もう食べたもんね~」
女性陣の食べ物の取り合いも相変わらずだ。
「…平和だな」
「…これだけ見るとそうですね。」
「それで話の続きだが、最近の世界情勢はどうなっているんだ。」
「それなんですが、カインドルトとの関係、更に悪化してますよ。そろそろ戦争になりそう。最近じゃラルガンドに出稼ぎに来てたカインドルト出身者も帰郷してますし。」
メルとメリーの争いはいつの間にか収まっており、セイガの話に耳を傾けていた。
「なるほど。よく分かった。…そろそろカインドルトへ帰らなければな。」
アイグは腕を組み、目を閉じてそういった。
「え、アイグ先輩行っちゃうの?いやだよそんなの…」
「元々はカインドルトの人間だ。帰れば恐らく兵士へ招集される。そうなれば、お前たちと戦うことになる。」
ため息混じりに言うアイグの表情は決して明るい物ではなかった。
「それじゃあこっちに残ればいいんじゃ…」
「それ以上わがままは無しだメル。先輩も母親置いてラルガンドへ残れんだろう。下手すりゃ親が嗤われる。」
「でもそれじゃあ…」
メルがちら、とメリーの表情を窺う。
「…私は…」
先程まで黙っていたメリーが口を開く。
「無理をしなくていい。ラルガンドかカインドルト、自分の居たい方を選べ。」
アイグが諭す。
「私は……ここに残る。たとえお兄ちゃんと戦ったとしても、私は後悔しない。」
メリーは意を決して立ち上がった。
「賢明な選択だな。」
アイグはフッと微笑しつつそういった。
「あ、メリーちゃん?」
「何?」
「気付いてないのか…周り見てみろ。」
メルとセイガに言われ、パッと周りを見回すと、周囲で食事をしていた皆がメリーに拍手を送っていた。中には感心してうんうんと頷く人もいる。その瞬間、メリーには照れくさいような誇らしいような、言葉には表せない気持ちが芽生えた。