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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
僕の魔法学校が女子高に突っ込みました!
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翌日ーー


僕は少し早めに聖女の大聖堂にいた。昨日の件で作業をホッポリ出した跡目を感じて、少しでも掃除でもしようと思って来たのだ。会場はイスがしっかりと並べられており、式段の上には【魔法学校 聖女学園友好式典】と横断幕が掲げられていた。もう完璧に揃っていて、後は式が始まるのを待つばかり。僕の出る幕はないと呆然とした。今は式の開演6時間前。夜中の3時。……寮に帰って少し寝ようと思った所に、なにやら人の気配がした。



「……こっちです」



なにやら人を呼ぶような声がした。僕は思わず壁にかけられていた段幕の裏に身を隠した。 ゆっくりと息をのむ。



段幕で見えないが人の気配を感じた。足音も複数聞こえる。その人たちは式段の方に歩みをコツコツ進めていく。まるで統率が取れた軍隊みたいな足音だ。



「……これよ、早く切っちゃって」


「ナイフ……いけるかしら?」




こそこそと物騒な話し声も聞こえてた。なんだ? 何をしようとしてるのか? 段幕から出ようと思ったが、複数人いると思うと怖くて出れそうもなく、その場で固まってしまった。そうこうしているうちに、何やら物を切っているような音がキリキリと聞こえてきた。



「なにやってるの!!! 」


いきなりだ! 大聖堂内に大きな声が響く。

この声は聞いたことある。飛鳥会長だ。

その声と同時に逃げる足音も聞こえた。僕は勇気を出して隠れていた段幕を捲る。一瞬だけ、聖女の制服を着た複数人逃げる姿を見た。中央には飛鳥会長が腕を組んで立っていた。会長を避けるようにして扉に向かってその生徒達は逃げていった。


「あ ああ 飛鳥会長…」


自分でも気が抜けて、間抜けな声だと思った。飛鳥会長に声をかける。半比例して飛鳥会長をは僕の方を横目でチラッと見て、姿勢はそのまま腕を組んだ最初状態であった。


「あら、達哉いたんだ。あんたも襲撃を考えていた……とは言えないわね」



「昨日…あんまり設営に参加してなかったので、掃除だけでもと思いまして…」



僕は正直に答えた。そして、飛鳥会長は「あれ見て」と言って、式段の上部を指差した。視線を送ると …… あっ!と思わず声が出た。さっき見た【魔法学校 聖女学園友好式典】と書かれていた横断幕が右に上がりに下がっており、その脇には白いロープが切られている事を気づいた。さっきの人達がやったと思った。



「どうやら、私たちは歓迎はされてないようね…参ったわね……」



ぽつりと呟く飛鳥会長。百合子達のように差し入れをくれるような聖女の生徒達も居たが、昨日の事件を起こした聖女生徒会のような人達もいる…… 自分達の学校に突っ込まれて校舎などを破壊されたりしたら、誰だって憎む気持ちは出てくるし、そしてその加害者である魔法学校と姉妹校なので、今回の事故はなし!と言われたのならば、それは怒りは起きる。僕たちは信頼を得なければならない。



僕は壊された横断幕を直す為に式段に登ろうとしたところ、「直さなくていいわよ、 ちょっと後で利用させてもらうわ」と飛鳥会長に制止されたので辞めた。利用するとは? 会長からは横断幕が見えないように手前の黒い幕で隠して!と、言われたので、指示通りにした。そこに扉が開く音が響いたので、目を向けると信二君がこちらに向かって歩いてきた。


「飛鳥会長おはようございます…… 命令通りに調べたら…これらが配布されてました…」


信二君の片手にはプリントA4用紙の束が抱えられており、僕ら見せてる。そこには



【魔法ガッコウハ ワタシたちヲ 騙ソうとしてイる 目をサマセ! 乙女たちヨ!!】


デカデカとA4の用紙にひらがなやカタカナなどが踊っていた。これは刑事ドラマとかで良く見る怪文書… 実際に見ると気持ち悪い。


「信二くん… これは?」


僕は恐る恐る尋ねると、聖女学園の一年生から三年生の下駄箱に全てに入れられていたらしい。 ラブレターか! と、ツッコミを入れたいと思った。


「理恵さんや岩間君達にも手伝ってもらって、なんとか全部を回収したよ」



少し疲れぎみに信二君は報告してくれた。彼の額の汗が苦労を物語っていた。



「朝からご苦労様。 やはり、仕掛けてきたわね…… 」



飛鳥会長は軽く握った拳を自分の口元に持っていき、眉間にシワを寄せた。何かを考えている。仕掛けてきたと、言ったが飛鳥会長は何かを知っているのだろうか? 僕は尋ねることにした。


「会長… 誰がこんなことをしたのを知ってるんですか?」



「あ、達哉にはまだ話してなかったわね、話すわ」


飛鳥会長の話によると、この聖女学園には秘密結社が存在しているという…… なんだ、その秘密結社ってのは?! 飛鳥会長曰く、私立とか歴史がある学校には、生徒達が相互扶助団体のよう互いに助け合う会があるらしい。それが、歴史を重ねていくと秘密結社のような集団になり力をつけてきたと解説をしてくれた。



「それがただの大人しい仲良し集団ならよかったけど……度を超した過激派になっているわね…」




聖女学園に秘密結社があるとは驚いた。百合子に会ったら聞いてみようと思った。すると突然、飛鳥会長が聖堂内の窓を睨み付けた。



「そこっ!」と叫ぶと、会長は掌から稲妻のような魔法を出した。解き放たれた稲妻は窓枠で小さく爆破。外窓で慌てて逃げる人影が見えた。



「度胸があるわね…ちょっとはこちらも本気出しましょうか」と飛鳥会長は腕組みをしながら少し微笑んだ。怖かった。



誰かに監視されていた? 今の会話も聞かれていただろうか? 噂の聖女学園の秘密結社の一人だろうか? 信二君も窓を見た。




「…… さっき、このチラシを回収してた時も誰かに監視されているような視線を感じたんだ……もう目をつけられてるか……なるほど流石だな百合十字団(リリィクロイツ)だな」



「なにその百合十字団(リリィクロイツ)って?」



信二君に尋ねたら、どうやらその秘密結社の名前らしい… 百合十字団(リリィクロイツ)といい、切り裂き魔といい、僕らの回りは敵だらけだ。



「信二君! 達哉! またあいつらが妨害とかしてくると思うから、魔法学校の生徒達にも知らせておいて!警戒を怠らない事と注意喚起しておいて!」



それを聞いた僕らは顔を見合わせて、魔法学校校舎に引き上げた。少し面倒なことになるなぁと、僕は少し苦しい表情を作った。

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