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「流…… まさかここで教師をやっていたなんて…知らなかったよ」
「時田君こそ……何でここに? …あわわ…わ」
思わぬ再開だと思えた。2人は互いに神々しく見つめ合い辿々しく言葉を繋いでいく。ここにいて僕は良いのかなぁ?
「失礼ですけど……お二人はお知り合いですか?」
僕は時田さんに質問する。
「そうだよ。小学校中学校までご近所同士で、その後に流はある都合でそこから引っ越しをしていって…… 」
「え…ええ! そ、そうです!そうです!」
時田さんが詳しく経緯話すと、シスター留分はこくこくっ!!と、頷いた。偶然の再開を果たした2人が話をしていると、時田さんがはっと、気がついたように阿部理事長に話をかけた。昔話に夢中になっていたが我に返ったのだ。声のトーンもいつもの時田さんに戻っていた。
「ごほん。失礼しました阿部理事長。本日は視察の為に聖女学園に訪問しました」
阿部理事長はまぁまぁと言いながら、「久々の幼なじみとの再開を大切にしては? 時田さん」と言われて、顔を真っ赤にしながらポリポリと頭部を痒く時田さんであった。こんな姿の時田さんは見たことない。すると誤魔化すように話をしだす。
「ま……まっ… 魔法学校と聖女学園との友好な姉妹校関係を結ばれていると…… は言いがたいですな…」
先程とは違って、ばつが悪そうな顔を作る時田さん。
先ほどの出来事に遭遇してしまったので言葉を否定に変えた。その言葉に阿部理事長は口元を隠した。
「ええ、本当にすいません。我が学園の羞恥を外部の人間に晒してしまったことを恥ずかしく思います」
「まぁ、子供達の喧嘩なので収拾はつくと思いますがね…… 」
時田さんはそうフォローした。そんなやり取りしていると、ここにいることが居づらくなったのか、シスター留分が、ちょちょちょっと!!礼拝堂の様子などを見てきますね!と、慌てて言って学園長室を飛び出していった。うわ、物凄いスピードだ!!!
子の部屋に居るのは阿部理事長と時田さんと僕。 僕もこの部屋から逃げ出したくなったが、なんとかしなければいけないという謎の使命感が吹き出てきた。
「心配などいりませんし、僕ら魔法学校側も不快感などはないですよ。むしろ、僕らが聖女学園に突っ込んでしまったのが発端ですから」
精一杯のフォローをした。これは飛鳥会長ならこんな事を言うのではないか?との真似事である。その事を聞くと阿部理事長はほっと胸を撫で下ろした。
「そう言っていただけなら、安心します。 これからも姉妹校として友好関係を保って行きたいと思ってますし…… あと、あの約束も果たしてもらわないと」
そうだった! 聖女学園で今も起きている通り魔事件を解決することだ。 これは是非にも僕ら魔法学校で何とかしたいものだ。そ思っていると、理事長室の扉が開いた。
失礼します!と言って入ってきたのは飛鳥会長。
「阿部理事長、会場設営は終了しました。あと…… 」
あと……と、言った後に飛鳥会長の後ろから直江さんがひょっこりと飛び出した。いつの間にいたのでビックリした。そして、直江さんは阿部理事長に近づく。
「阿部理事長、お怪我大丈夫ですか? 私、気になってしまって… 」
「だ 大丈夫よ。わっ!?」
阿部理事長の頬はさっきよりも赤くなって腫れている。やはり、大丈夫ではない状態になっていた。すると直江さんは理事長にすっと、駆け寄り両手を彼女の顔に当てた。いきなり駆け寄ってきて驚いた理事長をよそに回復魔法を施す。直江さんの掌からうす緑色の靄が出てきて、腫れた頬を覆って行く。すると、腫れがみるみると無くなっていた。
「はい、終わりましたよ」
直江さんはニコッと笑顔でその一言を言う。阿部理事長は自分の頬を擦る。
「自分が魔法を施されるとは思ってはいなかったです…… ありがとう」
理事長は胸前で十字を切って、直江さんに感謝をした。それを受け取った直江さんは少し照れ笑いをして軽く会釈。そして、飛鳥会長が僕に対して言ってきた。
「もう、式典の準備は完了したわ! 達哉も今日は遅いから寮に戻りなさい」
飛鳥会長は僕に帰宅を促した。その言葉を素直を受け取り、僕は魔法学校の寮に帰ることにした。