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【助かった】とため息をつきながら二人は内閣総理大臣を見た。その顔には自信と疲労をかき混ぜた顔色をしていた。薄暗い会議室に良く似合う顔付きだった。
「総理!遅いですよ! 」
「わたし心配したんだからぁ〰総理大臣さぁん〰」
「ああ…すまない。 少し寝坊してしまった。だが、今の会議室に似合わない乱暴な音で目が覚めたよ。内部防音だから響いたね」
と、微笑をしながら、文部科学省大臣を見つめた。見つめられた大臣は、一瞬(うっ!)と声を漏らしながら、また、座っていた椅子にとぼとぼと、戻っていった。それをゆっくりと見届けながら、総理は、中央上座の自分の定位置椅子に腰を落とした。
「改めて、皆に会議に遅れた事をお詫びをしたいと思うよ。アイムソーリ[総理]」
……
誰も笑わなかった。総理は、【今の最高の一言だと思ったのに……】と心の中で思った。
「総理!!ふざけている場面ではありません!ちゃんとしてください!」と、会議室のテーブルをバン!と叩きながら、文部科学省大臣が吠えた。
「あーわかっているよ。わかっているよ。問題は現場で起こってるじゃない、会議室で決める事だよなー」
大臣は、「ふざけやがって」と小声で言いながら、怒りを沈めていった。
「それで、会議はどこまで進んでいるの? 」
「総理が来てから、会議をまとめようとしましたが…文科大臣が……」
ここまでの流れを官房長官が説明する。文科大臣は、しかめっ面で黙っていた。
「あーそこまでのやり取りは知っているよ」
「なんですと!総理!あなたは一体どこから聞いていたんですか? 」
「流石ー!総理さぁん♥ス・テ・キ♥よっ!大統領!!」
「あー私は大統領ではなく、内閣総理大臣。つーか、文科大臣のとてもとても大きな声が、途中、歩いてきた廊下に全部響いていた。随分とごり押ししていたな?文部科学省大臣君? 」
大臣は顔を真っ赤にしながら、頭を垂れた。
「あーまぁ、君の案も一理ある。そんな不思議な力を持った人間を社会で生活したらとんでもない事をしでかすかもしれない。だから、保護と言う形で世間から隔離する…悪くはないよなー」
【総理大臣も同じ[隔離]と言う対策に賛成だろうか? 】なの? 】と、官房長官と教育評論家の思考は一致してしまった。このままでは子供達は……
「あーだがなぁ、今回の当事者達は15歳の子供達だぞ。生まれてたったの15年しか生きていないな…若すぎる。この子供達はまだまだ、発展途上だ!可能性がある。それを大人達の都合で隔離するとはいかななものだな。子供達を守ったり、無限の可能性を引き出したりするのは国の…いや、俺達大人の義務じゃないのか?そう思わないか? 」
総理大臣は、ゆっくりと話を続けた。
「あーだから、俺の考えをここで述べようと思う。…彼らの為に学校を作ってやらないか?不思議な能力の自主研究と、同時に高等教育を教えていく学校をさ」
その一言は、とても魅力的だと思った。ただし、文学大臣を除いて…
「それは妙案です!総理大臣! 」
「とてもとてもス・テ・キ♥惚れちゃうわ〰最高!どんだけぇ〰!」
「あー んじゃ、これで決定と。ん?文部科学省大臣君?何か不満かな? 」
「…いえ、それで良いと思いマス…… 」
総理は文科大臣の態度に【あー何か傷つけること言ったのかな?声がデカイと言っちゃった事かなぁ】とそう思っていた。
総理が来てから、わずか数十分でこの問題は解決した。後のややこしい問題は、木の枝分かれの様に解れた政府各関係が仕事をしてくれる。勿論、学校創立などの件もだ。
会議室から、「あー 眠たいわー」と言いながら総理大臣を先頭に出ていった。
最後に文部科学省大臣が、ぶつぶつと独り言を言いながらゆっくりと扉を閉めた。
「認めん…認めんぞ…そんなことなどは……」