70 魔法学校野球部完結
「みんなぁ~!! 届いたわよぉ!!まぼろしぃ〰❤」
魔法学校グランドに聞き覚えのある声が響いた。 練習をしている僕たちに所にマネージャーの真木先生が走ってやって来たのだ。 片手には封筒が握りしめられている。 僕らは練習を一旦止めて、先生の元に駆け寄った。
「どうしたんですか真木先生? 一体、何のようですか? 」
「みんな!! 速達で高校野球連盟から書類が届いたわよ~ !! 私は居ても立っても要られなくなって、ここまで持って来ちゃったのよぉ! どんだけぇ~!! 」
「えっ!! 本当ですか?! 」
皆はグラウンドに響く歓喜を上げた! 高野連の魔法学校野球部視察から一週間ほど経っていた。 他の部員からは許可が取れないではないかと不安になる声も上がっていたが、 本日、手続き書類が届いたのだ。 勿論、嬉しいと僕らは思っているが、 一番喜んでいるのは、 魔法学校野球部主将である、飛鳥会長であろう。 創部から練習などの指揮をしたのは彼女なのだから。 僕は、飛鳥会長が喜んでいるのを見逃しはしなかった。 大きく頬が上がる一瞬を目撃した。 珍しい笑顔を見たような気がした。
「では、ここで開封をしようかしら…… あっ!」
真木先生は封筒口を切ろうとしたが、一瞬、躊躇って止めた。 驚愕を上げた目線の先には、飛鳥会長が居たからだ。
「これは私が封を切るの間違っているわね! どんだけなの! ここは野球部主将である飛鳥さんに任せるわぁ! はい! 」
「はい! わかりました! 」
笑顔で封筒を受け取った飛鳥会長は、封を裂いた。 中から出てきたのは、一枚の手紙。 ん? 認定証とか多数書類とかが出てくるのかと思っていたが拍子抜けを食らった。 僕らは気を取り直して、出てきた手紙を読もうとする会長に注目した。
「え~ 、では、代表して読ませて頂きます! …… 『 拝啓 早夏の候、お元気でご活躍のこととお慶び申し上げます……
一般的な書き出しから、その手紙は始まった。スラスラと会長は読み上げていったが……
「…… えっ? ……っ…… っ」
会長の声はだんだんと小さくなっていき、後半の部分は何を言っているか解らなかった。黙って聴いていたみんなも様子がおかしくなっていく会長に気づき始めた。
一同に不安が……。
「どうしたんですか? 会長? 」
声を掛けたが、会長は相変わらずプルプル震えながら、手紙を握り締めている。そして、無言のまま此方に近寄ってきて僕に手紙を渡してきた。 これは読めってことか?
なになに……
【さて、先日に行われました貴校の野球部視察を報告いたします。 今回は残念ながら我々、高野連は魔法学校野球部を認定する事はできませんでした。 理由は二つあります。一つは高野連は女子の試合参加や試合中のグラウンドへの立ち入りを禁止しております。 それを考慮しますと、貴校の野球部は人数は揃っていますが、男女混合による構成をしておりますので、令に違反しています。二つ目は貴方達選手は魔法と言う特殊能力で野球をやられておりますが、それは、スポーツマンシップに反する行為と受け止めました。 我々、高野連も慎重に検討した結果、この様な報告に至ったことを残念に思います。 公式には認められませんが、これからの貴高の野球愛好会の今後の活動に期待します。 公益社団法人 日本高等学校野球連盟 会長…… 】
僕は声を出して読み終えた。 ここで個人的な意見だけど、こういう長い文章を読んでいると、内容とか全然頭に入って来ないよね? いきなり、国語の授業とかに「ここを読みなさい!」と、指されて、渋々読むけど、淡々と読む事しか出来ない… そして、先生に「はい、ありがと、席について」って、言われて終わりじゃん。 あれでは中身なんて入ってこないよ。
「達哉君…… それは本当なの?」
東さんが不安な声を上げた。 その声に反応して、僕は手紙から顔を上げた。 回りの人間は意気消沈したような顔を作って、僕を見ていた。 …… さっきも説明したと思うが、僕は淡々と手紙を読み上げただけで、内容を理解しながら読んでない。
「私達は甲子園に出場どころか、野球部として認められない……ってことね」
僕はそのひと言で理解した。 野球が出来ない。手紙の内容はそう言うことか……
「なんでよぉぉぉ!!! 念入りに計画していたのにぃぃぃ!! いゃぁーーー!!
」
グラウンドに飛鳥会長の叫びが響いた。 その瞬間に僕の手から例の手紙を奪い取り、彼女はぐしゃぐしゃ丸めた!!
「これは陰謀よ!! もう、野球なんてやらないぃぃ!!!」
そして、彼女は大きく振りかぶって、丸めた手紙を大空に投げた。 手紙は一瞬、柔らかく浮いたが、ぽてっとグラウンドに落ちる。
呆然としている会長を除いた我々はそれをゆっくりと見守るしかなかった。
魔法学校野球部編 完ッッッッ!!!!