6
「以上報告致します…国内では大変な騒ぎになっています」
……
ここは、首相官邸の地下二階会議室である。広さは、学校教室ほどの大きさであり、何故だか薄暗い。壁も防音設備をしている為に、外部には音は漏れないが、会議室内部の音は防音壁に微々いて、声などはエコーが掛かったかのように響き渡る。すると、一人の男が質問を投げ掛けた。
「海外などからは、このような報告は? 」
「今のところありません……我が国だけです……官房長官」
官房長官と言われた男は、大きく腕を組みながら、顔をしかめた。
「しかしだ。不思議なことってあるんだなぁ……掌から火とか電流などが放出される事件が報告されるとは……しかも15歳の子供ばかり……」
「そうですとも〰私もビックリしちゃったわ〰官房長官さん」
官房長官の隣に座る男が答えた。彼は有名な教育評論家であり、彼の掲げる教育論などは、子供を持つ保護者からに圧倒的な指示を持つ、[教育界のカリスマ]と歌われていた。彼自信は中年教師の出で立ちだが、中身はオネェ系というギャップも人気の一つである。
「もう、どんだけぇ〰って叫びたくなるほどよね〰ねぇ? 官房長官さん? ん?」
彼は小首を傾げながら、官房長官を見た。官房長官はその視線に堪えきれず、秘書をどやした。
「お おい! ま ま 、まだ、総理大臣は来ないのか? いくらなんでも遅すぎるぞ! 」
「はい。今、急いでこちらに向かっている途中のようですが…まだですね」
「そんなに焦っちゃだめょ〰まだ会議は始まったばかり な・ん・だ・か・ら♥ 」
「う うー…」
身に危険を感じながら、官房長官は話を続けた。
「と……兎に角だ、この様な出来事は前代未聞で我々の想像を超えた事件である。政府として、この問題を解決しなければならない! その為にこの緊急会議を開いた。何か対応策などの意見はないだろうか? 」
その発言に対して、大きく手を上げたのは文部科学省大臣である。
「私に良い案があります、官房長官殿。その危険すぎる能力を使う少年少女達を政府で保護という形で研究施設に隔離し、実験や研究などで生かすのはどうでしょうか? 」
それは所謂、(隠蔽)とか(モルモット)などと言われるものだろうか?その発言に、会議室の人間達はゆっくりと沈黙をしてしまった。
「何を考えている!!そんなことは出来ない!まだ彼らは未成年の少年少女達であろう!確かに持っている能力は危険であるが…それでは、化け物の様な扱いではないか! 」
と、官房長官は憤慨した。
それに続き、教育評論家もプンプンとほっぺたを膨らせながら声を荒げた。
「もう!信じられないっ! 何を考えてるの〰最悪なんですけどぉ〰あの子供達に罪はないのに…そんな扱いはこの私が許しませんっっ! 」
官房長官と教育評論家の二人は反対した。
「では…その他に良い案などは考えているのですか? 」
仕返しだ!と言わんばかりに文部科学省大臣はギロリと睨めつけながら言った。
その目付きにビックリしたように二人は答えた。
「い いえまだ考え中です…… 」
その為の会議なのに、一方的に考えを押し付けたり、強引に持っていくのはどうなのかと心の中で思いながら、二人は顔を沈めた。
…
その様子を見た文部科学省大臣は、ニヤリとしながら話をした。
「お二人には、失望しましたよ…私よりは頭のキレる賢者だと思っていましたが… くく…やはり私の考えた案が一番では?というか、それしか妙案がないっ!これで決定だ! 」
だんっ!!と音を荒げ、椅子を立ち上がり、文部科学省大臣は会議室を後にしようとした。
「ま、待ってくれ!まだ、総理大臣の意見を聞いていない!頼むから座って待っていて!頼む! 」
「そ、そうょ!総理の到着を待ちましょっ! 」
「……時間の無駄だ」
そう言いながら、文部科学省大臣は会議室の扉を開けようとした。その時、
「君の独断で会議を終わらせるのは、まだ早いよ。是非、私の意見も聞いはくれないだろうか? 」
外側から扉が開いた。ぬっと顔を出しながら言葉を発したのは、この国の内閣総理大臣であった。