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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
おおまかに振り破って ~魔法学校野球編~
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55 吉沢飛鳥の憂鬱


魔法学校の四階グラウンドに一人の少女が立っていた。 まだ、部活なども創立されていないので、このグラウンドを使う生徒は皆無。 おまけに頭上には快晴が広がっていた。 一人になるのにはうってつけの場所であった。その少女は吉沢飛鳥その人であった。何故にここいるのと言う疑問は数分前の彼女の行動から解説したいと思う。




―――。



『何故、みんな解ってくれないの!? 』


自分の頭の中は不満の一言でいっぱいになっていた。 この一言が何度もリフレインを続けている。


私は無我夢中で廊下を走っていた。回りに人が居ようと気にもせずにすり抜けたり、抜かしての応酬を繰返し、俊足を繰り広げた。


幸いにも私の顔を見られた事はなかったと思う。 自分でも気がついていたが、泣いていたのだ。 こんな姿は絶対に見られたくない。 だって、私はこの魔法学校の生徒会長であり代表でもあるからだ。トップの落胆を見たら、生徒の模範にも成らないし、舐められてしまうかも…… 必死に自分の顔を隠しながら走っていたのかもしれない。



ふと、気がついたら、私はいつの間にかグラウンドにポツンと居たのだ。 自分でも気がつかない内に瞬間移動の魔法を使っていたのだ。 何故ここ? と、思ってしまったが、誰も居なかったので、都合が良いと合意した。 ここなら、泣き顔を見られる心配はない。私は深い深呼吸をすると、天然芝で埋め尽くされたグラウンドの真ん中に大の字に寝転んだ。



『もう、すべてが嫌になった……上手く行かない』




今度は自分の意思でそう何度も呟いた。 寝転んだ先に見えるのは、青い空が広がり、雲が途切れる事なく、視線から外れてすいすいと泳いでいく。 ここで思い出すのは、さっきの出来事。




私が偶然にも保健室の前を通った時の出来事だった。 保健室内から何やら不穏な空気と会話が聞こえたのだ。 決して、盗み聞きしようなんてさらさら思ってもいなかった。だが、会話をしていたのが馬鹿達哉だったので、思わず聞き耳を立ててた…… どうやら、保健室にいる生徒を野球部に勧誘していると言う場面らしい。 ほぉ、馬鹿達哉にしては色々と動いていると関心をした。 私は行く末をここで聞くことにした。 これで、人数が揃い野球が出来ると思ったが、保健室内から会話はもっと難解になって行く。



「俺をこのベッドの上から降ろす事が出来たら、あんた達の勝ちだ。 簡単だろ? 魔法とか使っても良いぞ。 何人もかかって来ても良い」



「本当にそれでいいの?!簡単だね!わぁーー!」




はぁっ?! 何なのその条件?! まさかっ!!


そんな変わった事をするのは山形想(やまがたそう)しかいない。 あの男の子は入学前から注意(マーク)をしていた。 中学校時代は野球に熱心な生徒として生活をしていたが、ある日…… 多分、夏の夕方にあの光を浴びてしまったのだろう。 それから彼は学校が始まった三学期から素行不良になってしまい、野球も断念したらしい…… 原因は解っている。 魔法が使えるようなったからだ。 彼の回りでは物が無くなったり、 突然、人ひとりでは持っていけなさそうな物が彼の身の回りに溢れる事が多く起きた。 真っ先に親が異変に気づき、教育関係機関に相談して魔法力が発覚した。


それから、噂を聞きつけた政府から魔法学校に入学の打診が来た。 彼は最初は「めんどうだ」と、断っていたが、時田さんの熱心な説得により入学した。


この様に魔法を使えるようになった少年少女の暴走や道を踏み外す…… 道徳から反れた行動を防止するのを目的として、健全な高校生生活を送るために魔法学校を創立したと説明を聞いた。まぁ、建前だと私は疑ってはいるが…… 私もこの学校に入学しているので、同じような人間なんだろう……。




話を戻そう。



山形想(やまがたそう)の情報は、校長(マスター)から聞いていたのだ。その他の生徒一人一人の個人情報も熟知した。 私は

その見返りとして、魔法学校への技術提供などをした。 エアバイクなど学校が浮遊型にしたのも私の魔法である、瞬間移動を応用したものだ。 【詳しくは秘密である】



こんなにも早くトラブルが起きるなんて思ってもいなかった。 だが理恵(アホの子)が食って掛かったと言うことは…… 事件になってしまう。私は深く考えて、保健室前の固まってしまう。



「うわぁ!」


「ぎゅぴぴ!! 」



男女の悲鳴が聞こえた。 この声は恐らく理恵と信二君だろう。 会話では山形君と理恵だけのやり取りと読んでいたが、信二君は理恵の事を庇った。 その結果は二人とも山形君の魔法にやられた…… 学校内での争いは辞めてもらいたい。


ここは私が保健室に突入して、この勝負事を止めるべきだと思った。 こんなことをしてまで野球部員を集めるのはおかしい。 変な条件を掛けてきた山形君には少し痛い目にあってもらって、反省をしてもらい、野球部には入らなくて良いと頑として言おう。うん。


私の頭の中での最上級なシナリオが完成した。 僅か数分いや、数秒間で作り上げたシナリオをこれから実演する。 自分の才能に惚れ惚れする余裕を捨て、現実では、保健室のドアを行き良いよく開けようと手を掛けた。



「な 何をするだァーッ! ゆるさん! 」



っっ!!!!!




思わず、保健室のドアから手を話した。いきなりの声にビックリしたのと、この声は馬鹿達哉にだった事にも二度ビックリした。 こんなにも大きな声をあいつが出すなんて…… そして、噛んでいる…… 馬鹿達哉。



今度は馬鹿達哉が山形君とやらかすらしい。 私は達哉の事を信じることにした。少し保健室のドアから距離を取って再度聞き耳を立てることに……



だが、あそこで私が突入すれば良かったと思うのは今頃になって気がついたことだ。はぁ……






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