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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
おおまかに振り破って ~魔法学校野球編~
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「もぐもぐ、勝負はこちらの負けだな。いささか卑怯な戦法だったと思うけど…… まぁ、いいか。 もぐもぐ」



決戦が終わった保健室内では、山形君を取り囲み会話をしていた。 山形君は会長が運んできた食事を頬張りながら、会話に参加している。



「卑怯も何も、貴方がどんな方法を使ってもいいから、ベッドから引きずり下ろしたら勝ちって言う条件を出したから、そうしたんじゃないの! ぐずぐず言わないの! 」



「はい、その通りですね、もぐもぐ」



山形君は正論を飛鳥会長から聞きながら、軽く受け流す。 二人のやり取りを聞いていた僕であったが、急に飛鳥会長の鋭い目線と怒りの矛先が僕に向いた。



「あんたもあんたよ! 達哉! 魔法とか使うんじゃなくて、たまには頭を使った戦闘とかもしなさいよ! 」





「だって会長! 高橋さんや信二君があんなやられ方したら、気が退けますよ! 」



僕は自分でも珍しいと思うぐらいに飛鳥会長に噛みついた。



「もー!! そんな甘い考えは捨てなさい! いい?! ここは魔法学校で私達はその生徒よ! 一般の高校生と違うの! 前の火山休止活動の様な危険な活動もあるかも知れないのよ! ここは特殊なんだからね!! 」


結構な捲し立てで、会長は怒鳴った。 ここは適当に返事で返した。



「………… わかりましたよ、会長」




「ッッ!! なに?! その態度! 達哉ぁ! 」



飛鳥会長が僕のそっけない返事で、キレてしまったらしい。 僕も言った後に【まずい】と、思ってしまったが、もう後の祭りである。 そんなことを思っていると、瞬時に飛鳥会長が自分の顔を真っ赤にさせながら、僕の目の前までずかずかと迫ってきた。 避けようと後ずさりしたが、会長の両腕ががっしりと僕の両肩を抑えた。 女の子にしては腕力があるように思えた。



「なんなの?! ねぇ?! 言いたい事があったら言えばいいのよ!? 」



「…… 別に良いですよ」



「自己解決するなぁぁぁ!!!!!!! 」



耳が壊れそうな位の大声を目の前で聞き、 同時に僕の両肩は、猛禽類の鋭い鉤爪で締め付ける様な痛みを受けた。 いつもは少し毒づく位の皮肉で僕をあしらうのに、今回だけは違っていた。 必死がこれでもかと言うぐらいに押し売る。



―――。



僕が冷たい返事をしたから、こんなにも怒ってしまっただろうか? それとも、 会長の思い通りの展開では無かったからの苛立ちなのだろうか?




「二人とも辞めなよ。 俺も理恵も大丈夫だから、後、ここは一応、保健室だよ」




静かに一言を()っしたのは、信二君であった。 さっきまでは倒れていたが、いつも通りの信二君になっていた。いつ回復したんだろう? 高橋さんも普通に回復して、僕たちの喧嘩を見守っていた。



「飛鳥、止めなよ。 私達はもう大丈夫だからさ、 もう辞めて! どうどう 」



高橋さんは、飛鳥会長に向かって両手を下げるようにジェスチャーを送る。



「もう、いい!! あんた達二人は達哉の肩を持つのね!! 私は…… 私はこの魔法学校の事やみんな事を思っているのにッッ!!! 」



飛鳥会長は、僕の両肩から腕を外して、勢いよく保健室から出ていってしまった。



取り残された保健室内では、気まずい雰囲気が漂った。 山形君なんて、口から食べ掛けのパンが今にもこぼれ落ちそうな位に半開きを口を開いている。 対照的に真木先生は自分が教師であるのにも関わらずに、喧嘩を止められなかった悔しさからか、 口は真一文字にきつく縛り、黙っている。 同時に少し体か震えている様にも見えた。



暫く黙っていると、真木先生が口を開いた。



「ごめんなさいね…… いろいろな事が有りすぎて、気が動転しちゃって、教師である私が止めに入らなきゃいけないのに…… 教師失格よね」



「そんな事ないですよ。 僕達が勝手にやってしまった事ですし…… 先生は謝る事ではありません」



信二君がフォローしたが、真木先生の顔は暗い。 先生はそのまま、丸椅子に深く腰を下ろした。



「ありがとう、信二君。 少しは心が軽くなったような気がするわ」



「真木先生…… 少し休んでいてください 」



真木先生は沈黙した。



いつもオネェ言葉で陽気な真木先生がこんなにも凹んでいる姿を見たのは初めてかもしれない…… 気まずい雰囲気の室内と真木先生の覇気の無さに混じった保健室は、絶望に達していた。





「達哉君、飛鳥会長を探してきて。お願い」



すると、高橋さんが小さな一光の言葉を発した。



小さな音量であったが、それははっきりと僕の耳にはっきりと聞こえた。 心にも突き刺さる様にも響いた。



僕は小さく頷くと、保健室の扉を力一杯開けて飛び出した。



さっき、会長が出ていった時に気が付い事があった。 会長の目は少し涙で濡れていたのだ。 きっと、彼女は怒る事なんてしたくはなかったのだ。



「…… まったく!ッッ!」



モヤモヤな気持ちを押さえつつ、僕は廊下を疾走し始めた。

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