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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
おおまかに振り破って ~魔法学校野球編~
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「もう一度確認しても良いかしら? あなたをそのベッドから一歩でも動かしたら、野球に参加してくれるのよね? 」



「うん。どんなことしても良いよ。 その代わり、こちらも魔法を使うけどね。 そちらに転がってる二人みたくなっちゃうけどいい? 会長? 」



「あなたに負けるはずないわよ」



殺伐とした雰囲気が二人の会話を聞いてる人々に突き刺さる。 売り言葉に買い言葉…… どちらも一歩も引かない。 さっきから、飛鳥会長に食らったボディブローのダメージがズキズキしている。 飛鳥会長が、一言話すたびに痛みに拍車が掛かった。 一刻も早く、この場から立ち去りたいが、痛みが邪魔をして動けない僕であった。



「飛鳥会長…… 止めて方がいいッスよ。 山形君は本当に強いので…… 」



「岩間君…… 貴方は黙ってて」



「う うっす」



岩間君を誉めてほしい。 こんな場面なのに、勇気を振り絞って止めようとしたのに、飛鳥会長の一言で黙ってしまった。岩間君はそそくさと、後方に下がった。



「今からでも、賭けを再開したいんですけど、今俺、腹が減っていて…… 」



「ふーん。少しなら待ってても良いわよ、なんか食べても良いし」



「サンキュー、感謝します会長♪ でも、食べる物が無くて…… 」



「そう、それなら私が食堂からなんか貰ってくるけど?」



飛鳥会長はスタスタと、保健室を後にして行った。 …… 会長にしては素直すぎる…… 山形君を除く皆はそう思ったに違いない。僕と山形君は道を開けた。



『分かってるわよね…… 達哉』



飛鳥会長とすれ違った時に、聞こえたような気がした。 何? 『分かってるわよね』って、 全然分からない。とりあえず、聞き流しとく。うん。




―――。





数十分が過ぎようとしていた。 保健室内は、前と代わらずピリピリしたムードが漂っている。 僕はさっき食らったボディブローの痛みは無くなり、立ってその場で待っている。 回りを見ると、岩間君はずっとその場で直立不動で立ってるし、高橋さんと信二君は相変わらず、治療を受けている。 真木先生はそのままだ。




『ぎぃるる〰る』




また、山形君の腹の虫が聞こえた。当の本人である山形君は、もう、恥ずかしがることはなかった。右手を自腹に当てて、耐える仕草をする。



その時であった。



「おまたせ! 食堂に行ったけど、何にもなくて、配膳の人に作ってもらったわ!」



満面の笑みを作り、保健室のドアを勢いよく開けて、飛鳥会長が入ってきた。その片手にはパン揚げ物やポテトサラダが載ってあるトレーを携えていた。 見るからに山盛り仕様である。 飛鳥会長は笑顔を絶やさずに山形君の居るベッド付近まで、近づいていった。




「感謝しなさいよ! これは、私が食堂に無理を言って作らせた特別メニューなんだからね! 」



「ああ! ありがとうございます会長! そんなに旨そうな学食は見るのも初めてだぁ」



『ぎるるぅーー 』



山形君は飛鳥会長に感謝を伝えているが、目線は豪華な食べ物が乗ったトレーに釘付けになっている。 見ている僕達も先程のクールな態度の山形君とはまた違った面に驚いていた。 腹の虫も歓喜を上げるように鳴いた。




「さぁ、遠慮せずに召し上がりなさい」



会長は、山形君にトレーを手渡す仕草をした。



「では、お言葉に甘えて…… 」



山形君はトレーを受け取ろうと両手を伸ばした、その瞬間。



「今よ!!! そいつの腕を拘束してぇぇ!!!!」



飛鳥会長が叫んだ。 僕は、その大声に驚いていると、隣に居るはずだった岩間君が、山形君のベッドの後ろ側に移動していた。



「ウッッッッス!!!」



岩間君は大声を上げると、山形君の背中から覆い被さる様に羽交い締めを実行。 山形君は大波に襲われる様になって、岩間君に取り抑えされる。 その一瞬の出来事に驚いていると、飛鳥会長から怒涛が飛んだ。



「達哉! 何、ぼさっとしてるのよ!あんたも抑えるの手伝いなさい! いけぇぇ!!!」



「うわぁ!」



飛鳥会長に今度は、背中を強く押された。 その勢いで、山形君の方向に突っ込んだ。僕は思わず彼の右腕に掴み掛かる様にして止まった。



「うわぁ! 離せよ! 痛い!」



抵抗する山形君。 だが、岩間君が後ろからずっと覆い被さるってるので、身動きが取れないらしい。 その後に飛鳥会長も加わって、三対一の攻防になっていく。



「このまま引きずり下ろすわよ! 岩間君も達哉も力出してぇ!! 」



小さなベッドは戦場と化した。 僕は何とか体制を整えて、山形君の右手を引っ張る。 ようやく、山形君はベッドから引きずり下ろされる様にして落ちた。 その頃には激しい抵抗などはなかった。



息の上がった四人が、ベッド下でぐったりとしていた。



「はぁはぁ…… これは俺の敗けだな、 会長の優しさが罠だったとは、俺も気が緩んでいた」



「お腹空いてる時点であなたの負けだったのよ。 もし、空腹でなかったら、もっと力ずくの実力行使に出てたわ。 ふぅ」



飛鳥会長は勝ち誇った顔付きをした。これで、山形君との勝負は勝ったのだ。








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