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翌朝、僕は母に新しい超常現象(?)を披露した。右手の人差し指を立てながら火を灯した。それを見た母は、あくびをした口を戻さずに、さらに大きな口になってしまい、 「あ" あ" あ"ぁぁー!ーー」と奇声を上げながら尻餅をついてしまった。
こんな体になってしまった僕であるが、あまり驚いてはいなかった。(昨夜の蚊取り線香の火はこの指からの火で着けた。結構便利だなーと、思った)
母は、慌てて「もう一度病院にいきましょ!! 」と、言ってきたので、大急ぎで行くことになった。
……
「今度はどうしました?」
目の前にいるのは、昨日の先生だ。【また来たのか!こいつは? 】というような視線を僕に向けてきた。
「先生……今日なんですけど……」
「氷の次はなんですかぁ!?何がでるんですかぁ!元気ですかぁ(?)!! 」
……先生は少しおかしくなってしまった。
「先生…少し落ち着きましょうか?」
「大丈夫だよ!大丈夫!先生は大丈夫!だいじょぶだぁ!だいじょぶだぁ! 」
全然、大丈夫でないテンションである。
なんだか、僕の回りの人達は僕のせいでおかしくなっていく…罪悪感が忍び寄る。
「今度はですね………指からの火が出ます………」
「氷の次は火ですか………信じられませんね」
「とりあえず、今見せますで」
「わかった。しっかりと見ましょう」
いつの間にか冷静さを取り戻した先生に、僕は自分の人差し指をすっと、取り出し、先生から少し距離を置き、人差し指を天井に向かって指し伸ばした。
心の中で(火、火、火)と何度も念じた。シュポッ。渇いた音と共に、昨夜と同じ大きさの火が人差し指に踊った。
「先生、見てください!嘘じゃないでしょ?本当に火が出たでしょ?! 」
「……本当だ……信じられないよ。これは紛れもなく火だよね。熱くないの? 」
「ええ、不思議と全然熱くないんです」
「君にはビックリさせられるばかりだな…これは研究機関などに連絡した方がいいな」
最後に先生が、さらっと最後に言った一言に武者震いをしてしまった。もし、研究機関に連絡されたら、僕は研究材料として、解剖されたり…怪しい薬品などを飲まされたりしないのだろうか…怖い…怖いよ!
「や やめて下さい!先生!僕は死にたくないです!!本当に勘弁してください! 」
「何を怖がっているだ君?ただ、報告書だけを研究機関に提出するだけだよ。安心したまえ」
ほっとした。
その後に、先生に(火力とか調整できなの? )とか(どの位まで火柱出来るの? )などの質問を受けて、僕は先生をコーチのように仰ぎ、試行錯誤を繰り返していった。
二時間ほど経過した。
結果は、1メートル長さほどの火柱を出し続ける事に成功した。まるで火炎放射だ!(診断室でやっていたので、気をつけてやっていたが、カーテンなどを少し焦がしてしまい、看護師さんに怒られた。先生も怒られた……)
…
少し焦げ臭い診断室で、先生に興奮気味に感謝をした。
「先生!ありがとうございます!」
「いや、いいんだよ!途中でカーテン焦がすハプニングとかあったけど…これは良い報告書を書ける。でも、これは診断ではないよね〰実験だよね〰」
「いやいや、自分の未知を知ることができましたよ!! 」
そんな会話をしてから、僕は家に帰った。[そういえば、他の患者さんはいないのかな?]と思っていたが、自動ドアには(本日緊急休診中の為にお休みさせて頂きます)と手描きホワイトボート看板が添えられていた。…ごめんなさい。病院を独占してしまいました。(苦笑)
帰りの車中で、僕はじっと自分の掌を見ていた。
【本当に不思議だよな…自分の意思で火とか氷とか出て来ちゃうし…身体異変ではなくて、魔法だ! 僕は魔法使いになってしまったんだ!】
そんなことを考えながら、車を運転する母の横顔を見た。朝とは違い、落ち着いた顔をして、運転をしている。もう、僕に何が起きても動じない免疫でも出来たのだろうか?
家に着くと、リビングに直行した。
すると、後から来た母が追って入ってきた。
「あんたも、今日は疲れたでしょ?私も疲れちゃったわ…ゆっくりしてなさい」
「うん。そうするね」
母は塾は休みの連絡をしていたらしい(僕は塾があること忘れてました)
そして、母がため息をつきながら、テレビのリモコンのスイッチを押した。今の時間はちょうど昼であった。お昼のニュースなどが写し出された。
だが、画面に写るニュースに僕は度肝を抜かれてしまった。そこには…
[スクープ!!日本各地で少年少女達が一斉に原因不明の超能力を発動!火や風を操る少年少女達!]
ニュースキャスターが興奮気味にニュースタイトルを発表した。
僕はこの子達とお友達になれるかな?
はは…