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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
おおまかに振り破って ~魔法学校野球編~
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東さんがマネージャーではなくて、選手として参加することが決まった。僕は無理しなくて良いと言ったが、東さんは大丈夫だと言った。 この言葉を信じて、僕は了解した。 厚かましいが、東さんにも残り一人となった野球要員探索を依頼した。



「他に野球やりたいって人いないかぁ? 」



東さんは少し戸惑いながら返事をした。



「あのですね……一人居るんですよ。私の目に狂いがなければ彼が、適任だと思っています」



「え?! 本当に?! その人は何処にいるの? 」



「それがですね…… 保健室にいるです。 入学式の時は居たんですが、 その後の火山噴火の作戦の時は参加していないはずです…… 何故そうなったのかは解らないですが」



「なるほど…… 今も保健室に居るかな? 」



「必ず居ると思います」



僕らは、東さんと共に保健室に向かった。 そういえば、保健室の場所が分からない……



「保健室なら俺が分かるよ」



信二君がそう言ったので、信二君を先頭に道案内をしてもらった。




ーーーー。





【保健室】



プレートにはそう書かれていた。 場所は僕達の教室に近い所であった。 あまりにも目立たないと言うか、僕が見逃していたのだかろうか? あまりにも近い所に存在していた。



「失礼します」



信二君はそう言いながら、保健室の扉を開いた。



「あら〰いらっしゃ〰い、どんだけぇ〰」



聞き覚えのある声が帰ってきた。 そこに居たのは、真木先生であった。



「あれ? 真木先生って担当は保健なんですか? 」



「私は保健体育の学位もあるから、こちらも兼務と言う形でいるのよ! ほんとうは理科担当よ! いかほどぉ〰! 」



へぇー。 皆は感心したように同じ声を呟いた。



「まぁ、 この保健室に用がある生徒はあまり居ないのよ! 怪我したって、そこにいる直江さんが治しちゃうから、いつもいつも暇なのー」



真木先生はそう言うと、話題に上った直江さんは恐縮しながら顔を真っ赤にした。 それはそうだ。 ここにいる生徒達は一クラスしかいないので、怪我などをしたら自然とクラスメート達は直江さんを頼るのだ。



「今日はどうしたの? まさか、直江さんでも治せない大怪我人が出たの?!! た、大変だわぁ〰どんだけぇぇ! 」



真木先生の一人暴走劇場になった。 先生は、 戸棚から包帯やら湿布などを手早く準備して行く。 白衣をちゃんと着直してから、僕らの方に振り向いた。



「よし! 準備万端よ! さぁ、怪我人を見せてーー!」



「怪我人なんていません…… 先生」



信二君の冷静な一言を聞いて、真木先生は用意していた包帯などをばらまいて倒れてしまった。ずだーん……



ーーーー



「で。ここに何しに来たの? 痛いどんだけぇ…… 」



真木先生は痛めた肘に湿布を張りながら、僕らに話しかけた。 折角用意した、治療の湿布などをまさか、自分が使用するとは思わなかっただろう。



「ここに野球部員候補の子が居るって聞いて来たんです。 先生は知りませんか? 名前は…… えーと」



そう言えば、その子の名前を知らなかった。 僕が戸惑っていると、東さんが口を開いた。



「あの、山形君はここにいますよね? 」



「ああ…… 彼に用事なのね? 山形君! お客さんよ! 」



真木先生はベッドの方に振り向いてから声を上げた。 すると、カーテンで仕切られたベッドの方角から声が聞こえた。



「先生…… まだ具合が悪いんで……彼らに帰ってもらって良いですかね? 」



「何言ってるの?! 毎回その言い訳が通じると思ってるの?! 折角、あなたに用があって訪ねてきたのよ! 会って話を聞きなさい! どんだけぇ〰 」



真木先生はプリプリ怒っていた。



「全く…… 彼はいつもいつもこうなのよ。 一日のほとんどをこの保健室で過ごして、放課後になると自分の寮に帰るの 」



「だからですかね? 教室とかで見たことなかったのは」




「そうよ、 彼はちょっと変わってるの。 入学式のホームルームを終えてから、いきなり、この保健室に来たのよ〰。最初は具合が悪いとかで来ていたけど、その内に理由もなくここに来るようになって…… 気がついたらベッドを占領していたわ…… 」



真木先生も少し困っていた。 まだカーテン越しから影しか見えてないが、こちらの会話は聞いているだろう。 少し影が揺らいだような気がした。



「先生 …… 気が変わった。 その人達の話を聞きたくなった」



カーテン越しから山形君と呼ばれる生徒から許可が降りた。 僕らは、カーテンで仕切られたベッドに近づいた。



「山形君で良いんだよね? 僕の名前は佐藤達哉って言うんだけど…… ちょっと、話を聞いてくれないかな? 」



「佐藤? ……ああ、 入学初日に会長と喧嘩したあの佐藤か? 」



「…… うん、 あの佐藤です…… 」



思わず敬語で返事を返してしまった。 結構、僕は有名になっているんだなぁ……



「あの佐藤が、一体なんの用があって来たんだい? 俺はずっっと具合が悪いんだよ、 手短い用件を願いたいんだが」



「解った、はっきり言うよ。 野球やらないか? 」


カーテン越しから聞こえる声は、明らかに具合が悪い用な声量ではなかった。 少し喧嘩腰の声に感化されてしまったのだろうが? 自分も少し怒りながら、はっきりと用件を突き付けた。



「野球ね…… 何で俺なの? 」



「それは「貴方は野球経験者でしょ? 」



山形君と僕の会話を遮るようにして、東さんがはっきりと声を上げた。 僕を助けるようにして入れ替わった。



「入学の時に出席を取ったときに気がついたんです。 貴方は手を上げたときに肘が少し曲がっていた…… これは野球経験が長い人の特徴なんです」



「参ったね…… そこまで見られていたなんて」



東さんは流石だと思った。 鋭い観察力はやはり読書が趣味だと培われるのだろうか? それとも、 東さんの兄から学んだことだろうか? その他の人も感心したように二人のやり取りを見て聞いていた。



「お願いです。 野球をやりませんか? 」



「野球ね…… 風の噂で聞いたんだよ。なんでも、火山噴火停止作戦の打ち上げの時に、校長が甲子園出場を提案したんだってね」



「ええ。そうよ。だから……」



「それじゃ…… 俺と勝負をしないか?勝負に勝ったら考えるかな? 」



「なんですか?」



いきなりの勝負提案に屈する事無く、東さんは淡々と返事をした。 僕らもこのやり取りが恐ろしくも冷静だったので、二人の会話を見守るしか出来なかった。



「その勝負はなんですか? 野球とかですかね? 」



「違うね。 まぁ、もう少し詳しく話をするから、こっちに来てくれないか? みんなこっちに来て良いよ」



山形君から許可が降りたので、全員でベッドの近くに足を向けた。 相変わらず、ベッドはカーテンで仕切られて居たので、山形君の影しか見えなかった。



「あ。 悪い悪い、 カーテン開けるね」



シュッと、カーテンが開いた。



そこには、ベッドの上に体育座りする山形君が射たが、彼の回りに置いてある物でビックリした。



乱雑に重ねられた漫画雑誌…… バイクのフルフェイスヘルメット…… 美術室あるような石膏で出来た頭像…… 大きな真空管ラジオ…… などなど、 「どっから持ってきんだ!」と、 言われるような物が彼の回りに置いてあった。



「私もビックリしたのよ〰 こんなものは魔法学校になんて無いし…… 本人聞いても笑って誤魔化されるから…… ちょっと不気味どんだけぇ…… 」



真木先生も困っていたのだった。



一通りの驚きが収まった後に山形君は言った。



「みんな、大丈夫か? 勝負の事を話していいか? その勝負は…… 」



みんなはずっと山形君を見た。



「俺をこのベッドの上から降ろす事が出来たら、あんた達の勝ちだ。 簡単だろ? 魔法とか使っても良いぞ。 何人もかかって来ても良い」



「本当にそれでいいの?! 簡単だね!わぁーー!」



楽勝宣言をしたのは、いつも元気な高橋さんだった。 高橋さんは、山形君に向けて掌を向けた。



「手荒な真似はしたくなかったんだけど…… 魔法使ってOKならしかないよね! ビリビリいくよーーー!」



高橋さんは電撃を放とうしていた。



「うわ!! いきなりやるの?!! 高橋さん! ここは保健室だよ! 」



「関係ないよ!早く野球やりたいもん! では、いっくよーー」



制止したが、高橋さんは言うことを聞かなかった。 僕は心配になり山形君の方を見た、 山形君は少し微笑みながら、右手の掌を高橋さんにそっと向けていた。 彼の掌は少し光っているように僕の目からは見えた。






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