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「すごい。東さんって結構有名なんだね!」
「え? 達哉君は知らなかったの? この事件は結構有名だけど……」
僕の思わぬ発言に信二君は驚いていた。
「うん。あんまり解らない」
「そっか」
信二君は僕の事を怪訝な深追いをしなかった。 知らないものは知らない。それが僕の性格だと自分でも思っている。
「まさか、この魔法学校で有名人に会えるとは思ってなかったス! あの時のテレビは凄い報道だったスからね!……あと達哉君が知らなかった事にも驚いてるッス!!」
スマホでのWeb百科辞典を読んでから、岩間君は思いっきり東さんを褒めた。その時の東さんは顔を真っ赤にさせながら、テーブルに顔を伏せていた。
「そ そんな事ないですよ! あの時の事件が重大だったとは思ってませんし…… 正直、その百科辞典も白紙に欲しいと願ってるのに」
東さんは結構、嫌がっている様に感じた。東さんは口を開いた。
「その後が大変だったんです。 翌日に学校に行くとクラスメートからサイン責めにあったり、雑誌からの取材も沢山有りました。 あの事件で生活が一変したのは確かです。後、自宅に知らない歴史考古学者来て、埋蔵金を探してくだい!って言われたのが印象に残ってます」
「そして! その埋蔵金は見つけたんスか?! 」
岩間君は興奮しながら、東さんに話し掛けた。東さんはその行動に多少引き気味ながら答えた。
「い いいえ。埋蔵金は見つかりませんでした……と言うか、埋蔵金なんて埋めてないです。 埋めた人間の当時の持ち物とかをサイコメトリーしたら、あれは酔っ払った勢いで付いた嘘だと解りました」
「ええ!? なるほど、それじゃ最近までテレビ特番でやってる埋蔵金探しは……なんなんスかね?」
岩間君の興奮は神妙に変わった。確かにそうだ。 東さんのサイコメトリー能力の実証は事件解決で証明されている。では何故に、テレビ局は埋蔵金を追い求めてるのか? これは大人の事情が絡んでいる様な気がした。そこまで、話すと東さんはしんみりとし出した。
「東さん、どうかしたの?」
「こういうのは苦手なんです。 実はその誘拐事件後にはまだ続きがあるです……」
「続きと言うと?」
「ええ。 私はその誘拐事件解決後に、さっき説明した通りに色々な所からサイコメトリーでの解決依頼が山のように舞い込みました。 その時の私はまだ幼くて、ゲーム感覚の様にすらすらと解決していきましたが、それもいつしか嫌になって行ったんです……」
「なるほど」
「学校に行くとクラスメート達はだんだんと私を不気味がる様になっていって、私から離れて行きました……あいつは何でも知ってしまうから、近寄らないようにしようって言って……私は学校に行くのが嫌になって、小学三年生の時に不登校になったんです……」
東さんの身の上話を聞いていたら、僕らは急に罪悪感に陥った。 その証拠に、さっきまで興奮していた岩間君は沈黙を作り、顔を歪め、悔いを噛み締めていた。 人には色々な事情を抱えている。
僕は最近になって、魔法を使えるようになって喜んでいたが、東さんは真逆と言えよう。 幼い頃から魔法と言うか超能力を覚醒させて、能力を使っていた。その結果に孤立をしてしまった……
哀れな超能力少女。
それが東さんだ。
「私が不登校になっていると聞き付けて、自宅に来たのは……テレビ特番で一緒に共演している犯罪科学博士の福頼先生だったんです。福頼先生は私の事を心配してくれて…… 私は先生の好意で、先生の大学の研究室で授業を受けることになったんです。福頼先生はとても良い先生でした 」
「なるほど」
「ところが、福頼先生の研究室に通いはじめて小学六年生になった時でした。突然、超能力が使えなくなったんです……いつもの様に物に掌をかざしても何もイメージが入ってこなくなって……」
「え?! そうなの?!」
突然の超能力喪失に皆は驚いた。東さんが不登校になった事にも驚いていたが…… 東さんの人生は波乱万丈だと思った。
「でも……この魔法学校に入学してるよね? 何でかな?」
この質問をしたのは信二君であった。 皆もそう思って、信二君の質問の答えを東さんがどう答えるのかと、皆は東さんに視線を集中させた。
「……この超能力を失った事にもまだ続きが……」
東さんの超能力の話はまだまだ続く。