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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
おおまかに振り破って ~魔法学校野球編~
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翌日、僕は飛鳥会長改め、監督からの命令で魔法学校野球部のメンバー集めを開始した。 集まって待っているメンバーは、僕と信二君と飛鳥会長の3人。 野球は最低9人で行うスポーツらしいので、後、6人必要である。 【良い子の野球入門から学習しました】



クラスメートに声をかけていくと、高橋さんが食いついた。



「野球? あ! この間の校長先生が言ってた事?」


「そうなんだよ。 飛鳥会長からは聞いてなかった? メンバーにならないかって? 」


「全然聞いてない! 私って、中学生時代はソフトやってたんだよ! 野球なんてソフトの親戚でしょ?! 簡単!簡単! 」


高橋さんは、両手をパンパン叩きながら、喜んで参加してくれた。 ……残り5人… 僕は高橋さんに尋ねた。



「高橋さん、他にも野球やりたいって人いないかな? 」


「うーん…… あ! あの二人はどう?」


高橋さんは教室の窓側を指差した。 そこに居たのは、 火山停止作戦で、救助チームに居た、 直江さんと阿佐田君の二人であった。 二人は真剣な目付きをしながら、込み入って話をしていた。



「おーい! 二人とも野球やらない?!」



高橋さんはパタパタと二人の元に走っていった。 僕はここから三人のやり取りを見ていた。 朝田君と直江さんは急に来た高橋さんにびっくりしていたが、 直ぐに落ち着きを取り戻して、高橋さんの話を聞いていた。 そして、 高橋さんに腕を引っ張られるようにして、僕の元に来た。



「今、理恵さんから話を聞いたよ。 野球のメンバーを集めてるんだって? いいよ! 参加する!」


阿佐田君が快諾してくれた。



「私も協力するわ。 丁度、いろいろな事が落ち着いたからいいわよ」


直江さんも続けて快諾した。



高橋さん、朝田君、直江さんの三人が決定した。残りは後三人である。



「三人ともありがとう!! でも、残り三人が必要なんだよね…… 誰か居ないかな?」


困った顔を作った僕に、高橋さんはパッと明るい顔を作り、僕の肩をちょんちょんと叩いた。



「旦那ぁ、 あそこに適格人材が要るじゃないですかぁ? ふふふ」



高橋さんが江戸時代の悪徳越後屋風に語りかけた。僕があそこと言われたところに目を向けると、席に座ってぼーっと、している、岩間君がいた。



「あの岩間君?」


「っっ!!」



いきなり声を掛けられた岩間君は、ビックリしたようで、 僕の方を大きく瞳を見開いた。



「な なんすか? 」



「ごめんね、いきなり声かけちゃって、野球のメンバーを探してるんだけど……岩間君やらない?」



「自分がすか!!? あっ! んー……」



岩間君は一瞬、喜んだ顔したが、直ぐに両手を胸の前で組み、顔をしかめた。 その状態から、相当悩んでいることがわかった。 僕は、どうしても野球メンバーを集めなければならない。 これで集まらなければ、飛鳥会長(おに)から、ボコボコにされるのは明白である。 …… なんで何だろう? 僕ばかりが損をしている様な気がした。




……



「んー……」


数分が経過した。 目の前の岩間君の状態は数分前と変わらずに悩み続けている。 高橋さんはニコニコと岩間君を見つめ続け、 朝田君は気を紛らわそうと、窓から外を見て岩間君からの視界に入らないようにしている。 一方、直江さんはおろおろとするばかりであった。


このメンバー達は強く()の強い人間は居ない。 無理矢理に岩間君を野球に誘うことは無いと言い切れる。 もし、ここに飛鳥会長が居たら、「もう!! はっきりしなさいよ!」とか、言ってしまって、岩間君を無理矢理に部員にしてしまうだろう。 ここに飛鳥会長が居ない事に幸運だと思った。



「やれやれ、気になって見に来たら…… やっぱりね」



そんな言葉と共に僕の肩をポンっと添える手があった。驚いて、振り向くと、そこに居たのは信二君であった。



「うわ! 信二君。どうしたの?」



「 飛鳥会長から命令だよ。 多分、達哉君が困っていると思うから手伝ってさ。まぁ、案の定、苦難があったと……」



信二君は悩み続けている岩間君を見た。



「岩間君…どうして、悩んでるの? 」



「いや、自分は野球は好きっス。でも……」


「でも? 」



岩間君はゆっくりと話し出した。



岩間君は実は小学生から野球をやっていたらしい。最初のうちは楽しみながら野球を練習して行き、メキメキと野球技術は伸びていった。 だが、野球技術が伸びるのと比例して、岩間君の身体もぐんぐんと伸びていった。 体つきもガッシリとした物になり、小学高学年になる頃には、170㎝になっていた。そこから、「岩間は体が大きいからキャッチャー」と言われるようなって、自然とキャッチャーのポジションになっていった。練習の日はピッチャーからの玉を受け続けた。 そして、試合では、適格に自チームの守りに指示を出したり、ピッチャーにサインを出して、試合を動かしたりのてんてこ舞いの連続、 試合が終わると監督から真っ先に酷評を食らった。それが、毎日毎日と続いた……



いつしか、岩間君は野球が苦手になっていった。 でも、野球が完全に嫌いと言うわけではない、とても複雑な心境に辿り着いた。 野球は好きだが…… 野球が自分に合わないのか? いや、試合後の監督からの酷評が嫌いなだけなのか……ぐるぐる回る思考に岩間君はついていけなくなった。そして、いつしか練習も参加しなくなっていく。 他の野球部員は「岩間、練習来いよ」と言ってくれていたが、いつしか言わなくなっていった。 岩間君も悪いと思っていたが、徐々に幽霊部員に成り上がり、野球とは音信不通に…… でも、家ではプロ野球を見るなどと野球は好きであった。





……




「だから、迷ってるッス。あの時に校長からの発表には驚いきましたが、同時に恐怖も出たッス…… また、野球が俺に近付いてきたって…これは運命なのかって…… 」



そこまで、言うと岩間君は顔を下に下げた。本当に複雑な所まで考えている。皆は答えが解らぬままに、そこで黙るしかなかった。だが、一人だけ、岩間君に話しかける英雄が出てきた! 信二君であった。



「岩間君。野球やりたくなかったら、無理しなくていいんだよ? 」



「うーん。 やりたいと思ってるッス。けど、また、途中で投げ出す事になる事になるのはちょっと……」



「そうなんだ。 もしの話をしてもいいかな? もし、岩間君が野球やるなら、何処を守りたい? 」



「っ!ショート!!ショート! ショートがやりたいッス!!!」



岩間君は机から立ち上がって、興奮したように口を開いた。 180㎝ある大きな体はとても迫力があった。いきなりのリアクションに驚くことなく、信二君は落ち着いて一言。



「いいよ。ショートやりなよ」



「え?いいっすか?ショートやっても?」



「その代わり……野球に参加してくれるかな?」



「いいッスよ! やりますよ!」



こうして、岩間君の野球参加が決定した。 いとも簡単に岩間君を野球に参加させた信二君は凄いと思った。皆が岩間君の参加に喜んでいる中で、僕は信二君に聞いてみた。




「信二君すごいよ!岩間君を説得したの!」




「そんなことないよ。 僕は単純に希望ポジションを提案しただけ…… 多分彼はキャッチャーがやりたくなかったんじゃないかなぁ 」




「そうなんだ……」




「岩間君って、優柔不断な所があるよね。 それは本人が気がついてると思うけど…… 中学生時代のキャッチャーだって、体格で選ばれてるし……断れば良かったと思うけど、断れなかったんじゃないかな」



「なるほど」



こうして、岩間君が野球に参加する事が決定した。経験者が参加するのは非常に心強かった。 残りは後二人。



「あ! 達哉君に報告があるんだよ」


信二君は思い出したように、僕に言い出した。



「一人見つけたんだよ。 野球をやってもいいって人がさ」




「本当に!! 」



僕は信二君の報告に喜んだ。信二君が言うには食堂に居ると言われたので、信二君と僕達は食堂に足を向けた。





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