表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
火山活動停止作戦
31/91

30

僕はエアバイクのアクセルを全開に回して、魔法学校から飛び出した。 向かってくる風圧に耐えながら、エアバイクは目的地に進路を進んでいく。


「ちょっ! あ… って」


微かに後ろにダンデムで乗っている会長の声が聞こえた。まさか、 会長が僕のエアバイクに二人乗りしてくるとは思ってもいなかった。 確か、生徒人数ぶんのエアバイクは用意してると聞いてたが、出発直前になって会長が 「あのね、私、バイクとか自転車に乗れないの…… 小学生時代に色々あって…… あっ! 今笑ったわね!! このあほ!」と会話が終わる直後に重いビンタ一発を食らってしまった。 僕は何も悪くありません。僕は被害者です。


そんなハプニングなどがあったが、無事に出発することができた。先ずは僕と会長が先陣を切る。 余談だが、魔法学校の操縦はは自動運転モードで目的地より離れた地点に待機させる予定である。 途中までは僕らに付いてくるらしい。


「聞こえる! 今、インカムの設定を更新したから大丈夫よ! みんな聞こえてる?! 」


会長の声が耳から聞こえた 。出発前に生徒全員がフルフェイスヘルメットとインカムを渡された。 全員でヘルメットを被った時は、何処かの近未来暴走族の様に見えて不気味であった。


「目的地はこのエアバイクで約20分で着く所だから、 そこからさっきの作戦会議で言った通り二手に別れての行動で。 みんな、健闘を祈るわよ! 」


会長の激励で他の生徒達は 「了解」や 「ラジャー」などと応答した。続けて、会長は話を続けた。


「それと、今、飛び立った人は暫くしてから、後ろの魔法学校を見てね! まだ、私達の学校全体の姿を見たことない人もいるから、ここからなら見えると思うわよ。 」


そう言えば、僕は魔法学校をはっきりと見たことはなかった。 入学初日では、学校の真下からの入学だったので、 【白い大きな建物】としか認知していなかった。 ただただ、空飛ぶ建物に度肝を抜かれていたのだ。


会長の紹介通りに僕は、エアバイクの運転に気を付けながら後ろを振り返った。


「うわっ! なんなんだっっ!! 」


そこには真っ白な建物、いや、真っ白で大きな丸みを帯びた大きな魚の様な姿であった。 回りの青空が海の青色に見えて、まるで、海を我が物顔で泳ぐ大きな鯨。遅れて飛び立った他のエアバイク達が鯨に追われるトビウオいや、鯨と共に戯れるイルカの様に見えた。


「すごいでしょ? あの魔法学校の設計も私が発注したのよ。 …… 昔、小さい頃に妹と一緒に読んだ本があるんだけど、その中で白い鯨 …… 白鯨(はくげい) が悪者扱いされてて、あんな大きくて美しい鯨が可哀想になっちゃってさ、私と妹と一緒にわんわん泣いちゃったの。 いつか大きくなったら悪者扱いされてた鯨を自由に泳ぎ回らせたいって言う夢。ここで実現させたのよ」


「あの、妹さんは元気なんですか? 」


「元気よ。 私より一つ下のなんだけど…… 魔法能力あるかどうだかわからないけどね。 もし、魔法が使えたなら、 迷わずここに入学するって言ってたわ。」


「楽しみですね。」


会長のプライベートの話を聞くことが出来た。 魔法学校と妹さんの話をしている会長の声は、何だが弾むように響いて聞こえた。嬉しいのだろうな……


魔法学校は僕達を見守る様にして、後方からゆっくりと追いかけてくる。ゆっくりと雲を掻き分けたり、途中で遭遇した野鳥の群れに優しく寄り添ったりして、飛行を続けている。まるで生きているかのようだ。 僕はその光景に胸を熱くしながら見ていたら、 気がついた。 丁度白鯨のおでこ辺りが操縦室の窓ガラス張りである。そこからこちらをずっと見ている校長の姿が見えた。


校長は皆に敬意を評する様にして、僕達に敬礼をした。


「みんな! マスターが私達にエールを贈って来たわ! 答えてあげましょう! 」


会長の一言によって、皆はそれぞれ拳をつき上げたり、片手敬礼を送ったりした。 後ろに校長がいることによって、何だか守られてるような感覚になった。 とてもとても暖かい。


「そろそろ、神山領域に近づいてる来てるわ! みんな、この辺りから火山灰とか岩石が飛んでくる恐れがあるから気を付けて! 」


そんな会長の警告で、生徒達に緊張が走る。 言われてみれば確かに、雲行きも何だか鉛色になっていて、 ヘルメットなどに微量の砂がずずっと媚りついていた。 先ほどの幻想的な雰囲気と違うものが伝わってきていた。 目的地は近い!


「達哉ぁ! 集中して! 結構大きい岩石などが飛んできてるみたいよ! 私達の前を飛んでいるエアバイクから連絡が入ってる! 」


「わかりました。 気を付けて運転します」


僕はエアバイクのアクセルに意識を集中しながら、スピードを出した。 その時、隣から機械音がいきなり聞こえた。 首をそっちに向けて確認した。 それは、平行して走っていた、エアバイクに何かがぶつかって奏でた音であった。少しバランスを崩した隣のエアバイクであったが、なんとか持ちこたえて平常運転に戻っていた。 良かったと思っていたら、僕の背中を揺さぶる振動が伝わってきた。 なんだろう? と、思って首を前に戻すと、先ほど注意を受けた岩石が自分に一直線に向かってきた。


「達哉! 前! 前! 」


僕はいきなりの恐怖に驚き、その場で硬直してしまった。 もう、逃げられない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ