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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
真夜中の二人
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「ね …… 眠たい」


体全体が重く、目の下が重い。そして、麻雀稗のかき混ぜる音が耳から離れない …… 入学初日からバタバタ忙しい時間を送ってしまった。なんとか真二君の機転によって、最大の危機を回避して飛鳥さんをなんとか逃がした。だが、その代償として寝不足と極度の耳鳴りを獲たのだった。部屋でぼーっとしていると、真二君が帰ってきた。あれ? なんだが、顎が鋭く尖っている様に見えて、鼻も少し鋭い ……




「くくっ……まさかのっ! まさかだったよっ! 奴の運が俺を強くしたんだ。欲があるから潰れるのに……くくっ」




「信二君 …… どうかしたの? 」




「いや、奴(真木先生)は弱かったよ。ところで …… 生徒会長さんは? 」




「帰ったよ。本当に真二君には感謝してるよ」




「くく ……そりゃ良かった」




なんだが、昨日の真二君としゃべり方もなんか変だと感じていた。どうしたんだろう。そんな違和感を感じていたら、部屋に備え付けてあるスピーカーから声が聞こえてきた。




[新入生のみなさん、おはようございます。朝食の時間になりました。速やかに食堂に移動してください。場所は …… ]




おっ! 食堂あるんだ。当たり前か、全寮制だからあるのは当たり前か。


僕ら二人は急いで身支度を済ませて、部屋を出ていった。


ーーー



食堂の前に着いた。魔法学校なので、少しお洒落な雰囲気があるかなと、期待をしていたが、入口ドアの上には[食堂室]とプレートが貼ってあるだけで、一般的な装いだった。ドアを開けて、中に入っていく。




「うわ! なんだここ!」




思わず歓喜を上げてしまった。食堂内部は物語に出てくる中世の教会のような内装になっていて、何故か昼間だと言うのに、ステンドグラスから入り込む自然光頼りの少し暗めの照明は魔法学校の雰囲気を醸し出していた。




「…… 凄い。凄い。すごすぎる」




他の生徒達も同様に驚きながら、食堂内部を見渡し、券売機に並んでいた。


「券売機がなんか似合わないね。この雰囲気に …… あとテレビもあることも……」




「くく …… いいんじゃないの? この不条理に浮かぶ券売機! 薄型テレビ! 俺は好きだよっ! くくっ」




「そ……そう? 真二君は何するの? 」




「そうだなぁ …… 栄養ドリンクはないかな。奴等は平気で茶に毒を盛ってくるからな。 くくっ、備えあれば憂い無しってことだ。くくっ…… 」




…… やはり真二君の様子がおかしい。奴等っていったい誰なんだろう? 真二君に核心的な疑いを持ちながら、僕はカレーライスに決めた。【真二君はもちろん栄養ドリンクなんてないから、Aセットを注文】




配膳口で、カレーを受けとると、遠くから僕達を呼ぶ声が聞こえた。その方向に目を向けると、飛鳥さんと入学初日に会った高橋理恵さんが、テーブルのに座っていた。僕らはそこに向かった。




「おはようございます。……会長? あの後大丈夫でしたか? 」




「…… 全然眠れなかったわよ。真北先生の薄気味悪い笑い声とかが耳から離れなくて ……もう、あんなこと二度としたくないわよ馬鹿」




そう言いながら、会長は学食のサンドイッチを口に頬張った。ほっぺはふにふと可愛らしく動いていたが、目の下に隈を貯めたジト目で僕を睨んだ。そんなやり取りをまぁーまぁーと宥めてくれたのは、高橋さんだった。




「ごめんなさいね。飛鳥は朝からこんな調子なんだぁ、さっきも遠くの席でガヤガヤ騒いでいる生徒を睨み付けて、黙らしたりしたり。飛鳥はこの魔法学校の生徒会長なんだからさ! 代表らしくしたらいいんじゃないの? 」




そんな注意を受けた会長だが、ふんっ!と明後日の方向を向いてしまった。僕は居た貯まれない空気を消すために、高橋さんに話かけた。




「た ……高橋さんは会長と知り合いなの? 」




「飛鳥とはルームメイトよ。私は最初にどんな人とルームメイトになるのかな? と、期待してたら、部屋のプレートに【吉沢飛鳥】って書いてあってビックリしたもの! さっき、男の子に喧嘩売って返り討ちされた生徒会長だ!って、私もあんな風に喧嘩売られちゃうのかなと思ったけど、部屋に入ったら居なくて …… 少し、ほっとしたけど」




「それはそれは良かったわね。理恵。返り討ちにされた私が居なくてほっとしたんだ。ふぅーん」




「そ!そんな事ないわよ!心配したんだからね!! 」




「…… どうだか? 私が治療を受けて部屋に帰ってきたら、あんた、私の顔を見るなりひっ!って怯えたでしょうが! 」




「あっ ! …あれはね !」




…… 僕が余計な一言を言ったせいで、会長と高橋さんの泥沼劇が開演された。悲劇や争いなどの発端と言うものは、必ずや【あらぬ一言】によって引き起こされる。それは、人類の歴史などを学べば解ることだ。そして、その終演はあっという間に来る。最後に残るのは、遺恨である。僕はまた、罪悪感に教われていた。


……




「おーい。達哉くん。何処か遠くに行ってる達哉くん。戻ってきてくれよ」



ふと、隣の席に座っていた、真二君から声が聞こえてきた。




「あ、ごめんね。また、遠くに行ってたよ」




「君はよく現実逃避とかしちゃうよね?そんな事してるとまた、人の話とかを聞き逃しちゃうよ」




真二君の顔つきは、いつもの優しい顔に戻っていた。あれ? 鼻の鋭くないし、顎も直角になっていない。僕は疲れていたのだろうか? 僕は慌てて、真二君の顔から視線を外して、注文したカレーライスを食べた。あれから、かなり時間がたっていたので、カレーライスは冷めてしまっていた。




「うわ、もうカレーが冷めてもさもさしてるよ」




「ぼさっとしていたから、そんなことになったのよ。本当に馬鹿なんだから」




会長に怒られてしまった。僕は何もやっていないのに …… そんな僕を可哀想だと思ったのか、高橋さんが、そっとカレーに手を差し伸べた。




「少し待ってて、なんとかしてあげるから」




そう言って、両手でカレー皿の端を持った途端に、カレーから湯気がゆっくりと立ち上ってきた。




「すごい! カレーが暖まってる! 」




「私は電気の魔法が使えるから、こんなことも出来るの。なんと言えば良いのかな? 電子レンジみたいな原理よね」




ニコニコしながら、高橋さんは説明してくれた。魔法って攻撃とか防御とかではなくて、こんなことも出来るのか。感謝しながら、カレーを食べた。




「うまい! やっぱりカレーは温かいのが一番だね! 」




「カレーで喜んでるなんで、小学生じゃああるまいし… 子供よね。 ほら、頬にご飯粒ついてるよ」




そう言いながら、会長は僕に付いてるご飯粒を取ってくれた。そのやり取りを見ていた真二君は一言。




「いいね。朝から新婚夫婦の営みは」




「夫婦じゃないよ!真二君! 」




「馬鹿な事をいわないでよ!こんな馬鹿とは何にも関係なんてないわよ!! 」




僕と会長は立ち上がって抗議した。




真二君は【やれやれ】と言った表情で聞き流していた。真二君 …… 君はいったいなんなんだ。




「あー、お取り込み中すいませんが …… 私のうどんもさっきの魔法で暖めてくれないかな? 」




「いいですよ。そのうどん …… って、えっ!!!! 」




高橋さんが驚いた声を上げたので、僕らはうどんを持った人物に注目した。


そこにいたのは、申し訳なさそうに立っている総理大臣(校長)であった。



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