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僕の魔法学校が女子高に突っ込みました。  作者: 真北哲也
真夜中の二人
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「え? こんな夜中にどうしたの? 」




「しっ! 声が大きいわよ。 あなたと少し話したいことがあったからここに来たの」



「困りますって! こんなところを先生とかに見つかったらやばいですって! 」




夜中に急に来た飛鳥さんに僕はビックリしながら応答した。(部屋の入り口で話すのも不味いから、部屋に入るわね)と言いながらズカズカと入ってきた。もう、何なんだこの人は ……




「ところで、何なのその格好は? 」




僕のTシャツとパンツのスタイルに眉をしかめながら、質問をしてきた。




「あ! これには深い事情がありまして、こんな格好なんですよ」





「…… どーせ、入寮するとかわからなかったから、着替えとか持ち込まなかったんでしょ? あほ」




「…… 」





僕は言い返す言葉がなかった。慌ててズボンを履き終えると、小さな声がベッドの方から聞こえてきた。真二君だ。


ゆっくりと、真二君の顔を覗き込むと、寝ているが少し口が動いていた。これは寝言だろうか? 耳を傾けて聞いてみた。




「…… アヤナミ…アヤナミ…… 」




………




うーん。何を言っているのかさっぱり解らない。

アヤナミ? それって …… あっ! 戦艦か! たしか、先ほどの大戦で駆逐艦にも関わらず、物凄い戦勝を上げた伝説の戦艦か ! 確か、どっかの海域で沈んでしまった …… と、一人で納得してしまっていた。真二君は戦艦が好きなのかな? 起きたら尋ねてみよう!


そこから顔を外すと、飛鳥さんはいつの間にか、バルコニーの外に出ていた。空いている窓から(こっち! こっち!)と腕でジェスチャーをしながら、僕を呼んでいた。




「ふー、ここなら大丈夫よね。もう、他の生徒達は寝てるわね」




「一体、何しに来たんですか? どうやって…… わっ! 」




そこまで言葉が出ていると、飛鳥さんの方から何かを投げられた。慌ててそれを手でキャッチすると、それはパンであった。




「お腹空いてるでしょ? それ食べなよ」




「あ、 ありがと」




包装を剥いてから、ゆっくりと食べ始めた。うまいなこれ。飛鳥さんが何をしに来たのか?をゆっくりと考えながら、二口目も確実に口の中に入れていた。外は優しい夜風が吹いていて、満月がゆっくりと僕達二人を見つめていた。飛鳥さんは月を眺めながら、ゆっくりと髪を掻き分けて、見つめていた。僕もパンをかじりながら見ていた。




「…… さっきの事はごめんなさい。私がついキレちゃってあんなことしてしまって」




「あ! 別に大丈夫なんだけど、怪我は? 」




「大丈夫よ。見なさいよこれ、元通りの腕よ」




ヒラヒラと飛鳥さんは、僕を殴った腕を見せてきた。




「なんであんな事言ってきたの?」




「ワザと挑発して私の魔法を見せようと思ったからよ。 …… 私はこの魔法学校の初代生徒会長よ。生徒全員に会長の威厳を見せようとしたの。そこに、アンタがアホ面で話を聞いていたら、丁度良いと思ったから …… 」




「そんなアホ面でしたか? 僕! 」




「うん。すんごいアホ面だった。他のみんなは真剣に私の顔を伺ってたり、そうそう! あなたの隣にいた男の子! あのなんて、右手から風の気配を出してたわ。そして、貴方を庇うように一歩前に出てたでしょ? 」




「そうだったの? 全然気づいてなかったし! 僕は真二君に助けてもらうように視線送ってたのにな …… 無視されたと思ったよ」




それを聞いた飛鳥さんは、お腹を押さえながら、ゆっくりとしゃがみこんだ。




「くくっ …… あんたって馬鹿? 本当に気づかなかったの?あははっ」




飛鳥さんは必死に笑い声を潜めながら、そう呟いた。何も知らなかったのは僕自身だった。すごい恥ずかしいかった。




「あ、あとさ、聞きたいことがあるんだけど。飛鳥さんの魔法ってなに? 」




飛鳥さんはくるっと、僕の方に振り向くと待ってました !と、言わんばかりの表情と体位を向けてきた。




「それのことね! 良いわよ今見せてあげるわ! 」




飛鳥さんは僕から少し離れた。そして、僕の目の前から消えてしまった! 一瞬の出来事に驚きながら、僕は必死に彼女の姿を探したが、見つからない ……


「 …… ここよ。ばか」




その声は部屋の中から聞こえた。いつの間にか移動をしていたのだ。


「今のが私の魔法よ。瞬間移動とかテレポートのような魔法。あぐっ」




そう言いながら、片手でパンをかじっていた。先ほど僕が貰ったパンであった。




「そのパンも瞬間移動させたの? 」




「違うわよ! 私が魔法発動させて移動中にあなたの横を通るときに奪ったのよ。私の魔法は自分自身しか出来ないの。物とか他の人を瞬間移動とは出来ない。ここの男子寮に来るときもこの瞬間移動を使って来たんだけど、さっきの防犯カメラに写ってなければいいんだけどね」




口をもぐもぐさせながら飛鳥さんは説明をした。なるほど、瞬間移動は今まで会った人にはない能力だ。僕のように火とか氷を出す、攻撃的な魔法とかは有ったが、自分の身体が移動する …… 移動的な魔法はなかった。と言うことは、飛鳥さんは結構レアな魔法使いかも。




「さてと、私の謝罪と魔法を見せた事だし、そろそろ帰るわ」




「あ、パンご馳走さまです。気を付けて帰ってくださいね」




僕は飛鳥さんをドアまで見送った。こちらにそっと笑いながら、僕の部屋から出ていった。



……




飛鳥さんは、謝罪をするためにここに来てくれた。最初に会った時は(この女の子なんなんだ!)と思ったが、今はそうではない。話してみて分かったが、生徒の模範になるように頑張っている生徒会長。そんな印象を受けた。仲良くなれそうだ。僕はズボンを脱ぎ捨て、再びベッドに潜り込んだ。程好い疲労感に襲われながら寝よ……


トントントン!


眠りに落ちようとしていた時に、急ぎ囃子の様なドアのノック音を聞いた。僕は不機嫌ながら、また、ドアに向かっていった。




「…… はい? だれです と、言いかけたと同時に誰かが、室内になだれ込んできた。誰かと思うと、飛鳥さんであった。




「いきなりなんですか? 」




「しっ! いろいろと不味いのよ! 隠れさせて! 」




「不味いってなんですか? 」




「真木先生が見回りでこっちに来てるのよ! 」




それは本当に不味い。こんな所を見つかったら、不純異性交際の異名をつけられてしまう。




頭の中で最悪な展開を想像してしまっていた。


その時、ドア越しの廊下を歩く物音が聞こえてきた ……

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