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突如現れた生徒会長と言われる女生徒に皆は押し黙ってしまった。この事態を重く見た総理大臣(校長先生)は、弁明をした。
「あー、ごめんなさい。生徒の皆さんは急な展開に驚いてしまったね。実は、この飛鳥君はこの国で一番最初に能力 …… 魔法を発動させた15歳の少女なんだ。彼女には我々政府に協力と魔法能力の研究に尽力を尽くしてもらい、この学校の創立準備などを手伝ってもらっていたんだ。そして、この空を飛ぶ魔法学校も飛鳥君の努力の賜物なんだ」
飛鳥は総理大臣(校長先生)の解説をうんうんと頷きながら、聞き惚れていた。
「あー、折角だから飛鳥君いや、魔法学校生徒会長に新入生挨拶をもらおうか」
教卓の前から校長先生と入れ替わるようにして、飛鳥は生徒の前に立った。皆を舐め回す様にぐるりと視線を送った後に挨拶を始めた。
「諸君 私は魔法が好きだ
諸君 私は人助けが好きだ
諸君 私は人から頼られるのが好きだ
~【中略】~
よろしい!ならば、魔法学校入学を歓迎だっっ! 」
生徒会長(飛鳥)は祝辞を言い終わるとペコリと頭を下げた …… 何を言ってるのか全然解らなかったが、僕以外の生徒達は「うぉー」などと声を上げていた。なにかしらのカリスマ性があったと思われる。なんだろう? 少し怖い。
僕が呆気に取られていると生徒会長は僕の方に指をいきなり指した。皆が、僕に一斉に注目した。そして、生徒会長は僕に対して一言。
「あなた! そうそう! 君だよ! 私の事を疑っているのね? なんなら、私の魔法を見せてあげるから、あなたの魔法を私に放ちなさい! 」
え? なんでこんな展開になるの? 僕は信二君に助けを求めて、信二君を見た。だが、信二君は(オレこの人知らない)って顔で僕を無視した。うわぁ …… 校長と真木先生にも視線を向けたが、二人ともおろおろしていた。もう、助けてくれる人はいない ……
「早く!私に魔法を放ちなさいよ!まさか …女だからって舐めてるの?えっ!? 」
バンバンと教卓を叩いて、赤い顔で囃し立ててきた。まずい!
「い いんですか? 会長? 本当に魔法を放ちますよ。でもなんでこんなことするんですか? 」
「なんだっていいでしょ?! いいわよ! 早く!放ちなさいよ! 」
僕は、意を決して彼女の方に両掌をかざした。ガリガリっと言う音共に氷の粒が発射された。それを見ていた新入生の一部は驚いていた。
「なんだよ! あれってさ! 細かい氷が飛び散ったぞ! しかも、例の会長に一直線に行ってる」
【あっ!ちょっとやり過ぎたかな? 】なんて思っていたが、もう遅かった ……
ガツガツと音を立てて、生徒会長に当たったと思った。だが、そこには、人影も無く、飛び散った氷は教卓の上や後ろの黒板に転がっていた。あれ? どこに行った? 僕もみんなも混乱していた。
その時であった。
「見事な氷のスプラッシュだったわよ。危うく私にぶつかりそうになったけどね。だけど、ちゃんと狙いなさい。目を閉じてしまったら狙える物も
狙えないし、隙もできちゃうわよ。ふふ」
その人を馬鹿にしたような声は、僕の後ろから聞こえるのだった。