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「俺がこの能力を使い始めたのは、夏休み中の暑い日だったかな …… 夕方に眩しい光を浴びてから」
「僕もそうだよ。あれしか心当たりがないんだ」
「君もそうなんだ、俺は家に帰ってから親と喧嘩しちゃってさ、その時に親に向かって両手を向けたら、物凄い風が吹いて親を突き飛ばしたんだ」
信二君はそこから暗いトーンで話を続けた。
「最初は突風ほどだったんだけど、だんだんと怒ってしまうと威力が増して来て、最終的には小さい竜巻を作るまでなったんだ。いろんなものを吹き飛ばしたよ、意味もなく吠えてうるさい犬とか絡んできた不良とかさ」
これは、魔法をちゃんと制御できてないのか? [魔法 = 心 ]の関係があるのかな?僕はちゃんと思った通りに操れるのに …… 少し信二君を恐いと思ってしまった。
そんな考えを見透かしたのだろうか?信二君は冷たい目を僕に向けた。
「君も俺の事を恐いと思ったかい?自分でも恐いんだよ。良いよね君は …… ちゃんと魔法を操れてさ」
押し黙るしかなかった。
「大丈夫だよ」
僕の後ろ側のベットから声が聞こえた。時貞さんだ。
「君はまだまだ、発展途上だよ心配はない。間違えたって良いさ、君には人を傷つけた時に罪悪感があったじゃないか?それを大切にすれば良いんだよ。今の大人達は罪悪感が薄くなってるからね。それに比べては君は立派だよ」
その言葉を聞いた、信二君の眼は、はっ! と、悟られた目になった。
「 ……俺って本当に大丈夫ですかね? 」
「大丈夫! だから君に魔法学校入学を進めてるんだよ、だけど、君は断り続けてる。何故なんだい? 」
「さっきまでは普通に勉強して普通の高校に進学する。それで良いと思ってました。けど…… 」
「けど? 」
「時貞さんの優しい言葉に救われました。俺…… 魔法学校に入学したいですっ!今、踏ん切りがつきました!」
今度の信二君の眼には一翠の光が入っていた。覚悟の目だった。
――――
気がつけば数時間が経過していた。
その後に、真司君と共に迷惑をかけた人に謝りに行った。みんなは簡単に許してくれた。謝り回りが終わった後に、信二君と別れた。信二君は時貞さんと一緒に自宅に行くらしい。【いろんな手続きがあるみたい】
僕は謝っていない一人に謝るために、保健室に戻っている。僕達二人は急いでいた為に、忘れていたのだった。
保健室に入ると、百合子が帰り支度をしていた。「「あっ」」と声変わり重なる。
「ごめんね。百合子、最初に謝ろうとおもったんだけど、寝てたの起こすの悪いと思ってさ、信二君と違う人に陳謝の旅に出掛けてたんだ。だけど、信二君は時間が来ちゃって…… 帰ったんだ、伝言でごめんなさいだってさ! 」
「別に大丈夫だから、謝んなくていいわよ。傷もないから、保健室の先生は心配はないってさ」
「それは良かったぁ」
「あのさ…… 」
百合子は少し顔を赤くしながら、小さく口を開いた。
「ありがと、達哉。助けてくれて」
…… 本当に小さい声であった。
「え? 今何て言った? 」
「なんでもないわよ! 」
その後に、百合子と一緒に帰った。何年ぶりかの帰り道一緒はとても恥ずかしかった。ふと、百合子の顔を見た。百合子の顔は真っ赤になっていた。それは、僕と同じで恥ずかしかったのか? それとも、夕日が顔に照らされていたのか? どちらなのかは僕には解らなかった。