15
「こちらです! 」と大きな声を出しながら校長は走っていった。僕ら二人はその後を追った。
たどり着いたのは、体育館だ。入り口では、生徒達が黒山の人だかりを作り、出口付近を固めていた。
「おい、なんだよ!あれはっ!」
「すごい!なんなのあれー! 」
そんな声がちらちら聞こえて来たので、僕らも入り口から内部を見た。
体育館中央で大きな竜巻の様なものが吹いていた。そこにはバスケットボールや椅子などを巻き込み、うねりを巻き上げていた。その中心には男の子が立っていた。
「っ! あの子だよ達哉君! さっき言っていた子だ! 」
時貞さんは大きな声を上げた。
「え!あの男の子ですか!…ということはあれは魔法? 」
「そうだろうね! あれは彼の魔法だ! 」
そんな会話している最中でも、竜巻の大きさはだんだんと大きくなっていた。男の子回りにいた生徒達も体育館壁側に追いやられていく。
「これは危険だ!回りの生徒が危ない。何とかしなければ」
時貞さんは、入り口に固まる生徒達を掻き分けて、竜巻の近くまで行った。
「君! やめたまえ! 何があったかわからないけど!やめたまえ! 」
時貞さんは精一杯の声で竜巻の中の少年に呼び掛けだが、返事はなく、さっきよりも竜巻の威力が上がっていった。逆効果だったようだ…
それでも時貞さんは、呼び掛けをしていた、その時だった。勢いを増した竜巻に飲まれていくバレーボールが、時貞さんの後頭部に直撃してしまったのだ。
「やめたま…あぼっっ!」 どかっ!
時貞さんは膝から崩れ落ちるようにして、仰向けに上半身頭を床に落とした。
「な……なにをするだっ! 」
僕は咄嗟に出た叫びと共に竜巻に近づいていった。
「時貞さんっっ! 大丈夫ですかっっ!? 」
何とか竜巻付近に倒れている時貞さんの体に近付いた。大声出して安否を確認したが、…返事は無かった。自分の声が竜巻によって掻き消されたのだろうか?聴こえてるのだろうか? 僕は時貞さんの背中に耳を当てた、なんとか呼吸をしていたので、引きずる様にして体育館の出口付近まで、持って行くことに成功した。
「時貞さん!時貞さん!返事してくれよ!」
「……っ」
時貞さんの口からは少し血が滲んでい
た。数秒後にその口からは声が返ってきた。
「うう…… わたしは大丈夫だよ…… それよりもあの子を止めてくれ……」
何とか振り絞って、時貞さんは話をしてくれた後に気を失ってしまった。
「時貞さん? 時貞さん!? しっかりしてくださいよ! 」
「……」
……何の返答もなくなった。
僕は時貞さんを校長に預けた。校長は他の職員に指示を出して、時貞さんを保健室に運んでくれた。
その一方の体育館内部では、まだ竜巻が荒々しく踊っている。
僕しかあの竜巻を止める事は出来ない…
そして、竜巻に歩みを進めていった。
「君! 危ないよ! やめろなさい! 」
校長が僕を止めようと前に立ちふさがった。だが、僕はそれを振り払い、竜巻にもっと近付いていった。
「……僕しかいない…… どうにかしなければ…… 」
竜巻を前に僕は決心をした。