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「ほらほら、百合子ちゃんが来てるのよ! 挨拶しなさい! 」
「……こんにちは」
百合子は僕の挨拶を聞くとペコリと頭を下げた。【なんて他人行儀な! 】
すると、廊下の奥から誰かが、歩いてくるのがわかった。それは、母と仲が良い、百合子の母親であった。僕と目が合うと同時に話をかけてきた。
「あらあら!達哉君じゃないの!こんなに大きくなっちゃって!もう、オバさんビックリしちゃったわー! 」
「……こんにちわ。お久しぶりです」
このやたら、テンションの高い人が百合子の母である。とても親切でいい人であり、百合子にも見習ってほしい位の社交性を持っている。テーブルには僕と隣に僕の母親、向かい側に百合子とおばさんが座った。早速、僕は今日の学校で話をされたことを皆に発表した。
「今日、学校に呼び出された理由は、僕に魔法学校に入学しないか?と言われたんだ」
その発言で、僕以外の人達の動作がピクッと止まった。
母が、早口で切り返してきた。
「まっ まほ 魔法学校!?な何なのそれ!あんた、入学する気なの?」
「うん。入学手続きのサインもしちゃった…不味かったかな? 」
「不味いもなんの…保護者の同意もなしなの? 」
「あ! そうだよね…僕だけ学校に呼び出されたんだけど……」
母は、くくっと笑いながら僕の顔に微笑みかけた。
「大丈夫よ。私は同意したから」
「同意したとは? 」
「実は、あんたが学校に行ったあと直ぐに、政府各関係の人が来たのよ!ビックリしたわよ!名刺貰ったから疑いはなかったけど…時田時貞さんとか言う人だったわ」
時貞さん、仕事はや!! 【つーか時貞さんの苗字は時田って…おいおい】
「そんで、丁寧に説明してくれて、私はサインをしたの。大切な息子を御願いしますってね……」
そう言うとウインクをした。【歳考えろー】
「そ…… そうなんだ」
政府の仕事には目を見張る。いろいろな隠密や国家機密情報などを扱っているのだろうか?もし何かしたら…怖いなぁー
「……本当にいいの?入学しても? 」
「いいのよ。どうせ反対したって、あんたは入学したいって言うもんね」
「ありがと」
その何気ない会話に絆を感じながら、僕は話をした。
「そーいえば、なんで家に二人揃って来てるの? 」
と、百合子とおばさんに尋ねた。そしたら、こう答えを返してきた。時貞さんが、帰ったあと、家の母は、百合子のおばさんに電話をした。「うちの息子が魔法学校に行くの」って、そしたら、電話口を聴いていた百合子が「是非、達哉君に会いたい」って言われたので、家に来たと言うことだ。 ん? 何故、百合子が興味持ってるの?もしかしてだけど……もしかして……
隣の百合子に、視線を向けた。髪はストレートの黒髪、目鼻立ちはすっと、
添える様に小さな顔に描いていた。あれ?こんなに綺麗なってたっけ?百合子?
じっと見つめられたせいなのか?百合子は頬を赤く染めて、顔を下に落としてしまった。
「ほらほら、達哉君と話をしたいでしょ?その為に来たんだから、話をしなさい」
百合子のおばさんは葉っぱを百合子に、かけていた。もじもじしながら百合子は話を僕にかけた。
「久しぶりだよね。達哉」
「……ほんとに久しぶりだね。こうやって僕の家に来るのってさ」
それ以上に会話が続かなかった……
見かねた二人の母達は気を使わして
「私達出掛けて来るから、あんた達留守番よろしく」
と、言って出ていってしまった……
年頃の男女二人がリビングに残された。
すると、百合子は僕に話をかけてきた。
「あのね、達哉…前から話をしたかったんだけど…… 」
「なに? 」
その後に続く百合子の発言は、僕にはどうすることもできない事柄であった……