2-12
ある暑い夏の日の午後。
俺たちサッカー部は、外のうだる様な空気をぼんやりと眺めながら、冷房の効いた店内にいた。ファーストフード店の二階は、勝手に貸しきり状態になっている。他の客が寄り付かないことが、一層、ため息を誘って、
「やるせないよな。」
と誰かが言った。
夏の大会、初日。
開会式のあとの第一試合。
俺たちは、なすすべなく県の強豪校に負けてしまっていた。もちろん、最初から負けるつもりはなかったのだが、県外どころか国籍もまたいだチームに、俺たちは、何もさせてもらえなかった。これでは、今までの練習を昇華させることなんか、できるはずがない。
俺は、そんな重苦しい空気の中、心を決めると、
「あ、あの! みんなに聞いてほしいことがあります!!」
と勢いよく立ち上がった。
サッカー部全員の視線が、俺に集まる。
「村井が、……あの、俺のクラスに村井紗枝って女子がいるんだけど……。」
説明するまでもなく、村井のことは皆知っている。
今日の試合も、滝本メルと応援に来てくれていた。
ただ、選手と観戦者が一緒に行動することはなく、当然、この場所に村井はいない。
「その村井が、うちの担任のカマ……神尾先生に、言い寄られて困っているんです!」
すると、部員たちは一様に衝撃を受けた。
「マジで?」
「嘘だろ?」
「あ、あのカマオが?」
俺は、真剣な顔で頷くと、
「俺、神尾先生を成敗してやりたいんです。だから、みんな、力を貸してください!!」
と、頭を下げた。
「……本気かよ。」
しばらく店内は、ざわめきで溢れた。
村井紗枝を助けるとか、そういった話以前に、事態の理解に時間が必要だったのだ。
だが、その中で、キャプテンの河野先輩だけが冷静に応えた。
「わかった。俺は全面的に協力する。」
河野先輩の判断は、誰よりも早かった。
三年で受験生で、この夏で引退することが決まっているというのに、河野先輩は、あっさりと俺に協力してくれると言ってくれたのだ。こういうところが、キャプテンである所以なのだろう。
河野先輩の意思が決まると、部員たちは次々に河野先輩に続いた。
「俺も!」
「俺もやるぞ!」
「みんなで、カマオをやっつけてやろうぜ!!」
「お!!」
それは、かつてない一体感だった。今まで、これほどサッカー部が団結した事はない。
全員の意思が固まると、河野先輩は立ち上がって言った。
「よし、みんなの気持ちは分かった。だが、まずは俺と竜太に任せてくれ。計画は随時連絡する。だから、しばらくは俺からの連絡を待っていてもらいたい。」
すると、部員たちは、はやる気持ちを抑えて頷いた。
河野先輩がまとめてくれるなら、安心だ。
「じゃ、竜太。これから作戦会議をしよう。まずは、詳細を教えてくれ。」
頼もしすぎる先輩に、俺は大きな声で応えた。
「はい!」




