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2-9

 神尾先生は、蛍光色のベストを着ていた。

 先生は、同じベストを着ている集団の中にいて、どうやら、祭りの警備をしている。子供のころは気づかなかったが、この夏祭りの運営には、町内会だけではなく近隣の学校も参加しているらしい。

 俺が息を殺していると、先生たちは、階段を上がって本部のテントに入った。テントでは、はっぴを着た役員たちが、お神酒を手に先生たちを出迎える。

(ふぅ~。)

 神尾先生は、俺たちの存在に気づかなかったようだ。

 だが、このまま見つからないとは限らない。

 俺は、茂みの陰で、神尾先生の動きをじっと見張った。

 俺のすぐ下では、仰向けの村井が茂みの中で震えている。

「……あ、ああ。」

 村井が何か声を発したので、俺は慌てて、

「し!」

とそれを制した。

 今は、村井の言うことを聞いている暇はない。余計な物音など立てて、神尾先生に気づかれる訳にもいかない。

 村井は、俺の緊迫した空気を感じ取ると、口元を抑えて、うんうんと頷いた。

(大丈夫だ。俺が守ってやるからな!)

 俺は、心の中でそうつぶやいて、ぐっと村井を抱きしめた。

 そのうち、神尾先生は、別の警備の先生らとともに、テントを離れた。どこに行くのかと思ってハラハラしていると、役員の人たちにぺこぺこと頭を下げながら、再び表参道を下りていく。

(よし。)

 ひとまず危機は去った。

 だが、この夏祭りの会場が危険であることには変わりがない。

 俺は、力強く立ち上がると、

「ここはダメだ!」

と言った。

 すると、村井は、珍しく、

「私もそう思う!!」

とはっきりと意思表示した。

 たぶん、村井が、こんなにちゃんと自分の意見を言ったのを初めてだ。

 それに、俺と同じ事を考えていたらしい。

 俺は、そのことが妙に嬉しくて、

「じゃあ、行こう!」

と、村井の手を引っぱり上げた。


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