2-5
一日目のテストが終わると、俺は、すぐ帰り支度を始めた。
「竜太。」
呼ばれて顔を上げると、机の前に由紀が立っている。
「?」
にっと笑う由紀の顔。
俺は、直感で、
(やばいな。こいつ、何か企んでいる。)
と悟った。こういう顔の由紀にかかわると、ろくなことにならない。
「ねえ、今週末なんだけど~。」
「俺は、部活で忙しい!」
俺は、由紀の話を最後まで聞かずに突っぱねた。
が、今日の由紀は、簡単には引き下がらない。
「違う、違う。部活の邪魔はしないって。私が聞きたいのは、夜の話。」
「夜?」
「うん、今週の土曜日にさ、町内の夏祭りがあるんだよね。もし暇だったらさ、五人で遊びに行かない?」
町内の夏祭り。
俺は、妙に懐かしくなって、子供のころの記憶を思い出した。
子供のころ、俺は、毎年の夏祭りが大好きだった。町内会の役員のおじさんが、無料で綿菓子を振舞ってくれていて、小さいときは両親に連れられて遊びに行った。小学校に上がると、近所の子供だけで行くのが定番になって、子供だけの夜は、なぜか、無性に面白かった。あの高揚感は何だったのか。
(そういえば、最近は行っていないな。)
俺は、そんな寂しさに、
「五人って?」
と、つい由紀の話に乗ってしまった。
「あのね、私と、竜太と、紗枝と、メルと木橋君。」
由紀が、指を折りながら嬉しそうに答える。
(?)
今ごろ気づいたのだが、由紀の後ろには村井紗枝もいる。村井は、俺と目が合うと、もじもじとしながら、
「あ、あの、よかったら……。」
と、小さな声で言った。
(なるほど、そういうことか。)
俺は、これだけで由紀の趣旨を理解した。
由紀は、夏祭りに行くと証して、五人で神尾先生を懲らしめる計画を練るつもりなのだ。由紀のことだから、多分、えげつない計画を考えているだろう。が、それも、今回ばかりは仕方がない。神尾先生は、村井を苦しめた分、天罰が下るのは当然の事だ。
「わかった、いいよ。」
俺がそう答えると、由紀はまた、にっと笑った。
「じゃ、詳しい時間は前日に連絡するね。」




