移住執行
俺は選ばれた。
これから宇宙へ移住することになった。確かに、今地球は人間で溢れかえってる。でもなぜなぜこの俺なんだ?
俺は罪人だ。しかも3人殺した悪人だ。そんな俺がなぜ宇宙に行かなくてはいけないんだ?とっとと死刑を宣告すればよかったのに…
2週間前
俺の第三審の判決が下った。誰もが死刑を望んでいた。殺した相手は3人とも未成年。ガラス越しで話したそいつらの両親からは、「道徳が成り立って無い。」程度しか言わなかった奴もいたが、中には「さっさと死んじまえ。」とかいう奴もいた。だが死んだって何もなんねーだろと思ってる。だがどいつもこいつも死刑死刑死刑死刑死刑。うんざりするくらい言われた。そんな中俺に下された判決は、
「死刑」
ではなかった。
「移住」
だった。
俺は救われたのか?そしてどこに「移住」するんだ俺は?
意味が分からなかった。
聞いてみると月面らしい。俺の生まれる前からその話は進んでいてやっと生活できるようになったってのはニュースで見たけど、その最初の移住者が俺になった。しかも他にも俺のような罪人がどんどんやられるらしい。月に「移住」するという判決は、「流島の刑」というものだということを実感した。
それから2週間、俺は宇宙に流すための準備期間を与えられた。即ち仮釈放だ。
俺はその時間をかなり有意義なものにしようとした。まぁ監視付きだけど。町を歩いていても周りに刑事がいる中で俺は感じた。この地球の素晴らしさを…
何気無く見ていたものが急に愛しくなったようだった。
レストランを通ると匂うステーキの匂い…
歩いてる奴らのすれすれを通る黄色いタクシー…
そんな歩いてる奴らの会話…
「日常」が、これから「非日常になってしまうということを実感した。
AD2214.Apr.8