よんじゅう
気づいたときには、遅かった。
「おめでとうございます」
目の前にいるのは、綺麗に着飾られた来賓の方々。
正直つらい、体が、顔が、頭が、重い。
そして、手が気持ち悪い。
「ありがとうございます」
そう返すのは、王子様である。
私の手を、これでもか! と、しっかり握りしめている。
十五歳で結婚はいい。別に当てなんてないのだから。
でも、トキメキ……とか、恋……からは程遠い。
気分は、捕獲されたグレイ(宇宙人)の心境である。
一応、告知らしきモノはされた。
「君の誕生日に、結婚式のパレードがあるから。あと、英雄ってことで他国からもお祝いが来るよ。あっ……そう言えば、ご両親に挨拶しなきゃならないから明日は空けといてね」
まるでスケジュールを読み上げる秘書のごとく、あっさりと結婚宣告。
聞き間違えかと思ったほどだ。
沢山の人がパレードに参加し、私達はそれににこやかに手を振る。
それにしても、すごい人の数だ。
私が手を振ると声援が上がる。彼が手を振ると『かん高い』声援が上がる。……別に焼いている訳ではない。
その後は、晩餐会。他国を招いての盛大なモノだ。
王族達が一斉に集う。何しにきた。
「これはこれは、ご機嫌麗しく……ハナ様におかれましては久方ぶりの謁見でございますれば……」
次々と来る王や王妃、王子や姫様に囲まれ休まる暇もない。
隣の王子は平然としているけど、周りが呆然としている。
やっと、人心地ついたと思えば国内の貴族達が「いやあ、さすが英雄どの。他国の王族とも懇意とは!」と群がる。
こう……もう少し穏やかな結婚式にならなかったのか……と思う。
好意的な言葉や皮肉、媚が入り交じりカオスだ。
まあ、それなりに楽しくはあるけど。
何せ、ここまで沢山の王族が一同に集まることは滅多にないだろう。目の保養だ。
でも……こんな場所だからこそ、事件はおこるわけである。
毒に反応すると言われる銀食器が黒ずむ。科学反応を起こしているので、すぐにわかった。
裏で、専門のメイドが処理してくれるだろう、と気楽に構えている。もう、いちいち反応したりはしない。なれた。
「一曲いかがですか?」
もう三十一歳の貫禄が上がった自国の王子に誘われ、ホールの中央へと向かう。
いい男になったものだ。このまま、きっと美中年になるだろう。




