さんじゅうはち
私は、しぶしぶ寝台を降りた。
「食べなさい。肌がボロボロになりますわよ? 将来シワだらけでもいいんですの?」
その言葉に、私はダルい体を引きずり、歩こうとしてコケた。
テアーが睨むように、コチラを見ている。
「何に、怯えていますの?」
真っ直ぐな瞳で聞いてくる。
そんな目を見ると、素直になれる気がした。その純粋な精神に癒してもらえると思ったのだ。
「殺した……」
私は、ぽつりと呟いた。言ったはいいものの『軽蔑されるのでは……』と体が震えている。
狼狽える私に、彼女は呆れたような顔をしていた。
「知っていますわ」
目を細め、腕を組むテアーは大人びて見えた。
「だからと言って、立ち止まってはいけません。あなたがそうしていても、何も変わらないのです。ただ、あなたは貴方でいればいいのです」
それを聞いたとき、私は彼女の大人びている理由がわかった気がした。
「貴方に会いたがっている人が沢山いますわよ」
テアーは、そう言うと部屋を出て行く。
私は、用意された食事をモソモソと食べ、廊下に出た。
驚くことに、そこにはライがいた。
「お見舞いを持ってきたよ」そう言って、花束を渡される。野草の中にパラが混じっていたけど、これはどういうことだろうか?
私の視線に気づいたのか、ライは笑いながら「これはテアーからね」と言った。
その言葉に、私は自然に笑みがこぼれた。
少し話をして、廊下を進む。
たまたま、王子とすれ違った。
彼は眉を上げ「ダイエットでもしているのかい?」と囁く。
この言葉にツンとすまして「はい、そうですが何か?」と答えてやった。
彼は笑って菓子を差し出し「細すぎるのは好みじゃない」とほざいた。私の教育に悪いと、思わ……ないだろうなぁ、この人は。
紙とペンを貸してもらい、この引きこもり生活にピリオドをうつために手紙を書く。
王宮からは、無理をすれば出られるのだけど……少し顔を合わせづらかった。
近況を書き、両親へと送る。
返事はすぐに、返ってきてホッした。
私のしたことは、許されない。
でも、それでも、生きたいし……償うために、命を投げ出すこともしたくない。自分勝手でも、前に進むしかないのだろう。
結局、すべての判断は神がしてくれる。
まあ、今回の協定は簡単にやぶられたワケで……。
それも、コチラの意向を完璧に無視しした最悪の形である。私を殺そうとしていたのだし、同情の余地はないのだけど……それは、指令した人に責任が生じるというモノ。
見せしめ……つまり、制裁が必要だろう。
まずは、三国そろって首をすげ替えてもらおうか……。
私は、魔王的な役割をとこなすことに決めた。この世界の歯車の一部になるのだ。
もう、きっと、泣くこともないのだろう。
私は、私らしく魔王業を営むだけだ。




