さんじゅうなな
独断で、一人先に出発することに決めた。唯一反対したのは、パパとママだけだ。
軍隊がいては、邪魔になるので連れて来なかった。一人の方が気楽である。
場所は、山の頂上にある国境。そこから、敵が侵入しようとしている。
私は、それを遥か上空から眺めていた。
まず、風を使い声を相手まで届ける、という初級魔法で牽制をかけた。いくら何でも、いきなり攻撃はしたくない。
「引き返すなら、攻撃はしません。私は……彼の代理です。国境を越えた時点で破壊します」
警告を繰り返す。
結局、軍は一時的に止まりはしたけど、コチラに攻撃をしかけてきた。
「フライ」
仕方なく国境近くの山に、穴を開けていく。
落ちたら死ぬほど深いので、迂回しなくては進めないだろう。山々が連なる頂上を隙間なく潰すと、軍はなかなか前へ進めない。
地面に降り立ち、片手に描かれた陣を消す。さらに、新な陣を仕込み空へと舞い上がる。
出来れば、無傷で帰ってほしいのだけど、相手が攻撃してくると『反撃しない』というのは難しい。
「ファイヤ」
仕方ないので、あちらの森に火をつけ前方を塞ぐ。
囲んでしまうと、二酸化炭素中毒で死ぬかもしれない。だから、後方に逃げ道を用意している。
あちらの魔力が尽きるのが早いか、コチラが対象しきれなくなるのが早いか、ここからは消耗戦になるだろう。
いくら邪魔をしても、人数が多いので防ぎきれない。大勢で来られると、不利になる。
「仕方ない」
やられるなら、やらなければ……。
私は、風魔法で飛ぶと同時に指揮官と思われる男の周辺をフライで吹き飛ばした。
結果ーー軍隊は、あらかた魔術師を殺したところで止まった。
無血というのは、やはり難しい。
私は、ふと思った。
こんなことが、永遠に続くのか、と。
城に帰ると、何故かパパとママが出迎えてくれた。
「どこかへ逃げるか」などと、夢のような戯言が飛び出す。
「逃げたいけど、無理じゃない?」
私は、笑って答えた。
ママが私の代わりに泣いている。逆に、私は冷静だった。
感情がどこか死んでいるのだろう。
私は、以前より殺すのが恐くなかった。人は免疫が出来る動物だから、慣れたのだろう。
「あはは、ちょっと一人にして。センチメンタルに浸りたいの」
そう言って、私は家族から離れた。
自分で周囲に柵を立てる。誰も来ないように、傷つけられるのを怯える子供のように。
そんな生活は許されない。
寝台で、昼も夜もなく眠り続け、さらに食事もしないとなれば医者が来る。
完全なる仮病あつかいだった。ここには、精神病の医者はいない。
「起きろーー!!」
そんな日々が変わったのは、戦地から帰って一週間目の朝だった。
テアーが目の前に立っていた。
私は、ピクリとも動かず「なぜ? どうして?」そればかりを考えていた。
「そんなに、寝てばかりいたら腐ってしまいますわよ。未来の姉がそんな女なんて嫌ですわ、私」
テアーは、怒っているように見えた。




