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さんじゅうご

美しく手入れされた庭を、二人仲良く散歩に出かけた。




「妹から、色々と聞いているよ。君は全属性持ちで、授業は常に満点らしいね」


彼がそれを言ったとき、不思議と笑みが黒く見えた。


あれ? 気のせいだよね。。。


首をふり、私は思案した。


学園関係者だろうか? 誰だろう、妹。


考え込んでいると、王子は少し異様な雰囲気で喋り始めた。


「僕も学園に通っていたんだ。父上に無理を言ってね。満点にこそ取れなかったけど、なかなか成績はよかったよ? 必死に勉強したからね」


私の背筋に悪寒がはしる。


王子は、相変わらず表情は変わらず……いや、目の奥が異様に輝いている。


「それに、数々の発明もしているそうだね。さらに、孤児院に寄付をしているとか」

「あ……はは。当然のことをしたまでで……」


私の顔がひきつり、思わず後退った。


たけど、王子はその長いおみ足で距離を更に詰めると、私の手をとった。


「うちの妹は、幼少の頃から天才と揶揄されて来た。現に、わずか五歳で魔法を扱うことが出来たんだ。……けど、学園には更に上をいく女の子がいると言う」


冷や汗をダラダラ流しながら、腕を取り返そうとするけど手が動かない。


「先日……辺境伯が面白い話を持ってきてね。まだ十歳ほどの子供が、一人で、二国の軍隊を相手にしたらしい。巷では『英雄が現れた』と騒がれている」

「そっ……そうですか。噂には疎いもので……」

「魔法の腕は前の英雄に、勝るとも劣らず……らしいね」


にこりと、眼前で微笑まれた。まるで蛇に睨まれたカエルの心境である。


「普通の九歳に、そんなことが出来るかな? 父上が君を婚約者に、というのもおかしな話だと思わないかい? 僕達は、歳が離れすぎている」

「そ、そうですね」


なぜだろう? 嫌な予感がヒシヒシとする。


「これから、礼儀作法にダンス、話術、外交、歴史、政治、経済。色々と学んでもらわなくては、ならないのだけど“英雄”どのなら完璧かな?」

「無理ですー! 化粧にお洒落だけでも大変なのに、歴史や話術なんて厳しすぎます! いきなりなんて、無理ですよ!」

「へぇー、英雄は否定しないんだね」

「…」

「今さら隠しても無駄だよ。君には、今日から専門の教師がつくし、学園を辞めてもらう」

「……!」

「みっちり六年で、すべて覚えてもらうよ。僕が二十年かけて学んだことを、ね」

「…………!!!!!」


ヘルプ! ヘルププリーズ!


私は、彼に引きずられ、その日のうちに監禁された。今日から、ここが家だそうだ。


権力を得るかわりに、自由を失った。今日から、しばらくは地獄の日々が待っていることだろう。

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